大相撲秋場所千秋楽(28日・両国国技館)

 横綱・大の里(25)=二所ノ関=が2場所ぶり5度目の優勝を決めた。7月の名古屋場所で横綱昇進後、2場所目で初賜杯。

結びで同・豊昇龍(26)=立浪=に敗れて13勝2敗で並ばれ、16年ぶりとなった横綱同士の優勝決定戦で寄り倒した。新入幕から11場所目で5度目Vは最速で、日本出身力士の年間3度優勝は横綱・貴乃花以来で28年ぶりとなった。今年60勝で単独の年間最多勝も確定した。

 勝利のアナウンスを聞くと喜びをかみしめ、小さくうなずいた。大の里が横綱昇進後初優勝を決め、まずは「新横綱だった先場所、苦しい経験をして、もうあの経験は二度としたくなかった」と口にした。11勝4敗で新横綱単独ワースト(昭和以降)の4個の金星配給した悔しさを晴らした。そして「2場所目での優勝は輪島関と同じ。並びたいと意識していた」と、同じ石川出身で昇進後2場所目の1973年秋場所で横綱初Vした名横綱を出した。

 勝てば優勝の結びの一番を落とした。支度部屋に戻ると、本割のリプレー映像が流れるテレビを見つめた。目を伏せて集中し、「これ以上マイナスはないと逆に吹っ切れた」と腹をくくった。16年ぶりの横綱同士の優勝決定戦。

得意の右を差したものの、豊昇龍に左上手を許し土俵際で投げを打たれ、バランスを崩した。最後は左手で相手の右足を抱え、体を預けるように寄り倒した。大の里の左足甲が返って俵の外についていないか、物言いがついたが、軍配通り勝ち名乗りを受けた。八角理事長(元横綱・北勝海)は「よく立て直し、よく体を預けた」とうなった。

 新横綱だった7月名古屋場所前は、立場の変化に悩まされた。「初めてのことばかり。特に土俵入りが雰囲気含めて大変だった」と、中盤戦には顔に吹き出物が目立つようになった。中高を過ごした新潟の巡業では、海洋高の相撲部監督だった村山智明さんから「『頑張れ』という意味を込めてカツを入れてもらった」と初心に戻れた。

 14日目は不戦勝で相撲は取れず、豊昇龍が立ち合い変化で勝利していた。師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)からは「淡々といきなさい」と言われたが「少し意識してしまった。最悪な相撲を取ってしまった」と反省し、気持ちを切り替えた。新入幕から所要11場所での5度目の優勝は所要13場所の大鵬を抜く史上最速。

横綱の優勝は、昨年名古屋場所の照ノ富士以来で責務を果たした。「回数どうこうではない。内に秘めた目標を達成できるように頑張りたい」。大熱戦を制した自信を糧に、大横綱への道を歩む。(山田 豊)

 ◆大の里に聞く

 ―1差で勝てば優勝がかかった本割での心の内は。

 「欲が出てしまった。このままでは、終わらせない気持ちで最後勝ち切れた」

 ―決定戦前の支度部屋でどう気持ちを切り替えたか。

 「何もさせてもらえなかった。すぐ切り替えて、花道に行って準備した」

 ―決定戦で物言い。

 「どうかな、という感じだったが、体(たい)は勝てたと思った」

 ―横綱同士で優勝決定戦は16年ぶり。

 「東西横綱がこうやって引っ張って、秋場所が盛り上がった」

 ―横綱として感じること。

 「あまり考え過ぎずに。

いつも通りのことをやれたので優勝できた」

 ―単独で年間最多の60勝。

 「(琴桜が年間最多勝だった)昨年はもう少しのところで逃したので今年は取りたかった。1場所残して確定してビックリ」

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