日米通算4367安打を記録し、今年日本人初の米野球殿堂入りを果たしたイチロー氏(52)=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター=が24、25日の2日間、福岡・北九州市内で、今秋の明治神宮野球大会で優勝した九州国際大付の球児に指導を行った。高校生の指導は8、9日の中越(新潟)に続き、今年2校目で、通算13校目。

指導は2日間にわたり、数々の金言を授けた。

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 イチロー氏は来秋ドラフト候補の牟礼翔外野手(2年)らに、置きティーで打撃指導を実演した。置きティーの場所を軸足の左足ぐらいに設定して、言った。

 「こう(体を開いて)打っているわけじゃない。後ろ(左脇腹や背筋)で振る。手だけじゃ無理なので。手は最後の最後で勝手に走るイメージ。そのためには股関節がしっかり動く。股関節を動かして形をつくる。で、最後に(バットが)走る」

 ティー打撃をした牟礼に対して「バットを持っている方が大きく見えるね。柔らかく見える。これはレベルが高いティー打撃。

この柔らかさはなかなかいない」と賛辞を口にした。

 続いてフリー打撃の実演だ。牟礼ら数名の選手と交代しながら、イチロー氏がバットを振った。ナインはネット周りで輪になって見守った。

 牟礼は準備中、イチロー氏にバットの長さを聞くと、こんな答えが返ってきた。 「33・5インチ。それを薬指をかけるので、実際には34インチくらい。こう持つことで遊びができて(バットを)走らせたい」

 イチロー氏は計56スイングで右越えに7本の柵越え。ナインからは歓声や拍手も起きた。

 交代して打った牟礼も負けずに、何本も柵越え。イチロー氏は言った。

 「バットは竹? 竹であの打球。

僕ももうちょっと打ちたくなった。すごい打球を打つね」

 打撃の合間で牟礼と2人で会話する一幕もあった。

 「しなりを使って打つ人が今、いないから。これ(自身のバットは)アッシュ。耐久性がない。すぐに欠けやすい。プロに行った時にどっちがいいか、知っておいたほうがいい。牟礼君はアッシュがいいと思う」

 この会話後、牟礼が打つ際には、イチロー氏のバットを使用。ただ、3スイング目で「折れました」とバットが欠ける場面もあった。

 牟礼がイチロー氏に「苦手なコースは?」と質問すると、イチロー氏はこう回答した。

 「ストライクゾーンで? ないです。距離が取れないインサイドの高いところは難しいけど、ファウルで逃げる。

ファウルにできるかどうかが基準になる」

 イチロー氏のフリー打撃は2連発で終了となった。

 「形は絶対に崩さないように。スローイングも疲れてくると腕を使うようになる。絶対にしない。ゆっくりでもいいからいい形。今日はここまで。何とか(左脚が)もって良かった」

 そう結んで、初日の指導は終わった。

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