「これ、うどんじゃないの?」と驚くほど“極太・純手打ち麺”が特徴のラーメン店『麺と未来』が下北沢に登場しました。5月16日(水)、何の前ぶれなくオープンしているとの情報をもとに、さっそく取材してきました。

 画像をご覧いただくとわかるように、かなり太い麺で、讃岐うどんや山梨のほうとうのようにも見えますが、食べてみると、麺はもちもち、味わいはしっかりとした“塩ラーメン”。しかも極上の味わいなんですよ。

 筆者は、スープをいただいて「旨っ!」と唸り、麺を噛み締めて「うわっ!」、さらに脇を固めるチャーシュー・メンマ・海老ワンタンを口にして「旨すぎ!」と、下手な食レポのような感想を連発してしまいました。新店とは思えない完成度の高さなのです。そのおいしさの秘密をしっかり聞いてきたので、さっそくご紹介します!

前代未聞のもちもち塩ラーメン『麺と未来』が下北沢に登場! 手打ち“極太麺”と“塩だれスープ”が旨すぎる

丼の中の手間ひまに驚愕!

前代未聞のもちもち塩ラーメン『麺と未来』が下北沢に登場! 手打ち“極太麺”と“塩だれスープ”が旨すぎる

 ラーメンの種類は「塩らーめん」780円、「特製塩らーめん」980円、「海老塩わんたんめん」1,080円の3つ。「特製塩らーめん」は、海老ワンタンが2つ入っていて、ここのイチオシというので、これを注文してみました。

 まず、極太麺。これはラーメン界でもトップクラスの太さだと思います。店の奥の隠し部屋のような場所で、毎日「手打ち、手切り、手もみ」のまさに“純手打ち”しています。小麦は三重県産の「もち姫」だそう。

 マスターの市川誠さんによると「小麦には、お米同様に“うるち小麦”と“もち小麦”の2種類があります。通常の麺は、うるち小麦で作りますが、うちでは、もち小麦を100%使用して、これまでのラーメンにはなかったもちもち感を目指しました」と言います。

前代未聞のもちもち塩ラーメン『麺と未来』が下北沢に登場! 手打ち“極太麺”と“塩だれスープ”が旨すぎる

 いただいてみると、確かに麺のもちもちとした舌触り、ふわふわとした食感。そして、この太さだからこそ、小麦の美味しさがジワリ、ジワリと押し寄せてくるよう。また、塩味の優しいスープが麺にどんどん染み込んでいき、食べ進めるごとに味わいが変化していくのです。これがたまらなく魅力的です。

前代未聞のもちもち塩ラーメン『麺と未来』が下北沢に登場! 手打ち“極太麺”と“塩だれスープ”が旨すぎる

 スープは、丸鶏と鶏の手羽先に、アサリ、羅臼昆布、カタクチイワシ、鰹枯節など魚介系を合わせた出汁に、特製の塩だれをプラスした、完全無化調の「塩スープ」です。このスープのとり方も独特で、直接、寸胴を火にかけるのではなく、寸胴を2つ重ねて、湯煎で炊いているんです。


「湯煎の方は沸騰させずに、底だけでなく鍋の側面からも火を優しく入れていくので、素材に対してもじんわりと火が通り、柔らかなエキスを取り出すことができます」(市川さん・以下同)

前代未聞のもちもち塩ラーメン『麺と未来』が下北沢に登場! 手打ち“極太麺”と“塩だれスープ”が旨すぎる

 続いて具材です。海老ワンタンは、ツルンツルンの薄い皮の中にプリプリの海老が入っています。この皮ももちろん自家製で、麺と同じ小麦「もち姫」を使用しているそうですが、麺とは全然違う食感なんですよ。

