◆大相撲秋場所千秋楽(28日・両国国技館)
横綱・大の里(25)=二所ノ関=が2場所ぶり5度目の優勝を決めた。7月の名古屋場所で横綱昇進後、2場所目で初賜杯。
勝利のアナウンスを聞くと喜びをかみしめ、小さくうなずいた。大の里が横綱昇進後初優勝を決め、まずは「新横綱だった先場所、苦しい経験をして、もうあの経験は二度としたくなかった」と口にした。11勝4敗で新横綱単独ワースト(昭和以降)の4個の金星配給した悔しさを晴らした。そして「2場所目での優勝は輪島関と同じ。並びたいと意識していた」と、同じ石川出身で昇進後2場所目の1973年秋場所で横綱初Vした名横綱を出した。
勝てば優勝の結びの一番を落とした。支度部屋に戻ると、本割のリプレー映像が流れるテレビを見つめた。目を伏せて集中し、「これ以上マイナスはないと逆に吹っ切れた」と腹をくくった。16年ぶりの横綱同士の優勝決定戦。
新横綱だった7月名古屋場所前は、立場の変化に悩まされた。「初めてのことばかり。特に土俵入りが雰囲気含めて大変だった」と、中盤戦には顔に吹き出物が目立つようになった。中高を過ごした新潟の巡業では、海洋高の相撲部監督だった村山智明さんから「『頑張れ』という意味を込めてカツを入れてもらった」と初心に戻れた。
14日目は不戦勝で相撲は取れず、豊昇龍が立ち合い変化で勝利していた。師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)からは「淡々といきなさい」と言われたが「少し意識してしまった。最悪な相撲を取ってしまった」と反省し、気持ちを切り替えた。新入幕から所要11場所での5度目の優勝は所要13場所の大鵬を抜く史上最速。
◆大の里に聞く
―1差で勝てば優勝がかかった本割での心の内は。
「欲が出てしまった。このままでは、終わらせない気持ちで最後勝ち切れた」
―決定戦前の支度部屋でどう気持ちを切り替えたか。
「何もさせてもらえなかった。すぐ切り替えて、花道に行って準備した」
―決定戦で物言い。
「どうかな、という感じだったが、体(たい)は勝てたと思った」
―横綱同士で優勝決定戦は16年ぶり。
「東西横綱がこうやって引っ張って、秋場所が盛り上がった」
―横綱として感じること。
「あまり考え過ぎずに。
―単独で年間最多の60勝。
「(琴桜が年間最多勝だった)昨年はもう少しのところで逃したので今年は取りたかった。1場所残して確定してビックリ」