「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ、月~金、6:30-8:30)7時35分からは素朴な疑問、気になる現場にせまる「現場にアタック」。毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画をお届けしていますが、みなさんは音階を奏でる電車、はご存じでしょうか?京浜急行のインバーターの音のことで、音階を奏でることからドレミファインバーターと呼ばれています。
発車するときに「♪ファソラシドレミファ」と音を奏でるので「歌う電車」も言われていました。実はこの歌う電車がこの夏で引退することとなり、京急は、先日、「ありがとうドレミファインバーター」という特別貸切イベント列車を運行しました。そして、その様子が7月20日の東京新聞朝刊のTOKYO発に掲載されていました。ちなみに、QRコードも紙面に付いていて、ドレミファインバーターの音も聞くことができるんです!そこで、8月2日(月)は取材をした東京新聞社会部記者で、TOKYO発のデスクでもある、宮崎美紀子さんにイベントの様子を聞きました。

とても静かで不思議なイベントでした

音を楽しむイベント、音を聞くということに主眼を置いた、とても電車としては珍しいイベントです。約200人です。でも、しゃべらないから、みんな音を聞きに来てるので、京急さんも今回は音を楽しむイベントだから、余計なアナウンスはしません、と。少しインバーターの説明はあったんですけど、それもゴトンゴトンのときにアナウンスはあったんですけれども、あとはもう電車の音を聞く、っていうイベントです。とても静かで不思議なイベントでした。ドレミファインバーター、車両の下に付いてるんですよ、床下に。真上だとすごく聞きやすいということで、この下にインバーターが付いています、みたいなのを、みんな教えてもらっていて、インバーターの真上くらいにみんなが集まって来て、そこにICレコーダーとかスマートフォンを録音にして、じぃーーーっと息を詰めて、みんなが無言で床をずっと見つめているんですよ。床を見つめたってなにも・・・別に普通の床なんですけれども。そんな感じです。
いや、もうすごい集中してましたよ。(東京新聞・宮崎美紀子記者)コロナ禍ということもありますが、なにしろ主役は音!だから、静かなイベントだったんですね。ドレミファインバーターの歌声をしっかり聞きたい!録音しよう!と、お客さんたちは静かに参加していたそうです。そして、京急も車内アナウンスを最小限、それもインバーターの音と重ならないように配慮!

歌いまくりの出血大サービス!!/h2>車内を想像してみると、なんだか不思議な雰囲気っぽいですが、ドレミファインバーターへの愛を感じますよね。そんな中、京急品川駅を出て京急久里浜駅へ向かう特別列車はその愛に応えてくれたそうです。貸切電車ですから(途中駅に)止まらないですよね。止まらないとインバーターは歌わないので、ほんとは京急の品川を出て金沢八景で一回停まって、二回目の鑑賞チャンスだったんですけれども、電車が詰まってたりして、ものすごく予想外に何回も何回も停まったんですよ。なので、久里浜に着くまでの間にも出血大サービスで、もう歌いまくりの、え?また停まってくれるの?また停まってくれるの?っていう。で、久里浜に着いたら、今度は、工場の中なので目の前にインバーターが見えるんですね。で、フェンスに群がって電車が何回も行ったり来たりしてくれるので、その度に床を通さずに直に聞こえてくるインバーターの音を録音したり楽しむ。目の前にインバーターを収めた、茶色く煤けたボックスがあって、走るたびに車輪音と一緒に全部堪能できるっていう。もうでも、これが日本最後の歌う電車なので、二度とこういうイベントは無いですね。(東京新聞・宮崎美紀子記者)スケジュールとしては、品川を出て金沢八景まで停車の予定はなかったのに、愛が通じたのか、何度も停車の機会が!歌いまくりの大サービスに、車内は大喜びだったそうですよ。
宮崎さんによれば、今回のイベントはいわゆる鉄道ファンというよりも、沿線の家族連れなどが多く、昔から慣れ親しんだドレミファインバーターの音を楽しみ来ている方が目立っていて、和やかな微笑ましい雰囲気だった、と。電車の音が、我が子の子守歌代わりだったという品川在住のご家族は「無くなっちゃうんですね」としんみり。千葉から来ていた高校生と小学生の兄弟は、「音を満喫できた!」「子供のころ品川にドレミファを録音しに来てた聞けなくなるのは寂しい」と話していたそうです。

今走っている電車も個性のある音です!

まさに、京急=ドレミファインバーター、で名物電車だったわけですが、これを機に終わってしまうのか?他のインバーターを歌わせることはできないのか?ドレミファインバーターを一番面倒見た、と話す、京浜急行電鉄株式会社・車両部の秋本泰宏さんにお話を伺いました。1998年から2021年、23年間。結構長く走ったかな、と思います。導入経緯としましては、その当時なんですけれども、性能やコストの面から海外製品の方が優れているということで導入されました。その際、メーカーの人が音階にしたら面白いんじゃないか、という提案を受けまして、京急として採用した、と。遊び心で音階にしていただいた、と。やはり注目度はすごかったな~と。みなさまの記憶には残って頂くと思っているんですけれども、何らかの形で音だけは残していけたらな、と考えております。そうですね、今のインバーターが音階になるかはちょっと分からないというところですね。
鳴らしたいとは考えるんですけれども、なかなかそういう技術というかノウハウができるかどうか、というのが謎なので今後研究していきます!研究は言い過ぎだな(笑)今走っている電車も色々な個性の音も出ているので、そちらも楽しんでいただけたらな、と。色々乗っていただいて、色々音を楽しんでいただけたらな、と思います。(京浜急行電鉄株式会社・秋本泰宏さん)秋本さん達にも音を奏でる仕組みは分からないので、再現は難しそう。でも「研究は言い過ぎだな」と言う秋本さんに、上司の方が「いや、前向きでいいよ」と。京急のみなさんもやはりドレミファインバーターには思い入れが深いようでした。歌う電車は7月いっぱいで走り終えましたが、秋本さんは、他の車両のインバーター音も聞いてみてほしい!とおっしゃいます。かの有名な宇宙が舞台の映画の悪役?父?を思わせる「コォー」と鳴る車両もあるとか?京急にお乗りの際はご注目(ご注耳?)を!取材・リポート:近堂かおり
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