新型コロナウイルスの感染拡大の影響が世界中に広がっています。こうした中で、気になるのが新型コロナウイルスの治療薬とワクチン。

どのようなものが出てきているのか。

そこで3月16日(月)松井宏夫の「日本全国8時です」(TBSラジオ、月曜あさ8時~)で、新型コロナウイルスの治療薬とワクチンの現状についてお伝えしました。

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新型コロナウイルスの治療薬とは?

WHO=世界保健機関は先週3月11日「新型コロナウイルスはパンデミックと言える」と表明。世界各国に全力で感染拡大を抑制するように求めました。そこで重要なのが、治療薬や予防ワクチンの開発です。現状は、これまでに使われている既存の薬の応用が進んでいます。

まずは、治療薬についてです。厚生労働省は一部の医療機関で3つの薬の使用・研究を開始したことを明らかにしました。それは、「アビガン」「カレトラ」「レムデシビル」の3つの薬です。現時点では、最も有望な薬と期待されています。

アビガンとは?

まず「アビガン」ですが、この薬は抗インフルエンザ薬です。アビガンは医薬品メーカーの「富士フイルム富山化学」という会社が開発し、2014年に製造・販売の承認を得ました。

ただ、国が新型インフルエンザの流行に備えて備蓄する特殊な治療薬で一般に流通はしていない。現時点で国は200万人分の備蓄を持っていて「タミフル」など既存のインフルエンザ治療薬が効かないような新型インフルエンザウイルスが流行した時に、初めて国がアビガンの投与開始を検討するということです。

なぜこのインフルエンザ治療薬が、新型コロナウイルスに対して有効だと考えられているのか。アビガンは、ウイルスを増殖させる酵素を阻害する仕組みがあり、これが新型コロナウイルスにも適用できると期待されています。実際、すでに患者さんに使われ、藤田医科大学が2月22日から臨床研究を進めています。

カレトラとは?

「カレトラ」は抗HIV薬で2000年にエイズの治療薬として承認されました。カレトラはウイルスの増殖を抑える薬で、かつては感染症のSARSやMERSといった、感染症に有効ではないか、といわれていました。そうしたこともあり、今回の感染症が始まってすぐに中国で臨床試験がスタートしました。日本でも患者さんに十分な説明と同意が得られた場合に使われています。

カレトラの使用注意点は、HIVの患者さんかそうでないかを調べてから使うことが許可される。これは、HIVに対して、薬が効かなくなったり、効きにくくなったりするリスクがあるから。ただ、アビガンと同様に、カレトラも既に承認薬なので効果が確認されれば患者さんへの投与まで、さほど時間はかからないだろうとみられています。

レムデシビルとは?

3つ目の「レムデシビル」はエボラ出血熱の治療薬です。このレムデシビルにウイルス増殖の抑制効果のあることが武漢ウイルス研究所の報告でわかった。

アメリカでは、最初にコロナウイルスに感染した人にこれを投与しました。すると、その患者さんは回復したということです。この薬の製薬会社のギリアドは、4月には結果を出すと発表しています。

ぜんそくの薬も有効?

「アビガン」「カレトラ」「レムデシビル」の3つの薬以外にもぜんそく治療の薬が役立った、という報告があります。それは、ぜんそく吸入用のステロイド薬「シクレソニド」です。この「シクレソニド」が新型コロナウイルスによる肺炎患者さんの症状改善に役立った、と日本感染症学会が神奈川県の病院の症例を報告しました。

肺炎になった65歳以上の患者さん3人に、シクレソニドが使われました。いずれも酸素吸入を行っていましたが、2日程度で改善し、73歳の女性は退院したそうです。

国立感染症研究所は、肺の炎症を抑える効果が期待できると。ただ、3つの症例にとどまっているので、これからさらにみていく必要があります。

治療薬の新薬開発?

武田薬品工業は先週、新型コロナウイルス感染症の治療薬の開発を始めたと発表し、順調に進めば最速で9ヶ月後の市場投入を目指すとしています。新型コロナウイルに感染して回復した人の血液から抗体を採取して新薬をつくるということ。早期に治験を始める計画で、9カ月から18カ月=1年半程度で治験を終える計画という。既存の治療薬の応用ではなく、新規開発を表明したのは大手製薬の中で武田薬品が初めてとなる。

新型コロナウイルスのワクチンは?

バイオベンチャーのアンジェスは今月5日、大阪大学と共同で、DNAワクチンの製造に着手すると発表しました。具体的には体内で抗体を作り出して、ウイルスを排除するもので大量生産ができるという。アンジェスは「6カ月以内のできる限り早い時期の臨床試験開始を目指す」としています。

ほかにも、田辺三菱製薬が12日、ワクチン開発に着手すると発表しました。カナダで8月までにヒトでの臨床試験を始めるということです。

このほか、アメリカでは、マサチューセッツ州の「モデルナ」というバイオテクノロジー企業が、ワクチンの初期開発を終え、アメリカの国立アレルギー・感染症研究所に臨床試験をするためにワクチンを提出したと発表。モデルナは、中国が新型コロナウイルスのゲノム解析をして、その結果が提供されそこからわずか42日でワクチンを作ったという、まさにスピード開発となっています。

それからアメリカでは軍も開発を行っていると発表しました。

アメリカ軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は今月2日、メリーランド州の軍施設で、ワクチンの開発が進められていることを明らかにした。これから数ヶ月かけて結果を待つという。

アメリカ保健当局はこれまで、新型ウイルスに対するワクチンの開発は最大1年半かかるとしていましたが、武田薬品は早くて9ヶ月、アメリカの製薬会社も数ヶ月と少しずつ早くはなっていますが、それでもある程度の時間はかかってしまいます。その治療薬やワクチンができるまでは、まずは自己防衛が重要です。手洗い、うがい、アルコール消毒、そして、“免疫力の向上”を行って予防してください。

◆3月16日放送分より 番組名:「森本毅郎 スタンバイ!」内「日本全国8時です」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200316080000

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