今日は「地図」のお話です。ニュースを聞いていると、世界の様々な国の名前が出てきますが、パッと思い浮かぶ「世界地図」についていま国連がざわついています。

先日、アフリカ連合(AU)に加盟する55の国が「地図の描き方、変えませんか?」と国連に提案したそうです。旗振り役は西アフリカの国「トーゴ」。一体どういうことなのか。地図作りの専門家で解説サイトも運営している、羽田康祐さんに伺いました。

異議あり! 世界地図が引き起こした「アフリカ縮みすぎ問題」

地図専門家 羽田康祐さん

アフリカの国々を「メルカトル図法」で表現すると、ヨーロッパとか北米とかの先進国に比べて「面積が相対的に小さく表示される」ので、面積が正しく表示される地図を使うべきだっていうふうに主張している、こういった内容になっています。

「丸い地球」を平面に正確に展開することっていうのはできないんですね。例えば、みかんの皮を剥くと、ヘタといううんですかね、先っぽの部分がどうしても尖ったような形に剥かれると思うんですよね。で、それを埋めるような形で引き延ばすってことは「横」に引き伸ばすことになると思うんですよ。これが、北に行くほど北極点に近づくほど伸ばす割合っていうのはどんどん大きくなっていくんですね。アフリカのトーゴって赤道付近の国なんですけど、そのトーゴの位置に比べると、ロシアとか、北米、カナダとかは特に面積が誇張されていると。

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<メルカルト図法のアフリカ。十分大きいようにも見えるが…>

学校の授業でもおなじみの「メルカトル図法」。16世紀に作られたこの図法は、球体の地球を「横」にも「縦」にも引き伸ばして作られているため、高緯度にある地域ほど「びよーん」と拡大されてしまいます。

一方で赤道付近のアフリカはそれほど伸びない。これが「不公平だ」という主張です。具体的にどれほど大きさが違うのか、再び羽田さんのお話です。

グリーンランドとアフリカ「実は14倍も違う」

このメルカトル図法では「グリーンランド」が例に出されるんですけども。グリーンランドはかなり緯度が高い場所にあるので、本来の面積よりもかなり誇張されて表現されてしまう。その結果メルカトル図法で見ると、グリーンランドとアフリカ大陸が「ほぼ同じ面積」と受け取られてしまうんですよね。

でも実際はそんなことはなくて、(アフリカは)グリーンランドに比べて実際は「14倍」も面積が大きい。はずなのに、同じ面積で示されてしまっているというのが、メルカトル図法の特徴。今回「アフリカはそんな小さな国々じゃないんだぞ」っていうのが今回のニュースの焦点になっている焦点なんですよね。

アフリカはグリーンランドの14倍!? "世界地図”をめぐるウラ事情
<【メルカトル図法】16世紀に航海用として考案された図法。角度は正しいが、高緯度ほど面積が拡大される。北極近くにある白い逆三角形がグリーンランド。確かにアフリカ大陸と同等の面積に見えます。
(画像出典:Wikimedia Commons / Public Domain)>

地図上ではアフリカと大差なく見えるグリーンランドですが、事実は14倍の開きがあります。この歪みは1980年代から問題視されており、教科書などでは「ミラー図法」や「エケルト第4図法」などへの切り替えが進んでいました。

ところが、2005年に状況が一変します。Googleマップの登場です。Googleがメルカトル図法(Webメルカトル)を採用したことで、せっかくの修正の流れが引き戻されてしまった形です。

現在、アフリカ連合が推奨しているのは面積を正確に表した「イコールアース図法」という横長の楕円形の地図。

アフリカはグリーンランドの14倍!? "世界地図”をめぐるウラ事情
<【イコールアース図法】2018年に発表された「面積が正しい」最新の図法。形と面積のバランスに優れている。(画像出典:equal-earth.com / Tom Patterson)>

SNSでも「#CorrectTheMap(地図を正そう)」というハッシュタグで問題提起をする動きが出ています。

「地図の修正より、まずは衣食住を」現地の切実な声

では、国連をも巻き込むこの動きを、アフリカの専門家はどう見ているのか。長年、現地の政治や紛争を研究してきた神戸女学院大学の教授、米川正子さんに伺いました。

神戸女学院大学教授 米川正子さん

それは欧米諸国にとって、メルカトル図法というのは、かなり都合がいいものだと思います。

アメリカだけでなくヨーロッパの面積が大きいと、優越感を持ってしまうんですよね。逆にアフリカの国々は劣等感を持ってしまうと。やっぱり自分たちの国をより大きく見せたいとか、存在感・プレゼンスを見せたいっていうのは、国連会議でも発言力を高めたいとか、やぱっぱりそれは出てきますよね。

ただ、アフリカ連合の政治家がこれを推しているということですけれども、そのアフリカ連合を通して。でもその一方で、もっともっと重要なことがあると。特に私は難民保護に携わってきましたので、彼らの命をどうするか、彼らの身分証明書どうするかとか、そっちの問題のほうが重要でしたので。長年続いている紛争ですとか、汚職ですとか、衣食住を満たしてほしいとか…。だから多分地図の修正を通して、基本的な問題を(目を)逸らすためにこれを使っているという、そういった政治的な問題もあるんじゃないかなという風に、そういった見方もありますよね。

市民の中には「地図より先に生活を」という切実な声もあるようです。実は1970年代にも、アフリカが推奨していた「ピーターズ図法(アフリカが非常に細長く巨大に見えるが、面積は正しい地図)」があったそうです。

「自分たちの国がどう描かれるか」は、単なるビジュアルの問題ではなく、その時代の力関係を映し出す政治問題でもあります。トーゴが準備している決議案は、今年9月の国連総会で投票にかけられる見通し。

賛成多数となれば、国連の公式な地図が切り替わることになるかもしれません。

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)

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