馬トク報知で過去の名勝負を当時の記事から振り返る【競走伝】。今回はテイエムスパーダが勝った2022年のCBC賞を取り上げる。

鞍上は今年のオークスでジュウリョクピエロに騎乗しJRA女性騎手史上初のG1制覇を果たした今村聖奈騎手(22)=栗東・寺島良厩舎=。18歳のルーキーが1分5秒8の驚異的なレコードで重賞初騎乗初勝利を果たした。

 夢にまで見た歓喜の瞬間が訪れた。先頭で迎えた293メートルの最後の直線。今村の操るテイエムスパーダが、大きな拍手に包まれながら力強く、そして優雅に先頭でゴールを駆け抜けた。「逃げ切る気持ち良さをしみじみと感じながら人馬一体になれた」。1200メートルのJRAレコード、1分5秒8の時間をたっぷりと楽しみ、とびきりの笑顔が咲いた。

 デビューから4か月。重賞初挑戦とは思えない肝の据わった騎乗だった。五分にスタートを決めると、手綱を押して先手を主張。最初の600メートルを31秒8で入るハイペースに、観客もどよめいた。だが、直線が短く先行有利なコース形態。

開幕週の2日間で、レース前までにレコードが2度も出る絶好馬場に加え、ハンデは最軽量の48キロというメリットもあった。直線に入ると2発のムチで鼓舞。あとは後続を引き離す一方だった。

 「馬は最高の状態に仕上げてくださっていた。馬の力を信じて自信を持って乗れたのが良かった」。レース前日にも最終調整にまたがり、コンタクトを深めた。仕上がりの良さに手応えを深めていた相棒の能力をフルに発揮。デビュー年のJRA重賞初騎乗Vは史上4人目(1984年のグレード制導入以降)。女性騎手では初となる快挙で、藤田菜七子がデビュー4年目で達成した女性騎手のJRA平地重賞制覇記録(19年カペラS=コパノキッキング)もわずか4か月で塗り替えてしまった。

 父の康成さんが元騎手ということもあり、憧れ続けた重賞の大舞台。だが、レースでの心境を問われると「冷静でした」と言い切った。「走るのは馬だし、あまり重賞だからとか、人が気負っても馬に余計なプレッシャーをかけるだけ」と強心臓ぶりを発揮。

それでも勝利者インタビューを終えてからは「夢じゃないですよね」と繰り返すこと3度。18歳の女の子らしい一面ものぞかせた。

 最終12Rもキングズソードで制し、最後まで小倉開幕週の“主役”は譲らなかった。「デビューした時から、たくさんの人に夢と感動と希望を与えるレースをしたいと言っていた。少しでもそうできたのなら光栄です」。重賞初制覇を足がかりにさらなる飛躍へ。聖奈の“真夏の大冒険”は、まだ始まったばかりだ。

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