TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」
山形県南陽市の沖郷地区で、二年前から新しく始めた公共交通の試みがあるのですが、その試みが、このたび国交省から表彰をされました。『おきタク』という公共交通のサービスなのですが、どんなサービスなのでしょうか?そこで・・・。
2021年12月20日(月)のテーマはこちら。
『国交省から表彰された、山形県南陽市のおきタクとは?』
500円でタクシーが利用できる!
「おきタク」とはそのようなサービスなのか、表彰式から戻ったばかりの、沖郷公民館長、佐藤勝雄さんに聞きました。
●「沖郷地区の60歳以上の方向けの移動サービスとなっております。利用者の自宅と市内の約60箇所のおきタク乗り場を、片道500円でタクシー移動ができる、っていう仕組みになってます。で、普通のタクシーが走っていることに変わりはありませんけれども、メータ料金との差額を運行協議会が負担してあげる、ということで、高齢者の日常的な移動手段の確保を支えております。やはりdoortodoorで移動ができるのは楽だし、タクシーのドライバーさんも親切で優しい、と利用者の満足度は高いです。利用者アンケートの結果では、約4割の方が、外出機会が増えた、と答えてくださっています。あ、ありがとうございます。地域全体での取り組みが評価されて、大変喜んでおります。」
距離に関わらず500円でタクシーが利用できるサービス。この沖郷地区は、平成9年(1997年)に、市民バスの運行が廃止されて以来、「おきタク」が誕生するまで22年もの間、公共交通の空白地帯だったため、みなさん、自分で運転したり、家族に送迎を頼んだり、タクシーを使ったりして凌いでいました。しかし、タクシー代が、病院で払ったお金よりも高くなってしまう、という声もありました。これは、大変ですよね。その状況をなんとかしようと、住民が立ち上がり誕生したのが、この「おきタク」。
片道500円で、自宅と医療機関・金融機関・買い物施設などまで利用できます。
市の補助金と、全世帯、年200円の負担金と
500円を超えた分は協議会が負担、ということですが、どのような仕組みで運行しているのか、ともに協議会として関わっている、南陽市みらい戦略課の落合祐弥さんのお話。
●「おきタクにかかる経費は、利用した本人が負担する分と、地域住民のみなさんから集めている負担金、それに市からの補助金を合わせて賄っています。沖郷地区にお住まいになられている一世帯から年間で200円ずつ負担金として集めております。あ~200円の負担については、おきタクを始めるときにこういう仕組みをみんなで支えるものとして、これから始めようと思ってます、と。それで、そのための負担を、薄く広くみんなで負担するというやり方を、協議会として提案をして、それで合意を得ておりまして、街の安心というか、自分もいつかは使うかもしれない、という思いもあるのかな、とは思います。作り上げる過程で、地区としてこういうことをやっていく、という、一つの方向に合意形成もできた、というのが、重要な部分かな、と思っております。」
市からの補助金と、沖郷地区の全住民、一世帯あたり年200円の負担金を集めている、そのお金で、メーターとの差額分を支払う、という仕組みになっている。
500円でタクシーが利用できるようになって、買い物も週に一度のまとめ買いから、週に2、3回となったり、家族の送迎から「おきタク」の利用へ変える人もいて、協力してくれているタクシー会社も、少しずつお客さんが増えている、と言います。また、免許を返納しようと考える人も、導入前は4人、導入後は38人に増えた。移動手段があれば、安心して免許を返納できますよね。
利用者も、公共交通の空白地帯を解消したい市も、タクシー会社も、嬉しい!という、三方良し!!
今の沖郷地区にピッタリのやり方
それにしても、どうして、そんなにうまくいったのか。南陽市の落合さんはこう話します。
●「様々な運行のやり方があるわけなんですけれども、「おきタク」って固定費がかからないので、必要な方が必要な時に使う、っていうところに焦点を絞って支援をしている、というのもあって、非常に効率的な財政支出になっております。
固定費がかからないと言っていましたが、乗る人がいてもいなくても走るバスの場合、3路線を維持するのに、年2300万円かかりますが、おきタクは走った分だけなので年190万円。そのうち、市の負担は半分くらいで、年200円の地区住民の負担が合計で50万。それ以外は、1回500円の利用料で賄えている。
沖郷地区は、市街地に近い場所とそうでない場所があり、公共交通機関が、欲しい人と
必要ないと言う人とで、長らく町の声が二分されていたそうですが、今回この「おきタク」については、住民全体で考えて、支え合っていくと、合意が取れたことで、年200円の負担を住民も了承し、定着し軌道に乗った。
現在、全国から問い合わせがきていますが、人口や街の規模など、地域で事情は異なります。(沖郷地区はおよそ2500世帯人口は7500人。そのうち60歳以上が2500人くらい。)
落合さんは「地域住民のみなさんが主体となって、自分たちにピッタリのやり方を、自分たちで考えて作り上げてきた、というのが大きいと思います」とおっしゃっていましたが、それぞれの地区の特徴や人口にあったやり方の参考になれば、ということでした。
現在は、行き先が多少限定的であったり、前日予約が必要であったり、平日だけの運行、など制約があるので、今後は、こうしたところも見直しながら、持続可能な仕組みを維持していきたい、と、公民館長の佐藤さんも話していましたが、まだまだ、進化しそうですね。