TBSラジオ「ACTION」毎週月~金曜日15:30より生放送中。
TBSラジオ社内で定期的にいだてん愛を叫んでいる、「荻上チキ・Session-22」の南部広美さん。
毎週感想をTwitterに投稿している裁判傍聴芸人・阿曽山大噴火さん。
落語にも精通。「東京ポッド許可局」の屁理屈男・サンキュータツオさん。
7月1日(月)の「ACTION」は、TBSラジオではおなじみの方々が、「いだてんウォッチャー」としてスタジオに集結。脚本家・宮藤官九郎さん本人の前で、勝手に「いだてん」の魅力や解釈を語る企画。
この日は、いだてん第2部が始まった翌日。3人とも、1話から全て見直して、この日を迎えたそうです。控え室から、「いだてん」語りは始まっていました。
南部:宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど、私は2016年から『いだてん』のために準備しています。
宮藤:その頃、僕はまだ1行も書いてませんけど(笑)

南部:大河は1年じゃないですか。日曜8時にテレビの前で…というのは元々の視聴体系としてはあったのですが、岩手から上京して色々あって身体から抜けているなと。「これはいだてん仕様にしないといかん」と思って。
幸坂:そんな南部さんから見て、『いだてん』の魅力は何でしょうか?
南部:見るにあたって一番楽しみにしてたのは、”思い出し笑いポイント”という記憶を自分の中で作ることだったんですよ。だから今年の思い出し笑いはほぼ全て『いだてんネタ』です。
宮藤:嬉しい。例えばどういうところで思い出し笑いを?

南部:まず、子供時代の金栗四三君。2話しかメインで出て来ないのに、いまだに思い出すだけで「うわぁ~」って。あと、嘉納治五郎先生の抱っこ一連。これは美濃部孝蔵の「父が嘘をついた」というナレーションも含み。それから安仁子の「フォーティースリー」と「ミスター・クラブ」ですね。それから水しぶき走法…
タツオ:これ、見てない人は「何の話してるんだ!」になっちゃうよ(笑)
南部:あ!ごめんなさい!
宮藤:俺、水しぶき走法だけ何の話か思い出すのに時間掛かっちゃた(笑)でも、今言ったのは全部本当にあったことですからね。子供時代の四三君は素人の子ですからね。
阿曽山:あの人はストックホルムまで行ったってことですよね?

宮藤:そうです。でも俺、あの子がストックホルム行ったこと知らなくて。
タツオ:おおおおおお!
南部:本当ですか…!
阿曽山:南部さん、目がトロ~んとしちゃってるよ!

幸坂:タツオさんは『いだてん』をどう見ていますか?
タツオ:宮藤さんに言ってもしょうがないですけど…、やっぱり森山未來さんの落語がすごい!
宮藤:いやー、すごかったね。
タツオ:このドラマはテレビを見ているんじゃなくて、志ん生の落語を聞いているという体にしてくれてるのが良くて。やっぱり口伝ですよね。史実に基づいてるところもあれば、多少脚色してるところもあって。

タツオ:本来、人がお客さんにサービス精神で聞かせるものをテレビに持ち込んでくれてる。しかも、たけしさんが志ん生役。別のドラマでは談志役やってるんだよ(笑)
一同:(笑)
タツオ:で、若き日の志ん生役を森山未來さんがやっていると。人力車を引きながら落語を覚えている。

タツオ:初高座「富久」っていう馬鹿な話はないんですよ!
宮藤:ないですね。本当はないんです。
タツオ:普通は前座噺から始まるんです。でも、「富久」から始まることが象徴的で。例えば、失った男が寂しい背中でトボトボ帰るところが「富久」と完全に一致するんですよ!
幸坂:南部さん、ノートに何かメモして・・・
南部:今話してること、すごく貴重なんです!このノートは、いだてんの何話で何がでてきたかを、いつも書き溜めてるんです!
タツオ:失ったり得たりすることで感情が揺さぶられるところが「富久」という話にあって。それが震災や師匠を失ったりすることで被る部分もあるし。今後も効いてくるのかな?って。

宮藤 :「富久」という話は「東京を走る」ことがテーマなんですね。それで志ん生以外の人が浅草から日本橋の間でやっていた話を、志ん生だけが芝まで延ばしたんですね。浅草から芝までの話に。それがオリンピックに掛かっている話になってるんですね。
タツオ:うぉぉぉー、なるほど!

宮藤:清さんという実際にいた人が出てくるんですが、あの時代って人力車夫がマラソン選手として走ることに関して、果たして彼らはプロなのかアマなのか論争があったらしいんですね。「走ってお金取ってるんだからプロだろ」、「いやいや、人を送り届けることが仕事で、速く走るのは関係ないからアマだ!」みたいな。だから人力車の話も関わってくるんですよね。
タツオ:いだてんは、描かれていることが、現在と地続き。歴史って、ファンタジーなものとしてとらえている人も多いと思うんですけど、地続き。それが今回の大河のいいところ!
幸坂:阿曽山さん、第一部を振り返ってみてどうですか?
阿曽山:宮藤さんに言ってもしょうがないんですが、スポーツの解釈が変わりました。第一部の最終回の24話。震災の後、とりあえずの衣食住がそろった後に、人々が求めたのは、運動会と落語だったんです。
宮藤:そうです。はい。
阿曽山:で、僕、スポーツの語源を調べたんですよ。

宮藤:スポーツの語源調べたんですか?僕、そこまでやってなかったなぁ(笑)
阿曽山:元々「ものを動かす、移動させる」という意味だったのが、だんだん拡大解釈されて「寂しい気持ちを移動させる、楽しませる娯楽」という意味になっていったんです。

宮藤:それ早く教えてほしかった~、少なくとも24話のときに知ってたら絶対使ってましたよ(笑)
阿曽山:それが!1話から振り返ると、皆楽しんでスポーツをやってるんですよ!例えば、肋木にぶら下がっている可児さんを見て嘉納治五郎が「それ楽しいのか?」と言うんですよ。あと、天狗倶楽部だって純粋にスポーツを楽しむ元気の権化ですから。三島弥彦だって楽しんでたのに、オリンピックの出場が決まってから急にスポーツを楽しめなくなった。そして400メートル走で負けたあと、決勝行けるのに辞退したじゃないですか。

阿曽山:そこでハァハァ言って倒れてる弥彦に対して、金栗四三は「楽しかったですか?」と聞くんですよ。
南部:は~、そうだった・・・
阿曽山:え?ここで「楽しい」とか聞くの!?って思って。そのあとに金栗四三はマラソンで行方不明になるじゃないですか。先にホテルに戻ってきて。何で先に帰ってるんだ!って皆から詰められたときに、「走ってたらどんどん、どんどん、どんどん楽しくなってきて!」と言ってるんです。
南部:あー、言ってたー!
阿曽山:皆、楽しくてやってるんです。だから、「スポーツを楽しむ」じゃなくて、「スポーツそのものが娯楽、楽しいもの」という解釈で脚本が書かれていると思ったんです。
宮藤:えっと・・・そう・・です、そうです(笑)嘉納さんが初めてオリンピックに触れるときに、フランスの大使が図面を見せて「これでスポーツを皆で見るんだ」と言ったときに「見る?」と思ったみたいですね。
そしてこの後、宮藤さんに答え合わせしたいことの質問タイムでは、3人大興奮の回答や裏話がたくさん!

終わったあと、控室に戻っても、3人の「いだてん」トークは続く…

◆7月1日放送分より 番組名:「ACTION」
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