TBSラジオ「ACTION」月~金曜日の15時30分から生放送。水曜パーソナリティは、Creepy NutsのDJ松永さん。
5月13日(水)のゲストは麻布大学獣医学部教授の菊水健史さん。専門は動物行動学、特に犬の研究の第一人者である菊水さんから、犬の知られざる歴史や生態について、DJ松永さんがお話を伺いました。
幸坂:犬の祖先は狼というのは実は嘘なんですか?
菊水:そうですね。嘘というとちょっと大袈裟かもしれませんが。例えば狼ってまだ地球上に存在してますよね。それを飼い慣らすと犬になるかというと、それはないんですね。それで遺伝子研究やDNAの配列研究が近年急速に進んで分かったのですが、おそらく犬と狼の共通の祖先がいて、その祖先種から犬と狼がそれぞれ出来たんです。離れていったイメージですね。
松永:そうなんですね!その大本の祖先はなんですか?
菊水:狼とすごいそっくりで、形やDNA上もそんなに見分けがつかないと思います。
松永:それは名前は付いてないんですか?
菊水:そうですね。
松永:へぇ!じゃあ、犬の研究の歴史ってまだ浅かったりするんですか?
菊水:そうですね。まず犬がいつ地球上に誕生したかも分かっていません。
松永:そうなんだ!
菊水:人と一緒に生活したのも、3~5万年前じゃないかと言われていますが、これも確かではありません。
松永:犬ってすごい身近な存在なのに、そんなに研究が発展しないのも不思議ですね。
菊水:犬と人が出会った頃ってそんなに文明が発達してないので、記録として残ってないんですよね。

松永:研究はいつぐらいからスタートしたんですか?
菊水:遺伝子研究や行動に関する研究というのは2000年ぐらいから盛んになりました。
松永:めちゃくちゃ最近ですね。
幸坂:具体的にはどういった実験をするんですか?
菊水:遺伝子に関しては、地球上に存在する様々な犬種の採血やDNAをもらって、細かく解析すると、どの犬種とどの犬種がいつぐらいから分かれてきたということがわかってきました。犬種の成り立ちというのは大体分かってきましたね。
松永:なんで犬種は分かれてくるんですか?
菊水:人が目的を持って新しい犬種を作るからですね。猟犬用の犬種、番犬向きの犬種、家で可愛く飼う用の犬種だとかですね。そうやって選び始めたので、遺伝的に離れていきます。
松永:それに向いたような犬が作られていくんですね。
松永:2000年代になって衝撃的な犬にまつわる実験があったんですか?
菊水:これは2002年にサイエンス誌という非常に有名な雑誌に報告された研究で、”指差し実験”と呼ばれています。
松永:それはどういったものですか?

菊水:人の前に2つのカップを置きます。カップの中の両方に餌が入っています。人が指を差して「こっち」と指示を与えます。犬に自由に選ばせると、その人が指差したほうを選ぶんです。犬を飼われている人は、指を差したものを犬が持って来たり、取りに行ったりするということは普通に知っていることなんですが、なんでこの研究が大きい発見と言われているのかというと、それまでの研究だと、「これが地球上でできるのは人間だけ」と信じられていたからなんです。
幸坂:だから衝撃を与えた実験なんですね。
松永:これは犬以外でも実験したんですか?
菊水:できないことはなかったんですが、犬がダントツで成績が良かったんです。例えば、チンパンジーはこれはできないんです。
松永:えっ?正直、猿とかできそうじゃないですか?
菊水:できなくはないんですが、犬のほうが成績は良いですね。
幸坂:犬に近い狼はどうですか?
菊水:狼もできないんですね。
幸坂:この実験によって犬はコミュニケーションが取れるということが分かったんですかね?
菊水:そうですね。人と同じようなコミュニケーションを使うことができるということが分かりました。
松永:猫も昔から人間と一緒にいるのに、これはできないですもんね。
菊水:そうですね。猫が人と一緒に住み始めたのが大体8000年前と言われているんですが、犬は3~5万年前と圧倒的に古いんですよね。その当時は人は狩猟採集していて、移動しながら狩りをしているんです。そうなると、人の動きとか指差しを読める犬のほうが人と共生するのにふさわしかったと思います。
引き続き犬の知られざる生態についてお伺いいたしました。
◆5月13日放送分より 番組名:「ACTION」
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