【バスケット】八村塁の日本代表復帰宣言 「プレーヤーファース...の画像はこちら >>

NBAで自身の価値を高めてきた八村塁が、日本代表への復帰を自ら明言した。この夏はロサンゼルス・クリッパーズと新たな契約を結んだあと、日本をベースに自身の次世代育成イベント「BLACK SAMURAI」に向けた準備を進める中でのことで、8月末に行なわれるワールドカップアジア予選Window4への出場も現実性を帯びている。

パリ五輪後、日本バスケットボール協会の運営体制について痛烈な批判を発信した八村、その批判を受けて変わり始めた日本協会。八村が一貫して重要性を強調する「プレーヤーファースト」を軸にその背景を探る。

【「プレーヤーファースト」の重要性を説き続ける理由】

 八村塁にとって、今年はNBAキャリア2度目の岐路となる夏となった。NBA7シーズン目を終え、3年半過ごしたロサンゼルス・レイカーズとの契約が終了。レイカーズとの再契約の可能性がなくなると、フリーエージェントとしていくつかの候補からロサンゼルス・クリッパーズを選び、移籍した。3年半前にワシントン・ウィザーズからレイカーズにトレードになったとき以来、キャリア2度目の移籍だった。

 クリッパーズとの契約金は2年2800万ドル(約44億8000万円)、2年目はチームのオプションと報道されている。3年前にレイカーズと交わした契約(3年5100万ドル=約81億6000万円)より額も年数も少し減り、本人が当初望んでいた条件には及ばなかったかもしれない。それでも、年1400万ドル(約22億4000万円)はNBAの平均サラリーを上回る額だ。サラリーキャップの厳しい規制の影響で、リーグ全体にサラリー引き締めを意識するチームが増えているなかでは、悪くない条件だった。

 八村がクリッパーズを選んだ理由は、いくつかあった。

 そのひとつが引っ越しをすることなく同じロサンゼルスを拠点に活動できること。また、クリッパーズが若いチームに変わろうとしているタイミングで、より大きな役割を与えられる可能性も魅力的だった。

何よりも、八村自身が大事にしている「プレーヤーファースト」の精神を持っていると感じられたのが、大きなポイントだった。

 7月に公開された自身のVlog(ブイログ)でクリッパーズの魅力について語る中で、八村はこう話していた。

「ほかのNBA選手と話している時でも、クリッパーズのオーガニゼーション(組織)のすばらしさ、プレーヤーファースト精神がある(とみんなが評価している)」

 八村がかつて、「プレーヤーファースト精神」こそが一流チームの価値観だと、熱く語っていたのを覚えている人もいるのではないだろうか。2024年11月、彼が日本代表の運営体制に対して公に苦言を呈したときのことだ。当時の日本バスケットボール協会に足りないのがその精神だと、八村は語っていた。

「(日本代表に)プレーヤーファーストって精神が見られない。僕もいろんなオーガニゼーションにいて、いいオーガニゼーションはプレーヤーが集中してプレーできるように考えながらやっていて、だからこそ強くなって、それによってお金が入ってくる」と、プレーヤーファーストを大事にすることで組織に好循環が生まれると語っていた。

 去年夏に日本バスケットボール協会会長に就任することが決まっていた島田慎二と日本で会って、協会や日本代表の今後について話し合ったときも、八村はまずはプレーヤーファースト精神を大事にしてほしいと伝えたのだという。

「(希望として伝えたのは)プレーヤーファースト精神ですよね。そこが一番大事じゃないかなと思う。大きい舞台でやっていればやっているほど、僕はそういうのを感じる。ゴンザガ大の時もそうですし。

NBAに入っても、いいチームっていうのはプレーヤーファーストの精神があるからこそ、いいチームになっていく、いいオーガニゼーションになると思うんで。 そこは島田さんに言いました」

【八村からの批判を受けた日本協会の変化】

 協会への不満と提言を口にしたときには「そういう方針の日本代表ではプレーしたくない」とまで言った八村だったが、この1年ほどの協会の変化には好印象を持っている。

「(協会が)やっと変わった。僕としても一歩進んだんじゃないかなと思う。日本のバスケがよくなるってことを考えてやってくれたので、そこは自分でもちゃんと見ていきたいなと思います」

