TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)
今が旬のリンゴ。スーパーでもたくさん並んでいるのを見かけますが、りんごの生産量日本一の青森県弘前市で10月から市の職員によるりんご農家での副業が解禁されました。
りんご農家の高齢化・人手不足の問題を解決へ
自治体職員がりんご農家で副業。ちょっと変わった動きですが、どういうことのなのか。弘前市りんご課の課長、澁谷明信さんのお話です。
「ロこれまでも市の職員の副業・兼業は一部の分野では認められていたんですね。例えば部活動の指導員であったり地域の伝統文化のねぷた絵師とか、地域貢献的な形での分野では認められていたんですけども、今回初めて農業分野でりんごの生産に限って兼業を認めることとしたものです。弘前市は日本一のりんご産地で今でも多くの方にりんご生産に携わって頂いてるんですけども、高齢化と担い手不足で、今後10年間で約8割の農家さんが労働力不足を懸念しているという状況がありまして、市の職員がまず兼業ということで、少しでも労働力不足の一助になればということで始めたものです。」
(弘前市りんご課課長・澁谷明信さん)
地方公務員法では公務員の副業は原則禁止となっていますが、弘前市では、りんご農家の高齢化、人手不足の問題を解決するために、市職員が自らアルバイトしてりんご農家を手助けできるよう制度を整えました。 直接利害関係がある農林部の職員などを除いて副業が可能です。勤務時間は1週間8時間以下、1ヶ月30時間以下などと決められています。現時点で61件の求人に対し、28人の申し込みとまずますです。
りんご農家で副業を始めた市職員の声は…
今回は、実際にりんご農家で副業を始めた職員の方にもお話を伺いました。弘前市観光部の齋藤翔太さん(32歳)。普段は市内の文化施設の管理などを業務としていますが、今月から、平日は市役所で仕事をし、毎週日曜日は朝8時から夕方5時までりんご農家で働いています。
「葉取りといって、りんごの周りにあるの葉っぱを取る仕事とか、つる回しといって、りんごが赤くなってない部分を太陽に当てるために、向きを変えて回転させてあげるという仕事を今までしました。普段事務仕事ばかりなので、最初一日目やったときはすごい疲れたんですけども、心地の良い疲れというか、すごい健康的な気分で仕事してます。
(弘前市観光部・齋藤翔太さん)
齋藤さんはりんごの収穫が落ち着く11月下旬まで働く予定です。農家側からは「アルバイトの募集をかけてもなかなか人が来ない状況でとても有難い」という声があったそうです。
他の自治体における公務員の副業、現状は?
弘前市以外には、和歌山県有田市が去年から市の職員に対しみかん農家での副業を解禁しています。ただ、このような取り組みはまだまだ少数派で、副業を認めていない自治体のほうが圧倒的に多いです。例えば、北海道の十勝地方では、今年7月、無断で農作業のアルバイトをした消防士が戒告処分となる事例もありました。とかち広域消防事務組合は「公務員は職務に専念する義務があり、違う職業で報酬を得ることはたとえ事前の申請があったとしても認められない」としています。
副業による農業支援を民間にも波及へ
こうした中で職員の副業を解禁した弘前市ですが、単に市職員が手助けするだけではなく、この動きを民間にも波及させたいと考えています。りんご農家からの求人情報を市の商工会議所に提供するほか、このような支援も行っているということです。
「市の方で昨年度から、コロナの影響を受けて飲食店や宿泊業でお仕事を休まなければいけなくなった方などを農業現場で受け入れてもらう際に、人件費の一部を支援するという制度を始めたんですね。その際に企業の中でも、副業を許可して農家で働いてもらってる方もいらっしゃいましたので、そういう柔軟な対応を、コロナが収束後も継続してもらえれば思っています。私たち1日単位でも行くことによって農家さん助かるという声は頂いてているくらい、やはり人手不足というのが深刻な問題で、市役所だけではなくて、民間企業とか、様々な業種に広がっていけばなというふうに思ってます。」
(弘前市りんご課課長・澁谷明信さん)
弘前市はこのように金銭面でも支援をし、民間でも農家の副業が広がってほしいと考えています。