今年の朝日杯フューチュリティステークス・G1(12月21日、阪神競馬場・芝1600メートル)は、どんなドラマが生まれるのか。過去の名勝負・97年勝ち馬のグラスワンダー(的場均騎手が騎乗)を振り返る。

 「栗毛の怪物」の圧倒的なパフォーマンスが観衆の度肝を抜いた。97年9月に美浦の尾形充弘厩舎からデビューしたグラスワンダーが、無傷4連勝で朝日杯3歳S(現朝日杯FS)をレコードで制してG1初制覇。序盤は馬群の中団あたりでレースを運ぶと、最後の直線で風のように伸びて、マイネルラヴを並ぶ間もなくかわしさった。ケタ違いの末脚。脚いろはゴールまで鈍らず、後続に2馬身半差の圧勝でスターホースの仲間入りを果たした。のちに「最強世代」と語り継がれることになるこの世代。マイネルラヴ、フィガロ、アグネスワールドなどハイレベルなライバルたちを相手にしなかった。1分33秒6という衝撃的なタイムでレコード勝ち。あまりに強い2歳王者には、どこまでも明るい未来が待っているように思えた。

 その後、「無事これ名馬」の格言とは、かけ離れた競走人生の始まりだった。骨折、目の外傷、筋肉痛…。アクシデントをその都度乗り越え、最後は栄光をつかんだ。

翌98年は故障で長期休養を余儀なくされたが、秋3戦目の有馬記念でメジロブライトを下し、見事に復活した。99年の宝塚記念を同期のスペシャルウィークに3馬身差をつける快勝。同年暮れの有馬記念はスペシャルウィークと一騎打ち。鼻差4センチの死闘を演じて長い写真判定の末、勝利をもぎとった。グランプリを3連勝し、大一番で強さを発揮した。的場均(現調教師)を主戦にG1・4勝を含む重賞7勝を挙げ、通算成績は15戦9勝。ドラマチックな生きざまは、多くの人を感動させた。

 種牡馬としては08年のジャパンCを勝ったスクリーンヒーローや11年宝塚記念覇者のアーネストリーを送り出した。孫世代となるスクリーンヒーロー産駒のモーリスは国内外G1を6勝。現在、種牡馬として活躍している。グラスワンダーは種牡馬を引退後、明和牧場(北海道新冠町)で余生を過ごしていた。25年8月8日夕方に30歳で天国へ旅立った。

ビッグレッドファームがホームページで発表した。7日夕方から容体が悪化。高齢に伴う体力の低下から多臓器不全を発症したと診断されている。

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