TBSラジオ「ACTION」。火曜パーソナリティはクリープハイプの尾崎世界観さん。

9月22日(火)のゲストは、落語家・立川談春さん。火曜日のACTIONは最初も最後もゲストは談春さんでした。今日は談春さんからコロナ禍での落語について、師弟関係について尾崎世界観さんがお話を伺いました。

談春:落語ってすごいなと思うのが、300年ぐらい続いてるわけじゃん。安政の大地震も、富士山の爆発も、関東大震災も、太平洋戦争も乗り越えたときはきっとそういうトーンで落語を喋っていたわけだろうからね。

尾崎:こういう何かあったときに落語は強いんでしょうね。

談春:落語は製作費はかからないから配信は向いてるかもね。

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尾崎:談春さんは配信で何かされましたか?

談春:考えてはいます。でも無料配信って視聴者数が出ますよね。それで、「談春に人は集まらなかった」であればいいんですが、「落語に人は集まらなかった」となったときの責任は取れないのでね。ただやれば良いってもんじゃないから、まだ動いてはないですね。

尾崎:お客さんを50%だけ入れる落語会というのはどうですか?

火曜ACTION最終回もゲストは立川談春さん!

談春:僕らが落語家になった35年前って落語が真冬の時代なの。
50%お客さんが入っていたら、大袈裟だけど満員って言ってたの。落語に需要がなかったんだよね。今はこのコロナ禍で皆辛いよね。でもあの頃は「落語を選んだお前が悪い」と言われていた時代だからさ。誰も観に来なかった落語だったんだけど、志の輔が出て、俺が出て、談春が、いや違う、志らくが出て。俺、どんだけ「志らく」って言いたくないんだよ…(苦笑)でもこうやって立川流が出てきたんだよ。明日なんか無かったんだよ、喋る場所なんてないんだから。全部自分でやらざるを得なかったんだから。しかもその状況は俺たちは分かって入門してたんだよ。ほかに落語家らしく育つ場もあったんだけど、談志の弟子になってね。皆がしょんぼりとしているこの状況は、その頃よりは楽だね。もちろん大変だよ。
辛い思いをされている人も大勢いらっしゃると思いますが。免疫を上げるにはやっぱり笑うことなので、皆さん笑える落語家さんのところに行ってくださいね。談春さんのはそんなに笑えないですけど(笑)

(「談春さんが自分が弟子だった頃に気を付けていたこと、弟子に求めていることはなんですか?」というメールに対して)

談春:落語家は「前座-二つ目-真打」とありまして、前座は落語家になるための修業期間です。つまり一切の個性や感情は求められていません。落語家になるために最初にされることは、我を徹底的に潰されることです。これはパワハラなんてもんじゃありません。うちはそうでした。つまり売れる方法は教えられませんが、飢え死にしない方法は教えられるかもしれません。売れなかったときの最低の保険は掛けておきたいですね。それは才能や芸の力は関係ありません。愛嬌です。人にどう愛されるか。

前座はお金も力も立場も素質も、つまり魅力がありません。人に尽くすことしかないんです。「お前が仕切っている楽屋は気持ちよく高座に上がれるな」と思われるかです。高座から下りてきたら「お疲れ様でした」と言って、この人のお茶の濃さはこのぐらいで、熱さはこの温度で、この人には水で、この人には何もいらなくて、というのを1秒でも早く覚えて完璧にやれるかなんです。忖度以外の何者でもないです。何でそんなことをしなきゃいけないかというと、そうしないと教われないからです。何も教えてくれないんです。
火曜ACTION最終回もゲストは立川談春さん!

談春:ここで一つ問題があります。「弟子を取った以上、教える側に責任はないんですか?」ということですが、そんな責任はないです。学校じゃないので。てめえが勝手に入ってきたので。こっちは辞めろと言っていますから。
これは今の世の中、通用しないでしょうね。でもこれをどこまで残していくかですね。この質問の答えとしては、「どうやって先輩に可愛がられるか考えろ」と教わり、そればかりを考えていましたが、僕は全くできたとは思っていません。それでも消せない個人の灰汁みたいなものが個性というのではないでしょうか。「僕の個性はこれです」と押し出しているもので世の中に通用するものは伝統芸能の世界では一つもないと思います。邪魔なだけです。ただ、それを我流でやってできちゃった人を天才というんでしょうね。また怒ってるように聞こえたかな?

尾崎・幸坂:いえいえ…!

引き続き、たっぷりと立川談春さんに語っていただきました。

◆9月22日放送分より 番組名:「ACTION」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20200922153000

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