 一方で、表向きだけの変化ではないということを見ていきたいとも言う。単に体制が変わり、人が入れ替わっただけですべてが解決するとは言えないからだ。

「話なんていくらでもできる。僕はいつも行動派なんで、(大事なのは)行動でどうするかですよね。(以前の)JBAは言うことは言っても、やることはやってなかった。どう変わるかは、(これからの)行動次第ですね」

 その後、協会は八村とコミュニケーションを取って関係を築き、八村の代表に対する提言にも耳を傾けてきた。島田のリーダーシップのもと、伊藤拓摩が強化委員長に就任し、代表のヘッドコーチには桶谷大、そしてアシスタントコーチにはNBAでのコーチ経験がある吉本泰輔とライアン・リッチマンを起用した。

 八村自身、今年春にテレビ朝日で放送された松岡修造とのインタビュー番組で「(協会は)変わってきている」と断言。6月にシンガポールで開催された「NBA Rising Stars Invitational 2026」の場での日本のメディアとの質疑応答のなかでは、代表コーチ陣について、日本の文化をよくわかっている桶谷HCを、NBAで長くやってきた吉本やリッチマンが支えるという「そのミックスがうまくいっているんじゃないかと思う」と評価し、期待するコメントをしている。

 こうして八村と協会の関係も変化するなかで、単なるひとりの代表選手という枠を超えた新たな協力関係も生まれている。世界に通用する次世代の選手たちを育てたいという八村の思いと、八村に続く選手を育てたいという協会の思いが一致。八村が主催する「BLACK SAMURAI 2026」とFIBA U18アジアカップに出場する男子U18日本代表チーム強化合宿の特別融合プログラムということで、名古屋で8月6~8日に開催される「BLACK SAMURAI SUMMIT 2026」キャンプに、U18代表チームも参加することになったのだ。

【ロス五輪への思いを強くする背景】

 7月22日のメディア向けオンライン会見で、島田会長は八村と協力するプロジェクトについて、「世界に可能性のある、ポテンシャルのある選手たちを少しでも手を差し伸べたいという八村選手の思いと、それを歓迎する我々が、お互いに利害の一致じゃないですけれど、相思相愛というか、そういう感覚があったと思います」と言い、さらに「私とかJBAだけじゃなくて、業界全体として世界を意識しているがゆえに、八村選手と日本バスケ、JBAとの距離はすごい縮まっていると感じています」と、両者の良好な関係を喜んだ。

 八村にとっても、自身が力を入れている次世代の育成、世界で戦えるような日本人選手を育てるといったプロジェクトを協会と力を合わせて進めていくことで、協会の本気度もうかがうことができ、自分の意見を伝えやすい状況になってきている。

 そして、その先には、当然、A代表としても世界と互角に戦えるような本気のチーム作りという目標もある。直近では来年のFIBAワールドカップ出場、そして2028年のロサンゼルス五輪出場。8月末にはまずワールドカップ出場権を獲得するうえで重要なFIBAワールドカップ予選Window4の2試合、アウェーでのサウジアラビア戦、そしてホームでカタールとの対戦が行なわれる。NBAのオフシーズンに行なわれる貴重な試合ということで、八村や河村の出場にも期待がかかっていた。

 8月1日、東京都新宿区で行なわれた「BLACK SAMURAI 2026 TOKYO TALKSHOW」で、八村は、自身のファンの前で初めて、出場宣言を口にした。

「今回こうやって日本に帰ってきて、BLACK SAMURAIのキャンプをやって。実は僕、日本に1カ月ぐらいいるんですね。

その理由としては、今回(FIBAワールドカップ予選の)Window4に向けて、日本代表に戻ろうかなと思って」

 さらに、こう続けた。

「また日本でプレーしたい、日本の代表としてプレーしたいって思います。あと僕、よく考えてみると、日本でプレーしたことはあまりないんですよね。なので、日本で本当の(真剣勝負の)ゲームをしたいということで、今回、皆さんの前でプレーできるということを楽しみにしています。日本のバスケを強くしていくため、オリンピックも LAであるので。自分としても、それに向けて日本代表としてまた頑張っていきたいと思います」

 2年後に、ロサンゼルス五輪のバスケットボール競技が行なわれるのは、クリッパーズの本拠地でもあるインテュイット・ドームだ。自身が所属するチームのホームコートで戦うオリンピックで、日本代表として世界と競い合うその日を励みに、八村はこの夏、そしてその先の2年間へと、新たな一歩を踏み出そうとしている。

宮地陽子●取材・文 text by Yoko Miyaji

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