きょうのテーマは「海の厄介者の有効活用」についてです。

まず取り上げるのは、愛知県三重県にまたがる伊勢湾。

ここ数年、伊勢湾ではヒトデが一気に増え、漁の現場を悩ませているそうです。ヒトデは網にからんで漁のじゃまをしたりと、漁場を荒らしてしまうため、地元の漁協では毎年、何百キロものヒトデを駆除してきました。

捨てられるはずのヒトデが山を救う?

ところが最近、この困った存在だったヒトデが、思いがけない場所で役に立ち始めています。中部国際空港株式会社 地域共生部 伊藤 淳一さんにお話を聞きました。

中部国際空港株式会社 地域共生部 伊藤 淳一さん

ヒトデは動物の忌避剤としてシカ、イノシシなどから、ムカデ、ゴキブリ、鳥類に関しても効果があると言われています。私達はいただいた生のヒトデを屋外で忌避剤として使用するために天日干しをして、シンクのゴミ受けのネットに入れ、苗木の周りにぶら下げているという形です。植林した樹木を実際に管理している方のお話ですが、150本のコナラとクヌギの苗木は今2年経っていますが、シカやイノシシによる食害はほとんど見られないということで確実に効果があると聞いています。古くなった忌避剤は地面に撒いてですね、肥料として効果があるんで捨てることなく、ヒトデは役に立ってくれるのかなというふうに思っています。

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ヒトデには農作物を荒らすシカやイノシシなどを寄せ付けない効果があるそうです。ヒトデの忌避効果のポイントは、 独特の強いにおい と、ヒトデの体内に含まれる 「サポニン」という成分。この2つが動物にとって強い刺激になり、「ここには近づきたくない」と感じると考えられています。そのヒトデの力に注目したのが、中部国際空港。伊勢湾の鬼崎漁協ではアサリの漁場を守るため、毎年ヒトデを駆除してきましたが、空港はそのヒトデを譲り受け、植林活動の獣害対策に役立てることを思いついたそうです。

さらに空港では、貨物倉庫に入ってくるハトの対策にも試験的に使用中。既存の商品では「クマにも効く」と書かれたものもあることから、今後は山のエリアでの検証も考えているそうです。

海の厄介者が「讃岐名物」に

ただ、増えすぎて困ってしまう海の生き物はヒトデだけではありません。瀬戸内海に面する香川県では、ムラサキウニが増えすぎて、海藻を食べつくしてしまう、「磯焼け」が深刻です。そうした中で、この困った存在を、香川ならではの知恵で、新しい名物「讃岐うどん雲丹」に育てようという動きが出ています。遊食房屋 取締役営業本部長 細川 明宏さんのお話です。

遊食房屋 取締役営業本部長 細川 明宏さん

ウニにうどんを与えて育った讃岐ならではの名物 讃岐うどん雲丹です。ウニが大量発生しすぎて、磯焼け問題という海の砂漠化が起きてまして。餌がないので、ウニはたくさんいても中身空っぽなんです。それはもう食べれないです。実が少しあっても、すごくえぐくて苦いですね。讃岐うどんは30分以上経ったものが提供できなく、余ったものは無料で持って帰ってもらったりしてたんですけど何か使えないかなっていうところで、うどんを与えると予想以上に甘くてクリーミーなうにができたというとこですね。

香川では、痩せて食べられないムラサキウニを、捨てられるはずだった讃岐うどんで育て直す取り組みが進んでいます。

香川県の遊食房屋と県立多度津高校の生徒が協力し、本来は海藻しか食べないウニに、毎日5グラム程のうどんを与えると、およそ2ヶ月で身が戻り、甘さやクリーミーさがでてきたそう。うどんを食べて育ったためか、一般的なウニより少し白っぽい色になるのも特徴だそうです。

海の困りものが資源へ 広がる利活用の取り組み

エサを変えると味も変わる?

では、今回うどんを食べることで美味しいウニが誕生しましたが、他の食べ物でもウニは美味しくなるのでしょうか。再び、遊食房屋 細川さんに聞きました。

遊食房屋 取締役営業本部長 細川 明宏さん

讃岐うどんを作る過程から廃棄される、いりこであったりこんぶであったりは初めには目をつけてましたが、こんぶをあげたとしてもだしを取った後なので、美味しさが半減するんですよ。いりこを与えると苦味がすごいんですよ。雑味の、まずくはないんですけど。実際にうにの種類は違うんですけど、愛媛の方の愛南町、そこは愛媛の柑橘系のミカンとか、そっちの方でやってる方もいらっしゃるんですよ。

海の困りものが資源へ 広がる利活用の取り組み

いりこや昆布など、うどん以外の材料も試したそうですが、味に雑味が出たり、風味が落ちたりして、うどんが一番おいしく育つことが分かったそうです。瀬戸内海では同じように磯焼けに悩む地域が多く、愛媛県では特産品の、ブロッコリーやみかんを使ったウニも開発されています。捨てられるはずだった食材を活かして、その土地ならではの新しい味を生み出す工夫が広がり始めているそうです。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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