新年度が始まって、引っ越しや片づけをした、という方も多いと思います。実は今、全国の自治体でも「いらなくなった物をどうするか」が切実な問題になっています。

これまでは多額の費用をかけて廃棄処分されてきましたが、今、こうした備品をただ捨てるのではなく、意外な方法で生かす動きが広がっています。

役所の備品、売ってみたら

その方法とは、なんと個人ではなく自治体が、不用品を売り買いできるインターネット上のフリーマーケット「メルカリ」への出品。なぜこの取り組みを始めたのか、東京都・立川市教育委員会の道下 寿郎さんに聞きました。

東京都・立川市教育委員会 道下 寿郎さん

庁内において環境負荷の面から使えるものは廃棄せずに再活用できないかという意見がありました。他の自治体さんを調べると実際にやっている自治体もありましたので、やってみようかという話になったところです。ホッチキスや、音は鳴るんですけど、弦が1本切れてるピアノ、あと握力計だったり、そういったものが意外と売れたものです。売上金は18万6200円です。このメルカリの分を売った分を捨てたら、大体40万程度かかると業者さんから聞いてます。 

立川市では去年、3つの施設を統合した際に出た備品を出品しました。弦が切れたピアノは、1000円、握力計が2000円、ホッチキスは6個セットで300円だったそうです。

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特に人気だったのが昭和55年=1980年 に購入された木製の電話台などで、レトロなデザインがかえって新鮮だと好評だったそう。

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また、梱包の手間を省くため「現地での直接引き取り」限定にしましたが、近隣の住民を中心に購入者が集まり、用意した250点のうち170点も売れました。市役所の備品ということで、「安心感がある」という声が多く聞かれたそうです。

一部の部署での試行でしたが、今年度から市役所全体でこの取り組みを広げていく予定です。

学校の思い出が、家の中へ

続いては「廃棄予定の学校の備品」を意外な方法で生かす動きについてです。こちらはそのまま売るのではなく、ひと手間を加えて、全く新しい価値を生み出す「アップサイクル」による取り組みとなっています。大阪府で、インテリアブランド「upcycle interior」を運営する、土井 健嗣(どい けんじ)さんにお話を聞きました。

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upcycle interior 土井 健嗣さん

学校アイテムっていうのは皆さんが絶対使ったことあるアイテムなので、それを見てこんな懐かしい思い出があるとかこうだったよねっていうような昔を思い出せるアイテムとしては一番馴染みがあるアイテムかなと思います。ランドセルを使った時計であったり鏡とかウォールポケットを作ってるんですが、自分のものをもう一度使ってもらえるっていう形のリメイクをさせてもらってるので非常に反響は大きいですし、この間も自分の娘の結婚式の日に当時使っていたランドセルを時計にしてプレゼントしたいっていうようなお母さんがいらっしゃったり、使ってなかったものがもう一度動き出すだとか、ほこりかぶって暗いところにいたものにもう一度光を当てるっていう意味のメッセージを伝えたいので、時計であったりだとかにしてる作品が多くなってますね。

ランドセルは、蓋の部分に文字盤をつけて、壁掛け時計に作り変えたりしているんです。

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ほかには、学校の机や椅子の足の部分をカットして、家の中で使えるようなローテーブル、ローチェアにリメイクしています。

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学校の備品は、もともと長く使う前提で丈夫に作られているので、家で使うインテリアにも向いているんだそう。

捨てられるはずの楽器に新しい役目

この「upcycle interior」による、捨てられるはずだったモノをよみがえらせて社会に役立てる動きは、今、企業との間にも広がっています。中古楽器の買取も行っている「島村楽器」と協力して、新たな循環の仕組みを立ち上げました。一体どんな内容なのか、再び土井さんに聞きました。

upcycle interior 土井 健嗣さん

島村楽器で中古楽器の買い取りをされてるんで、そこでも買い取れないぐらいの素材っていうのがあるそうなんです。

それを今まで断ってたのを我々に提供していただいて、我々がそれを作って島村楽器さんから販売されると、その売り上げは全てまた、新しい楽器を買うための資金にするっていう形の取り組みを始めてますね。トランペットの照明であったり、クラリネットの照明とか。ホルンを使った照明もそうですし、タンバリンの時計であったりだとか、ペンダントライトにしてるっていうのは島村楽器さん素材を使いながらっていうところがあります。

ちなみに土井さんによると、楽器のアップサイクルは想像以上に難しいそうです。例えばトランペットは、メーカーによって金属の厚みや重さが全く違うため、照明として真っ直ぐ立てるだけでも、バランスを取るのにとても苦労するといいます。

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そのため大量生産はできませんが、だからこそ、どれも世界に一つだけの一点モノになるそうです。ちなみに、トランペットの照明はおよそ1万2000円。現在はインターネット販売を通して全国から注文が入り、なかでも東京からの注文がとても多いそうです。捨てる前に立ち止まることで、物の寿命を変えるのかもしれません。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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