2000年以降に有馬記念を制した牝馬を振り返る企画の第3回は、ダイワスカーレットの逃走劇。

 長く閉ざされていた勝利の扉をこじ開けた。

ダイワスカーレットは07年に桜花賞秋華賞エリザベス女王杯とG1を3勝し、勢いそのままに挑んだ有馬記念は2着。翌08年はリベンジがかかる一戦で、1971年のトウメイ以来、実に37年ぶりとなる牝馬Vの快挙を達成した。

 レースはいつも通りの好スタートからハナに立つと、道中は折り合いを欠くことなくマイペースで気分良く運んだ。直線はメイショウサムソン、スクリーンヒーロー、マツリダゴッホといった有力馬が迫ってくるなか、鞍上の安藤勝が軽く手綱を動かすと一瞬で加速。一気に後続を突き放して、大歓声が湧き起こるゴール前をさっそうと駆け抜けた。

 1000メートル通過は59秒6。当時の馬場を考えれば速めの流れだったが、安藤勝にとってはイメージ通りだった。「あまり遅いペースにしないほうがいいと思っていた。結構なペースで行っていたけど、結構みんなが早く動いたからね。動いた方が止まるんじゃないかと思っていた。本当に素晴らしい馬。この馬の強さを見せられて本当に良かったです」。

 翌09年も現役を続行して世界に打って出る予定だったが、年明けの調整中に浅屈腱炎を発症して引退。結果的にラストランとなった有馬記念の逃走劇は、今なおファンに語り継がれている。

 ダイワスカーレット 父アグネスタキオン、母スカーレットブーケ(父ノーザンテースト)。2004年生まれの牝馬。現役時代は栗東・松田国英厩舎所属。馬主は大城敬三氏。北海道千歳市の社台ファームの生産。通算12戦8勝。総獲得賞金は7億8668万5000円。G1は桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯(07年)。有馬記念(08年)。09年に引退後は繁殖入りし11頭をターフに送り出した。

23年に繁殖牝馬を引退。

編集部おすすめ