この時期、夏風邪と間違えやすいのが「扁桃炎」。熱が出たり、のどの痛みがあり、夏風邪だと思い市販の風邪薬を飲んでも、治りが悪い、こうした場合、のどの入り口付近の扁桃が炎症を起こした「扁桃炎」かもしれません。

また、扁桃炎は、慢性化し何度も繰り返す人もいます。悪化すると、うみが広がり手術が必要になったり、腎炎などの引き金になったりすることもあります。軽く見ないで早めの治療が大切です。

そこで、7月1日(月)、松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、扁桃炎について取り上げました。

★扁桃炎とは?

扁桃炎は、喉の奥にある「扁桃」と呼ばれる部分が、なんらかの原因によって炎症を起こした状態です。

扁桃の場所ですが、口を大きく開いて舌をやや下げるようにした状態でのぞきこんでみると、のどの奥の左右にぷっくりと膨らんでいる部分があります。これが一般的にいわれる扁桃で、医学的には口蓋扁桃(こうがいへんとう)と呼ばれます。

人間の体には「免疫」と言う働きがあります。外から異物が入ってきたときに、すかさず、それを攻撃して排除してしまいます。体外からの入り口の鼻や口で免疫機能を持っているのが口蓋扁桃なのです。

そのため、扁桃の表面にたくさんの凸凹があります。これは、のどにやってくるウイルスや細菌をなるべく多くくっつけるためですが、細菌やウイルスの巣になりやすいという面ももっています。

疲れやストレスなどで抵抗力が弱ると感染を広げ、炎症を引き起こしてしまいます。これが「扁桃炎」です。

★扁桃?扁桃腺?

ここで抑えておきたのは、「扁桃」と「扁桃腺」は違うのか?

答えは「同じ」です。

昔は扁桃のことを「扁桃腺」と呼びました。「腺」というのは、リンパ腺とか甲状腺とかの「腺」で、体に不要なものを排出したり、必要なものを取り込んだりする働きがあります。

ところが扁桃は、扁桃腺と呼ばれていましたが、実際には「腺」ではなかったんです。そのため、近年では、扁桃腺ではなく、扁桃と呼ぶのが正しい呼び方となっています。

★扁桃炎の原因

原因となるのは、細菌とウイルスです。原因となる細菌は、溶連菌や黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、梅毒、淋菌などさまざまです。

またウイルスでは、インフルエンザウイルス、アデノウイルスなどが原因で発症することもあります。

ただ、いずれの細菌やウイルスも強いものではないので、通常は感染しても身体の免疫力で減少・除去されてしまうことがほとんどですが、免疫力が低下していると発症してしまいます。扁桃は、まさに防衛の最前線なのです。

★症状は?

扁桃炎の主な症状は、扁桃が赤くなってはれて大きくなり、痛みがひどくなったりします。両方の扁桃が腫れることもありますし、片方だけのこともあります。

また息苦しくなったり、ものを飲み込みづらくなったりします。食事ができない、あるいは水も飲めないほどの痛みがあります。

さらに、38度以上の発熱、寒気や震え、首のリンパ節のはれ、身体のだるさ、頭痛、関節痛などがあります。症状が進むと首が腫れてきて、口も開けにくくなります。

★風邪?扁桃炎?見分け方は

今の季節、夏風邪と間違える場合があり見分けることが重要になりますが、扁桃炎は風邪と違い、咳はあまり出ません。ここが大きなポイントです。ただ、症状だけでは判断しづらい場合もありますので、耳鼻咽喉科で早急にのどを診てもらうことをおすすめします。問診と視診で、まず診断がつきます。

その扁桃炎は、人にうつると思っている人もいます。でも、それはありません。

さきほどもお話したように、免疫力の低下が引き金になって発症します。ですので、免疫力がある健康な人が、扁桃炎にかかっている患者さんと接しても、まず、扁桃炎がうつることはありません。あくまでも免疫力が低下することが扁桃炎になる原因です

★扁桃炎の治療は?

ウイルス性の場合は痛みや発熱に対しては対症療法として解熱鎮痛剤を使用します。

一方、細菌性の場合は主に抗菌薬も用いられます。具体的にはペニシリン、セフェム系抗生剤で、食事が取れるのであれば、抗菌薬等の内服でも治療可能ですが、食事が取れない場合は、入院の上、抗菌薬の点滴をします。

★扁桃を摘出する手術も

一方で、手術を検討することもあります。それは、扁桃炎が慢性化した慢性扁桃炎の場合です。

慢性扁桃炎は、扁桃炎を何度も繰り返すものです。慢性化する理由は、「夜更かし」や「タバコの吸い過ぎ」「アルコールの飲み過ぎ」など日常の不摂生が挙げられます。また空気の乾燥などはのどに刺激を与えてしまうため、アルコール、タバコと合わせて慢性化する要因となります。

慢性扁桃炎になると、扁桃の表面にあるくぼみから膿栓と呼ばれる白く小さな塊が出てきますが、これ以外の症状がほとんどない場合は、特に治療は必要ないとされます。

ただし、強い喉の痛みや発熱の症状を繰り返す場合や、扁桃病巣感染症が見られるときは、手術による扁桃の摘出が勧められています。

扁桃病巣感染症は、慢性扁桃炎で他の場所に2次的に病気が引き起こされます。それには、皮膚疾患や腎障害などがあります。

★手術するかどうかの基準は

日本の基準では、小児においては感染症が1年で4~5回以上、または2年で5~6回以上ある場合に手術の必要性があるとしています。

また、抗菌薬による治療を行っても改善しない重度の急性扁桃炎や、扁桃の肥大による閉塞で睡眠障害が起こる場合などにも手術が検討されます。

★どのような手術なのか?

手術は全身麻酔下で扁桃摘出術を行います。手術時間は30分から1時間程度ですが、手術の検査のために、2日ほど、術後に5日から6日ほどの入院が必要です。

手術後に入院が必要な理由は、切除部分を切ったままの状態にしておかないといけないので、出血することがあるなど、注意しなければならないことがあるためです。

★扁桃がなくても大丈夫?

扁桃摘出手術を行うと免疫力がグンと落ちてしまうと思う方も多いようです。ただ、一般的にはその心配はありません。

手術で摘出する扁桃は、主に口蓋扁桃です。その他にも、扁桃は周辺に多くありますので免疫力が極端に落ちることはありません。

★扁桃炎の敵は免疫力の低下

急性扁桃炎を起こさないためには、原因である免疫力の低下をしっかり抑えることです。

十分な睡眠を取り、食事もきちっととり、規則正しい生活です。無理はしない。特に糖尿病など全身疾患のある人は、より注意して体力の温存に努めましょう。

▼解説:医学ジャーナリスト松井宏夫

夏風邪と間違えやすい「扁桃炎」その症状と治療の画像はこちら >>

◆7月1日放送分より 番組名:「森本毅郎 スタンバイ!」内「松井宏夫の日本全国8時です」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20190701080130

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