尾西食品(株)(古澤紳一社長)は10月12日、東京本社に台湾からの視察団を招き、非常食の情報交換会を開催した。

視察団は「財団法人台湾デザイン研究院」という政府系シンクタンクのメンバーを中心に構成。
この研究院は、近年台湾で「デザインが国家経済・文化・社会において重要な役割を担う」という認識が高まっていることから、2020年に設立された。

活動内容は台湾のデザイン産業の輸出やデザインの研究、マーケティングのコーチングなど多岐にわたり、今年度の取り組みの一つとして非常食を掲げている。研究院のほかには、食品メーカー10社、台湾行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)の官僚など30人近くが参加した。
尾西食品と台湾政府系シンクタンクらの視察団が情報交換会「台湾での販売増えるも、非常食としての認知度向上はこれから」
尾西食品 非常食情報交換会の様子(2/3)
尾西食品と台湾政府系シンクタンクらの視察団が情報交換会「台湾での販売増えるも、非常食としての認知度向上はこれから」
尾西食品 非常食情報交換会の様子(3/3)

情報交換会はまずアルファ米の紹介から始まり、続いて参加者全員で同社の「携帯おにぎり鮭」を開封、お湯を入れて実食した。その他商品や製造工程の紹介も行った後、輸出を担当する経営企画部・雜部譲担当部長が台湾への輸出状況を説明した。「3年前まではそこまで多くなかったが昨年から増え始め、今年は急激に伸びている」「台湾のドン・キホーテ(Don DonDonki)では現地のものより高い日本の豆乳が売れていると聞く。
これまであまり高い商品は受け入れられてこなかったが、この流れに乗って伸びており広く認知されつつある」などとした。

台湾ではDon Don Donki以外にもそごうや三越といった日系企業の小売だけでなく、現地のSM(スーパーマーケット)である「家楽福(カルフール)」での取扱も増加。Don Don Donkiでは現在、台湾に輸入可能な17商品をフルラインナップし、売場のスペースも広く取って販売しているとのことだ。一方、用途としては非常食ではなくアウトドア向けがほとんどで、雜部担当部長は「今後非常食としての認知度向上を目指していきたい」と意気込みを語った。

台湾デザイン研究所の林(Oliver Lin)副院長によると、台湾では非常食という商品形態が乏しく、そもそもこれまでは防災という意識自体が薄かったという。「ただ近年は震災が増えており、中国との政治的な緊張感も高まっていることから防災に関して徐々に共通認識が出てきた」というのが現状。


林副院長は非常用持ち出し袋の使用方法といった防災教育を行っているとのことだが、「正直に申し上げると防災食に関してはまだまだ意識がなく、これからだ。私の妻は防災意識が非常に高く、家に持ち出し袋を3つも用意してあるが、中身は水と通帳・現金といった貴重品のみで、食品は入っていない」とし、「我々は自治体などと広く強いネットワークを持っているが、食品については知らないことだらけだ。御社と連携してできることがあるのではないか」と期待感を露わにした。

また、「台湾の人々の嗜好に合った防災食はどんなものか?」と、訊かれた参加者は「油や香辛料が多めなものが好ましい。また、台湾人は自分で料理をカスタマイズするのが好きなため、防災食の中からこれとこれを組み合わせて食べるといった選択肢があると良いのではないか」と答えた。

〈米麦日報2022年10月14日付〉