前代未聞のもちもち塩ラーメン『麺と未来』が下北沢に登場! 手打ち“極太麺”と“塩だれスープ”が旨すぎる

 そしてチャーシューは、豚バラ肉の煮豚で、厚めで極太麺に脂のとろりとした甘みがよく合います。さらに、メンマ。こちら、食べて驚くのですが、柚子の香りがするんです。

「乾燥メンマを1週間以上かけて水で戻してから煮込み、柚子の果汁で仕上げています。ラーメンを食べている間の箸休めとして、爽やかなメンマにしたかったんです」

 丼の中の一つひとつにこだわりがありつつ、それらのまとまりも素晴らしい。麺の太さも、決して奇をてらっているわけではなく「この麺が最高!」と思わせる塩梅になっています。この “極太もちもちラーメン”には、店名通り、麺の“未来”を感じさせられます。

 このラーメンを考案した市川さんに興味が湧き、お話をさらに聞いてみました。

前代未聞のもちもち塩ラーメン『麺と未来』が下北沢に登場! 手打ち“極太麺”と“塩だれスープ”が旨すぎる

 今年30歳の市川誠さんは、なんと高校時代の15歳からラーメン業界に携わり、大学に通いながら、ずっと理想のラーメン作りを研究してきたそうです。

「いろいろなラーメン店で経験させてもらいました。そんな中で、ここのオーナー・久保寺さんと出会い、“理想とする個性を生かしたラーメンを下北沢で表現してみたら?” と後押ししてもらったんです」

前代未聞のもちもち塩ラーメン『麺と未来』が下北沢に登場! 手打ち“極太麺”と“塩だれスープ”が旨すぎる

 そこでまず麺の理想を実現しようと思ったそうです。

「ラーメンは一般的に噛み切るときの食感を重視します。ワシワシ、パツパツといった具合です。しかし、博多うどんのような、もちもち、ふわふわ、ツルツル、といった口に入った時の舌触りと、噛みしめていくと口の中にまとわりつくような感じを、ラーメンで表現しようと思ったんです」

前代未聞のもちもち塩ラーメン『麺と未来』が下北沢に登場! 手打ち“極太麺”と“塩だれスープ”が旨すぎる

 小麦や米の中のでんぷんにはアミロースという成分があり、その量が多いほど、ゴムのような硬い食感になります。反対にこれが少ないほど、もちもちになります。

「うちで使用している“もち姫”(もち小麦)は、新しい小麦の種類で、超低アミロースなんです。試してみると、非常に粘りが強く、冷めても食味が変わらない。これなら自分の理想とするもちもちの手打ち麺が作れると思いました」

 さらに、一般的に水で締めるうどんですが、ラーメンはそういうプロセスがないので、茹で時間もかなり研究したとのこと。結果、麺の外側はトロトロ、中はふわふわ、芯は歯ごたえが残る麺が完成したそうです。

前代未聞のもちもち塩ラーメン『麺と未来』が下北沢に登場! 手打ち“極太麺”と“塩だれスープ”が旨すぎる

 スープも鶏などの動物系より和風出汁の比率を多めにすることで、極太の麺に合うようにしているほか、ラーメンのコアになる“脂”は、比内地鶏とコーチンから取った脂を使っているそうです。

「また、合わせる塩だれなんですが、一般的には和風出汁をとって、そこに酒やみりんを少し加えて作りますが、うちの塩だれの液体の半分以上は日本酒。飲んでも美味しい日本酒の“蔵の素”を煮切り、そこに出汁を合わせ、さらにパリの三ツ星レストランでも使用されている“鮎魚醤”をちょっと加えています」

 聞けば聞くほど、市川さんのラーメンに対する研究熱心さが伝わってきます。そういえば、シモキタといえば、昔から若者が個性を表現する街でもあります。体に優しいという基本の精神を持ち、新しい美味しさに挑戦している市川さんのまっすぐな心を表現したかのような、純手打ちのもちもちの極太塩ラーメンは、感動必至。ぜひ、味わってみてください。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

前代未聞のもちもち塩ラーメン『麺と未来』が下北沢に登場! 手打ち“極太麺”と“塩だれスープ”が旨すぎる

店名:純手打ち 麺と未来

住:東京都世田谷区北沢3-25-1 シャトルヒエイ1F
TEL:非公開
営:11:30~14:30、18:00~麺・スープ売り切れまで
休:月