◆WBC 1次ラウンドC組 日本4―3オーストラリア(8日・東京ドーム)

 第6回WBC1次ラウンド(R)が8日、行われ、日本はオーストラリアとの接戦を4―3で制し、C組1位で6大会連続の8強進出を決めた。1点を追う7回2死一塁、Rソックス・吉田正尚外野手(32)が2試合連発となる決勝の逆転2ラン。

3戦連続で「4番」を任された“WBC男”が、天皇ご一家が観戦された、国際大会60年ぶりの「天覧試合」で、日本を劇的勝利に導いた。9日は試合がなく、10日にC組全勝をかけチェコ戦に臨む。

 特別な夜に吉田が歴史の針を動かした。確信の歩みとともに、東京Dに歓喜の渦が広がった。天皇、皇后両陛下、長女・愛子さまが東京Dに来場。本塁後方から観戦された。プロが出場した試合では1966年11月6日、日米野球、全日本―ドジャース戦(後楽園)以来の天覧試合。実に60年ぶりとなる大きな意味を持つ試合を鮮やかな逆転2ランで彩った。

 「勝ちゲームをしっかりと見せられたことは非常に良かったと思います」

 重苦しい展開を一振りで救った。6回まで無得点と打線が沈黙。1点を追う7回2死一塁で打席に入った。1ストライクからサイド左腕ケネディが投じた内角低めの129キロスライダーをすくい上げた。

見送ればボールかと思われる低めの球を右中間席に運ぶ芸術的な2ラン。試合前に「日本国民として素晴らしい日になるように必死でプレーしたい」と語った吉田が2試合連続アーチを放った。日本選手最多のWBC通算4発目。頼もしすぎる男が勝利の道先案内人となった。

 まさに伝説の再現だった。プロ野球初の天覧試合となった59年6月25日の巨人―阪神戦(後楽園)では「4番・三塁」で出場した巨人・長嶋茂雄が同点の9回にサヨナラ弾を放つなど2本塁打の大活躍。ミスター伝説のひとつとなった。日本の野球界を大きく発展させた長嶋氏について吉田は「一度お会いしたかった」と尊敬の念を抱く。67年前にミスターがアーチを放ったのは、午後9時10分だったが、吉田の逆転2ランが飛び出したのも同9時10分。天から見守ったミスターが力を与えてくれたのかもしれない。

 今大会3試合で打率5割、6打点をマークしている吉田の功績は侍ジャパンにとって大きい。大会史上最多の13打点をマークした23年の前回大会はメジャー挑戦1年目。

新たな環境への挑戦を見据えて、優先するケースが多いが出場を決断した。「何も分からないまま突っ走った。かなりつらかった」と本音を漏らす。そんな誰もが二の足を踏む強行軍で示した覚悟が確かな“道”をつくった。今大会は同じく主力の岡本と村上がメジャー移籍1年目ながら出場。吉田は「僕は意識してない」と語るが、井端監督は「道をつくった一人」と最大級の賛辞を贈る。吉田の姿が後輩たちの指針になっている。

 勝利後、天皇、皇后両陛下、長女・愛子さまが手を振られた。3連勝で1位通過での準々決勝進出が決まったが、まだまだ通過点。「難しい試合が続くけど、一戦必勝でやっていきたい」と見据えた吉田。“ミスターWBC男”の背中が一層映えた。(宮内 孝太)

◆日本のC組1位が決定 日本は10日のチェコ戦を残して1位が確定。

オーストラリアが9日の韓国戦に勝ち、日本がチェコ戦に敗れ、3勝1敗で並んだ場合、直接対決で日本が勝利しているため、日本がオーストラリアより上位になる。

記録メモ 吉田が7回に今大会2号となる逆転2ラン。WBCでは23年準々決勝のイタリア戦、準決勝のメキシコ戦で本塁打をマークし、これで通算4本塁打。大谷翔平(ドジャース)、多村仁(横)、筒香嘉智(D)、中田翔(日)と3発で並んでいたが、日本人単独最多となった。また、この一発が決勝打に。WBCでは23年の1次R韓国戦、同チェコ戦、準々決勝のイタリア戦に次いで自身4度目のV打となり、13、17年で通算4度の中田翔(日)と並びこちらも日本人最多だ。

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