ある日、「昔ながらの粋な立ち食いそば屋がある。とうふめしが旨いよ」と知人に紹介されました。

そうして訪れた東京・牛込柳町の『白河そば』で、塩だしのひもかわうどんと“とうふめし”に感激した筆者。全メニュー制覇をもくろみ、足しげく通うことに。「こりゃ旨い!」と唸ったメニューをご紹介します。

“立ちソバ愛”を感じる『白河そば』

 最近の「立ち食いそば屋」はスマートな食券スタイルが多いようですが、筆者は昔ながらの対面式の店の方がむしろ「クールでホット」だと思います。食券スタイルの店というのは、食券を見て料理を出しますが、対面式は違います。

 常連客が「かけ」と言うと、ご主人は客の顔をちらりと見て「あいよ」と言ってササッとそばを茹がき、スッと丼を出してくる。ものの数十秒。このアイコンタクトと「あ・うん」の呼吸の中に隠された「元気そうだね」や「頑張ってるね」などの思いやりや情を感じるのです。つまり対面式の立ち食い蕎麦屋さんはお客さんの顔を見て、料理と真心を一緒に出している。そこがいい。

 そんな「クール&ホット」な立ち食い蕎麦屋の代表とも言えるのが東京・牛込柳町の『白河そば』です。知人に紹介されて訪店したら、まさに筆者が求めていた昔ながらの粋な立ち食いそば屋だったのです。創業45年間、頑なに券売機を入れず、注文も会計も、作り手であるご主人と客との1対1のスタイル。

 筆者が初訪店した日。うどんをお願いするとご主人は、無駄1つない動きで麺を茹でながらお代を告げ、筆者がモタモタと財布から小銭を出している間に、ポンと丼を出し、「ゆっくりでいいよ」とニコニコ。

 そんなご主人の粋な姿とアイデア満載のメニューの数々にハマってしまい、全メニュー制覇をしたい野望がふつふつ。道半ばではありますが、これまでに筆者が食べた絶品メニューを紹介します。

絶品「とうふめし」を発見! 粋な立ち食いそば屋『白河そば』で食べてきた
絶品「とうふめし」を発見! 粋な立ち食いそば屋『白河そば』で食べてきた

『白河そば』絶品メニューをご紹介

「かき揚げ天」(ひもかわうどん)

絶品「とうふめし」を発見! 粋な立ち食いそば屋『白河そば』で食べてきた

 改めて『白河そば』とはどんな店かというと、正真正銘の立ち食いそば屋です。最近では「立ち食い」と見せかけて椅子の用意もある店が増えましたが、『白河そば』はあくまで椅子ナシを徹底しております。

 また、看板に“元祖・塩だし”を掲げているように、創業以来、お醤油は使わず、かつおや昆布、椎茸でとったお出汁に赤穂のお塩を入れた温かい「塩だし」。冷たいおそばの方にはちょっと甘めの「割り下」を使っています。

 そして麺は「そば、うどん」があり、とくにうどんは、北関東名物の「ひもかわうどん」を出しているのです。そこで初日は、そのひもかわうどんをいただくべく「かき揚げ天」(うどん)570円にしてみました。

絶品「とうふめし」を発見! 粋な立ち食いそば屋『白河そば』で食べてきた
絶品「とうふめし」を発見! 粋な立ち食いそば屋『白河そば』で食べてきた

 立ち食い蕎麦屋の「かき揚げ」は各店、具材はいろいろですが、こちらはガッツリ玉ねぎを味わうかき揚げ。大きく切った玉ねぎがごろごろはいっています。そして「かきあげ天」の温かいうどんのつゆは、「塩だし」というだけあって透き通っています。

 最初はかき揚げのサクサク部分を箸で捕まえていただくと、とろりとした玉ねぎの甘みが広がります。そして、すぐさま油が溶け出していない状態のつゆをズズッとひと口。薄味かと思いきや、ダシが効いているので、しっかりした味。うどんは“やわやわ”で、優しい味のおつゆとの相性抜群です。

 今度は、かき揚げをおつゆにしっかりと沈没させていただくと、つゆの味にまろやかさが加わります。かき揚げ天がバラバラそばになるにつれ、つゆの濃厚さが増しますが、普段食べている立ち食い天ぷらそばの醤油甘辛味とは全く違い、天ぷら油が溶け出しても塩だしうどんは、くどくはならず、いつまでもあっさりした味わいなのです。

「とうふめし」

絶品「とうふめし」を発見! 粋な立ち食いそば屋『白河そば』で食べてきた

 うどんだけでは足りず、サイドメニューを注文することにしました。こちらでは「小さいごはん」として「刻みご飯」(油揚げの入ったごはん)や玉子ごはんなどのメニューがあるのですが、お客さんの多くが注文しているのは「とうふめし」です。ご主人によると日本橋のおでん屋さんにもあるメニューで、そちらではおでん汁でた豆腐をご飯に載せているようです。

『白河そば』の「とうふめし」は、ご覧のように白いお豆腐が日焼けをしたかのように小麦色! すこし水分を抜いた感じで、きゅっと引き締まってします。

絶品「とうふめし」を発見! 粋な立ち食いそば屋『白河そば』で食べてきた

 お豆腐をいただくと、すき焼きのような甘辛い醤油味で、そこはかとなく牛肉の味がするんですよ! ねぎ、ごま、海苔とともにピリッと山椒も効いていて、こんな美味しい豆腐を食べたことありません! ごはんの方にもそのタレがまぶされており、目を閉じれば、すき焼きごはんを食べているような味なんです。

 好きなだけ入れられるセルフサービスの紅ショウガや刻みたくあん、梅干しを入れて食べたら、Sサイズにしたことを後悔するくらいご飯が止まりません。

 ご主人に聞くと、「牛めしのタレでお豆腐を煮込み、味を染みこませるため、冷蔵庫で丸2日寝かせている」とのこと。しかもお豆腐は近所の美味しいお豆腐屋さんから入れている昔ながらの手作り豆腐だそうです。これはすごい食べ物を発見してしまいました!

  メニューを見ると、この「とうふめし」には、“ちょいがけカレー”というのもあって、カレーをかけることもできるようです。まだまだ、たくさん食べてみたいものがあります。しかし今日はお腹いっぱい。

 そこで「また、明日も来ます!」といってご主人に声をかけ退店。店を後にしながら、胸にいだいた『白河そば』メニュー制覇。そこで、翌日から通うことにしたのです。(つづく)

(取材・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

絶品「とうふめし」を発見! 粋な立ち食いそば屋『白河そば』で食べてきた

店名:白河そば

住:東京都新宿区原町2-8
TEL:03-3358-7675
営:7:00~14:30(土~14:00 ※早じまいあり)
休:日祝

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