自分たちの住むマンションの隣の建物が、ある日解体され更地になった。この土地は、この後どう利用されるのだろう。
当然ながら役所へ行けば、分かることが多い
マンション住人の間で、最近もっぱら話題になることがある。それは、マンションに隣接する、かつての物流倉庫の跡地だ。マンションが分譲され皆さんが引越してこられてからも、そんなにトラックの出入りが頻繁な倉庫ではなかったが、つい先日解体され、更地になってしまった。「噂では、マンションが建つらしい」「私はスーパーができると聞いたよ」と、噂だけでは埒があかない。
ヨシ! ここは、管理組合役員の順番がまわってきている私が調べてみよう、と思ったAさん。さて、どこに行けば? 誰に聞けばいいのやら。そこで、思いついたのが友人の建築士。さっそく電話してみると、建築確認が出ていれば教えてくれるとのこと。さっそくAさんは、市役所へ。
「建築確認」とは、「建築基準法」という法律に基づく制度で、法律に適合した建物が計画されているかどうかを、チェックするための申請だ。実質的に建築工事の許可を得るために、ほぼすべての建築物は、これを受けることになっている。
市役所「建築審査課」の窓口では、係りの人が丁寧に教えてくれた。そして、「建築計画概要書」なる書類を発行してくれた(自治体により、250円~300円の手数料がかかる)。その中には、建築主、建物の用途から面積、高さ、そして敷地に対する建物の配置図面もあった。つまり、今住んでいるマンションと新しい建物の位置関係も分かった。これで、納得のAさんだったが、なんと、工事現場に確認の表示が標識としてすでに掲げられていたのだった。
つまり、土地利用の計画が決まっていて、建築物の確認申請が下りていれば、現場にその旨の標識が掲げられる。見つけられなくても、市役所へ行けば担当の部署で教えてもらえる。
でも、建築確認は計画が進んで工事が始まる直前の段階だ。もっと前に知ることはできないのだろうか。
条例によって、建築計画を事前に近隣に知らしめることも必要とされている「建築基準法」という法律で決められた手続きが、建築確認。
大きな建築物は周辺の住環境に変化をもたらす可能性がある。建築工事が始まってから、周辺住民に不安や心配を与えることがないように、事業主や建築主には、説明会等を開催することで周辺住民に知っていただき、理解を得ることを求めている。そして、
その説明会や近隣との話し合いの段階で、合意できずトラブルとなった場合に備えて、自治体があっせんや調停を行う制度を設けるところもある。
新しく建築される建物がマンションとは限らない。産業廃棄物処理施設や大規模商業施設が、“ある日突然やってきた”、ではやはりトラブルの元になる。土地を利用し建築物を建てようとするとき、近隣に説明し、理解を求めることが、建築物の用途や規模に合わせて、多くの法律・条例等で決められている。
先ほどの豊中市の「豊中市中高層建築物等の建築等に係る紛争の予防及び調整等に関する条例」の場合、説明会の前に現場では「建築計画のお知らせ」という標識が設置される。その時点で、近隣の住民は知ることができる。
このように、法律や条例で、近隣住民への情報開示や説明を求めているのは、できるだけ事前に周知させて、近隣との話し合いや調整をしておく方が、事業としても進めやすいと考えているのだ。
誰もが興味を持つ、「お隣の空地」。
近隣への説明会は、鉄筋コンクリートの大規模な建築物だけではなく、木造一戸建て住宅の開発でも求められる場合がある。でも、建築計画が決まらなければ、説明会もできない。もっと前に、土地の所有権が変わった時点で知ることができないか? そこで、法務局に備え付けられている登記簿というものがある。土地の登記簿を見れば(誰でも取得できるが手数料が必要)、土地の売買の履歴が分かる。何時、誰がこの土地を買ったのかを知れば、そこに直接問い合わせてもいいし、マンションデベロッパーなのか、事業会社なのか、業種でおおよそ何が建つのか想像はつきそうだ。
●取材協力・大阪府豊中市 都市計画推進部 建築審査課 元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/06/112722_main.jpg 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル