TBSラジオ「コシノジュンコ MASACA」毎週日曜日夕方17時から放送中!

2020年8月2日(日)放送
中村獅童さん(part 2)
1972年生まれ。元歌舞伎役者の初代中村獅童を父にもち、1981年に二代目中村獅童として初舞台。

古典から新作まで幅広い歌舞伎に挑戦するなど新しい視点で伝統芸能を発信し続け、TVや映画など多岐にわたり活躍しています。
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出水:獅童さんといえば、2002年の映画『ピンポン』で準主役のドラゴンを演じて、日本アカデミー賞、ゴールデンアロー賞、ブルーリボン賞などの新人賞五冠を達成しました! この時29歳。あらためて『ピンポン』の舞台裏を教えていただけますか?

獅童:舞台裏もなにも・・・ほぼ30ですよ! それで高校生の役ですからね! 30間近でやっとつかんだチャンスというか。

JK:でもよくオーディション受かったわね。

獅童:でもまぁ、高校生なんですけど謎めいているというか・・・本当にこいつ高校生か?みたいな貫禄のある、卓球のチャンピオンの役なので、いろいろ受けたオーディションのなかでたまたま受かったのがこの『ピンポン』だった。

JK:これだけの賞を獲るってことは、なにしろ箔が付くわね。

獅童:全くこれは想像してなかったことですね。ただ、気持ちとしては強気。公開前になると集中取材といって、1日に何本もインタビューをさせていただくんですが、公開前でまだ無名だったこの僕が、インタビューの最後で「必ず目をつけといたほうがいいですよ、僕これからものすごく有名になりますからね」って、生意気なことを言って(笑)

JK:えっ、自分で言ったの?! ハハハ!

出水:すごーい! さすがです!!

獅童:本当は、自分の中では崖っぷちなんですよ。もう30だから、これで現代劇のチャンスが来なかったらもうジジイだし(笑)歌舞伎で役が付かない、現代劇でやるにしては無名のジジイ。もう崖っぷちなんだけど、インタビューアーの方には「今から僕に目を付けとかないと損するよ!」みたいなこと言ってました。

JK:やっぱり自分で言うってことは、自分で責任持ちますもんね。

獅童:当時インタビューした人とこないだたまたま会って、「獅童さんこんなこと言ってたんですよ」ってよく覚えててくださって。「そうでしたっけ?」ってトボけましたけど(^^)本当に何が何でも手に入れたいって思ったんでしょうね。

JK:お母さまは?

獅童:やっぱり喜んでましたね。自分で手に入れたことなんで、本当に良かったって。父も母も。勘三郎にいさんもすごく喜んでくださって。だから、僕は分かりやすく言うと逆輸入。外で知名度というか、少し皆さんに知っていただけて、歌舞伎でも少し役を頂けるようになったんです。

出水:映画といえば、中村獅童さんも出演している10月16日公開予定の映画『みをつくし料理帖』。これはどんなお話で、どんな役どころなんですか?

獅童:これは小説でも有名ですし、時代劇なんですけど、僕は又次という役をやらせていただきます。監督が角川春樹さん。角川春樹さんとは『男たちの大和/YAMATO』のプロデューサーも角川さんだったんですが、今度は自ら監督なさって、「これが最後の監督になるから、獅童ぜひやってくれ」って言っていただきました。

JK:歌舞伎俳優もやりながら、映画もオファーがくればやってるのね?

獅童:そうですね、ここ3~4年ぐらいはほとんど歌舞伎に絞ってたんですけど、歌舞伎と歌舞伎の間に映画や他の演劇の仕事をやらせていただいています。

JK:獅童さんにとってマサカー!ってなんですかね?

獅童:僕の場合はもう、人生まさかの連続です。まさか『ピンポン』で一瞬のうちに美奈さんに知っていただけるのも自分にとってはマサカだったし・・・いま四人家族ですけど、それも想像していなかったですし。いいことも悪いことも含めてまさかの連続だし、これからもそうなんじゃないかなと思います。いかなるマサカが起きても、芯はぶれない自分でいないといけないなとは思っていますけれど。

JK:でもお子さんができて、子どもたちに歌舞伎を見てもらいたいっていう意識はありますよね? お子さんがいるから思うのか、それとも前から?

獅童:それに関しては前からですね。『あらしのよるに』っていう絵本が原作の新作歌舞伎を作らせていただいたんですけど、NHKのTV絵本のお仕事をさせていただいたときにこの作品に出会って、40超えたときに、ただ歌舞伎以外のことをやっただけでなく、そこで出会った作品や人々を歌舞伎に戻して、獅童ならではの歌舞伎を作っていくのが僕の生き方ではないかなと思っています。

JK:歌舞伎クリエイションね! いま新しいことに挑戦し続けないと、伝統的なことは続かないですもんね。

獅童:これはどんなこともそうだと思います。洋服でも時計でも車でもそうですが、伝統と革新なんですよね。子供向けというのは、彼らはやがて大人になるわけですから、大人になった時に歌舞伎座に戻ってきてくれればうれしいですし、今だけじゃなくて10年後、20年後のことをちゃんと見据えないと、歌舞伎も本当の意味で終わってしまうのではないかなという危機感は持っています。

JK:子どもたちに、学校の課外授業で歌舞伎を見せるとかね。

そういうチャンスを作ったらいいですよね!

獅童:『あらしのよるに』も最初歌舞伎のお芝居にしたとき、ヒットするかどうかわからなかったんですけど、京都で初演だったんですが、僕が頼んで学生さんの団体を入れてもらったんです。そしたら女子高生の間で火がついて、最後総立ちでわぁっと盛り上がってくれたんですよ。

JK:その子たち絶対忘れないですよ!

獅童:若い子たちだからTwitterで拡散して。だから京都は切符がなくなったんです。

JK:わぁ~! 私もね、公開リハーサルで学生をいれたの。リハーサルってもったいないのよ、完璧にやるから。学生入れるとモデルも一生懸命やるわけ。歌舞伎もリハーサルってやらないんですか? その時お客さん入れるのはだめなんですか?

獅童:歌舞伎もやりますよ、舞台稽古。だめじゃないと思いますよ。今までと同じ枠に当てはめようとするとまだまだ時間がかかるので、新しい方法を考えないと。過去のことにとらわれすぎちゃうと、そこに戻れないですよ。

JK:新しいことをしなくちゃ。

歌舞伎はこうだって決めつけない方がいいと思う。

獅童:まさしくそうだと思います。

中村獅童:崖っぷちからの『ピンポン』大ブレイク

中村獅童:崖っぷちからの『ピンポン』大ブレイク

出水:そんな獅童さんの新しい歌舞伎の試みのひとつが、バーチャルアイドル初音ミクと共演する「超歌舞伎」。これは獅童さんが考えたんですか?

獅童:どういう歌舞伎にしたいという方向性を考えたのは僕ですけれど、初音ミクさんと歌舞伎のコラボレーションはドワンゴさんの発案です。その中で僕がいろいろ提案しました。最新のテクノロジーとNTTさんの現代技術があって、スクリーン上のものが舞台にあって、デジタルと我々が、客席から見るとまさに共演しているように見える。それから生配信もしているので、画面を通して誰でもネットでLIVEで見られる。コロナの前から実はやってるんです。

JK:去年フランスのジャポニズムで、初音ミクさんがLIVEやったんですよ。フランス人も最後は総立ち! 相手がデジタルでも、興奮すると総立ちだった。

獅童:お客さんがペンライトを振る歌舞伎っていうのは超歌舞伎だけだと思いますね!

JK:やっぱりロック魂が(笑)

獅童:今まではイベントでやってたんですけど、ついに京都の南座で、歌舞伎専門の劇場でやれる時代になった。今年も6月に京都でやる予定だったんですけど、コロナの影響で中止になってしまって・・・なんとか1日だけでも、ということで8月限定で配信させていただきます。

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ニコニコネット超会議 2020夏

開催日時:2020年8月9日(日)~8月16日(日)
主催:ニコニコ超会議実行委員会
超特別協賛:NTT

超歌舞伎は最終日、8月16日(日)にLIVE配信予定
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出水:演目とかは決まっているんですか?

獅童:去年もやった「千本桜」なんですが、今度は配役もひと工夫しました。それは見てのお楽しみなんですが、今までご覧になった方も楽しめるかと思います。

JK:歌舞伎って、獅童さんみたいに新しい体験をした人が、そういう新しい生き方を提言する立場だと思うの。今やらないとやるときないですよ。この時代に提言するのが一番。これをやるべきだ、っていう挑戦。

獅童:今言えることは、伝統と革新。伝統として守らなくちゃいけない部分はもちろんあるし、過去のすべてを取り戻すとか過去の栄光にすがるのではなく、これからの未来に向けて進む道は僕たちで作らなくちゃいけない。新しい道を作るっていうことが最も大切なことなんじゃないかな、と自粛期間中に思いました。

JK:若手というか、ベテラン若手がね(笑)

獅童:中堅若手なんでしょうね(笑)80歳でも90歳でも立ち続けることができる芸能ですから。同じ役を演じていても、人生経験というか、人間生きていれば悲しい思いもすればいろんな感情の中で生きてるわけで・・・そうすると、演じ方も意識しなくても自然と変わって来ることがあるんです。それがやっぱり役者1人の個性であり、その役者の人生観が表に出る。

それがアートだと思うんですよね。

JK:先代の勘三郎さんも、粋っていうかな、余裕っていうかな。あれはすごいですよ。

獅童:芝居に対する情熱と、歌舞伎をもっと敷居の低いもの、庶民のものにしたいという思いには当然影響を受けているし、そこで受けてきた教育もあるし。亡くなってしまったけれど魂は生きていて、それを引き継ぐのも我々だし、新しい時代を作っていくのも我々だし。逆に言うと、歌舞伎はこれからもっともっと面白くなるんじゃないかなと思います。そうしなきゃいけないしね。

中村獅童:崖っぷちからの『ピンポン』大ブレイク

獅童:こないだ歌舞伎の俳優協会っていうのがありまして、そこの役員というか、僕らの世代が集まって話し合いがありまして。僕は仕事があって出られなかったんですが、後日海老蔵君から「獅童君が来られないっていうから話がしたい」って言われて、3~4時間しゃべりましたかね? 男2人で。やりたいこともいっぱいあるし、お互いどういう風にやっていきたいか、とか。気づいたら4時間(^^)

出水:これからこんなことをしたいというのはありますか?

獅童:去年、新しい歌舞伎という形で、寺田倉庫と「倉庫歌舞伎」というのと、新宿のライブハウスFACEで「女殺油地獄」というのをやらせていただいたんです。それを違った場所で、来年に向けてやりたいなと思っていて・・・若者カルチャーと結び付けたり、ファッションと結び付けたり、同世代で活躍する人の力も借りて、新しい見せ方を提案したいですね。

中村獅童:崖っぷちからの『ピンポン』大ブレイク

=OA楽曲=

M1. YUMEGIWA LAST BOY / スーパーカー

◆8月2日放送分より 番組名:「コシノジュンコ MASACA」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200802170000

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