今年のマイルCS・G1(11月23日、京都競馬場・芝1600メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負・06年のダイワメジャー勝利を振り返る。

 4コーナーを回った安藤勝に迷いはなかった。ダイワメジャーの背中から伝わってくる抜群の感触が、46歳のベテランを強気にさせる。「少し早いけど、これなら止まらない」直線入り口で先頭に立ち、早めのスパートをかけた。一完歩ごとに大きくなるダンスインザムードの足音。昨年はゴール寸前でハットトリックに差し切られたが、今年は抜かせない。「外から来たらまた反応してくれた」詰め寄るダンスを首差振り切り、天皇賞に続くG1連覇を達成した。

 好スタートからダッシュを利かせて自ら2番手を進み、そのまま押し切る横綱相撲。4コーナーでのアクシデントも強さを際立たせた。安藤勝がステッキを左から右に持ち替えようとした瞬間。手綱と絡まって外れない。ほどくのに5秒ほどのロス。「心配したけど関係なかったね。

強かった。スタートがよかったし、希望の2番手につけた時はいけるかなと思った」と上原調教師を感心させた。

 一時は引退も考えたほど深刻だった喘鳴(ぜんめい)症を克服。新馬戦のパドックでは寝転がるなど陣営をてこずらせた。「やんちゃな馬が大人になった」と上原調教師は振り返った。昨年は9センチ差に泣いたSS産駒が悔しさを糧に、心身ともにひと回り大きくなって淀に帰ってきた。

 G1を5勝し07年に競走馬を引退。種牡馬に転身後は1400頭以上も生みだし、産駒もセリフォス(22年マイルCS勝ち馬)、レシステンシア(19年阪神JF勝ち馬)など優秀。24歳現在も健在で、ダイワメジャーのDNAは令和の時代も広がり続ける。

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