TBSラジオ「ACTION」。9月26日(木)のゲストコーナーは日本美術史学者で「地獄めぐり」の著者・加須屋誠さんにお越しいただき、地獄の世界について伺いました。
羽田:それでは地獄を案内してもらいましょう…。まず地獄とはどんな場所なんでしょうか…。
加須屋:今から1000年ほど前に平安時代の中期、恵心僧都源信というお坊さんが往生要集という本の中で、地獄というのは地上から比較的浅いところにある80の構造を持った建物なんだということを言っています。たとえて言うならば地下8階建てのビルみたいなものですね。
羽田:なるほど。
加須屋:比較的罪の軽い人は地下1階、次に罪の軽い人が2階、そして徐々に罪の重い人がいて一番下が8階で阿鼻地獄といいます。いわゆる阿鼻叫喚の阿鼻です。
幸坂:一番下に行くほど罪が重いということですね。
羽田:どんな罪を犯した人が地獄に行くんですか?
加須屋:人殺し、泥棒はもちろん。不倫、お酒の飲みすぎ、嘘などさまざまなことがお経の中に具体的に説かれています。
羽田:お酒飲んだりとか嘘ぐらい誰でもあるんじゃないかと思うんですけど、全員地獄に行っちゃうんですか?
加須屋:そうですね!
幸坂:ええ?!そうなんですか?!
加須屋:いったんその覚悟を決めていただくと(笑)
羽田:そうじゃないって言ってもらえると思ったら!地下1階くらいは行くんですね…。他に地獄にはどんな特徴があるんでしょうか。
加須屋:一般的によく知られているのが釜茹での刑というものがありますね。あれは起源が古くて、インドの仏教が発祥したときからお経の中に説かれているものなんですが、日本でもしばしば地獄絵に描かれています。
加須屋:そこではポタージュスープを作るかのように人間がみんなどろっどろに溶かされる。つまり単に熱いとか苦しいだけじゃなくて、自己・個性みたいなものも溶解してアイデンティティーが消えてしまうっていう苦痛も含まれているんじゃないかと思います。
羽田:それは知らなかったなぁ。最下層の阿鼻地獄ではどんな刑があるんですか?
加須屋:まずここは地下8階ですから遠いです。だいたい死んでからそこに着くまでに2000年かかるとお経に説かれています。
羽田:2000年?!
加須屋:死んでから2000年間地下8階までにひゅーっと落ちていく感じです。いわゆるフリーフォールのアトラクションが好きな方は良いかもしれませんが、そうでない人にとっては地も足もつかないふわふわな感じの中を落ちていくのは、社会的な地位であるとか家族とかそういうものから切り離されて宙ぶらりんの2000年間という時間があるわけですね。
恐ろしい地獄の世界。しかしそれは人間の考えた心理が表れている…?
◆9月26日放送分より 番組名:「ACTION」
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