毎週、金曜日の朝8時30分からお送りしている金曜ボイスログ(TBSラジオ)。
パーソナリティ、シンガーソングライターの臼井ミトンによる11月27日分の「音楽コラム」の書き起こしです。
ブルーハーツの歌詞の素晴らしさを語りたい!
先ほどkinokoさん「テレビのトーク番組で、ブルーハーツの甲本ヒロトさんと菅田将暉さんが対談されていた」と、おっしゃってましたけれども、そうなんですよ。フジテレビの特番だったのかな?『まつもtoなかい ~マッチングな夜』という番組なんですが、甲本ヒロトさんがその番組内で語った内容というのが、ネットニュースだったり、SNSなんかで結構話題になっていて、リスナーの方々でご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが…
この番組、松本人志さんと中居正広さんが番組ホストで、ゲストの方が二人ペアでやってくるみたいな感じだったんですけど、つまり4人でトークをするという形の番組で、その中で中居正広さんが甲本ヒロトさんに、「今の若いバンドを見て何か思うことはあるか?」という質問をされたワケなんですよ。その質問に対して甲本さんは「アナログ世代とデジタル世代の違いで1つだけ感じることがあるとすれば、若い人は歌詞を文字情報として追いすぎだ」という風におっしゃったんですよね。「アナログレコードの頃はもっと全体の音とか雰囲気で音楽を聴いていた。だから歌詞なんて、歌詞の意味なんてどうでもよかった」という風におっしゃったんですよ。

僕は甲本ヒロトさんが書く歌詞って、ブルーハーツであれハイロウズであれ、色々バンドの名前は変わってますけど、日本語ロックの最高峰の1つだと思っているワケなんですよ。特にブルーハーツの歌詞の文学性みたいなものって、一般的にもものすごく評価されていると思うし、わざわざ僕があらためて言うまでのことでもないくらい、評価されているんですよ。その歌詞、彼の書く歌詞のおかげで、リスナーの方の中にも僕よりも年上の方だと、やっぱり人生のいろんな局面で 「ブルーハーツの歌に励まされて、なんとかここまでやってきた」っていう方もすごく多いと思うんですよね。
だから逆に言うと、そんな甲本ヒロトさんじゃなきゃ【言えない言葉】【言えないセリフ】なんですよね。「歌詞なんてどうでもよかった」なんていうのは。
甲本ヒロトさんにそんなこと言われちゃうと、もう、、ぐぬぬぬ。。

確かにkinokoさんもね、デジタルネイティブの世代というか、生まれた時から携帯電話とかあったわけじゃないですか?僕も生まれた時からがあって、CD世代で、逆に僕の場合は大人になってからアナログレコードと出会うワケなんですけど、その時感じたのがやっぱりアナログで聴く音楽って耳で単純に何か情報を得るというよりも、肉体的にすごく気持ちのいい経験なんだなって思ったんですよね。音楽って実は全身を使って何か感じる行為だったんだな、っていうことに気づいたんですよね。
iPodとかで今までずっと学生時代から音楽を聴いてきて、アナログレコードで最初に聴いた時に「え!?なんか…こんなに全身にくるものなんだ!」っていうのをすごく思ったんですよ。
それでこれはね、すごく甲本ヒロトさんの人間としての優しさが出ている部分だと思うんですけど、この若い子たちが歌詞を字面で追いすぎっていうことを、何も彼は批判しているわけではなくて、むしろデジタルって曖昧な部分がないから、濁っているモノだったり、ぼやけているモノが許されないから、今の時代生きていくのも大変だよね。っていうような雰囲気でおっしゃるワケなんですよね。だから彼としては、その曖昧な部分とか、あるいは意味や解釈を押し付けないということをきっと普段から意識されてるんだろうな、と。
何かやっぱりね、メッセージ性を持った曲を作って歌おうっていう風になったら、やっぱりその主張を押しつけることになってしまうじゃないですか?自分はこう思うんだ!ということを歌に乗せて歌いたいわけじゃないですか。でもやっぱり甲本さんは解釈とか意味合いを押し付けないっていう…ある種の優しさみたいなものを、すごく人生を通して大切にされてきた方なんだな~っていうのを、そのなんというか、一連の会話を聞いてすごく感じたんですよね。

やっぱりブルーハーツの曲、特に僕が好きなのはブルーハーツ…そうですね、ハイロウズっていう別のバンドがまた始まるんですよ。ブルーハーツ解散してから95年だったかな?僕が小学校高学年の頃にその当時大親友だった関戸くんという子が「ブルーハーツが解散してハイロウズってバンドになったんだよ!」って教えてくれて、それ以来の僕は甲本ヒロトさんの音楽を聴いているんですけど、そのブルーハーツ時代の曲、特に僕好きなんですけど、いつもすごいなって思うポイントのひとつに、小学生でも理解できるような、いわば平易な言葉、やさしい言葉しか基本的に歌の中に出てこない。出てこないのに、何というか…聴くときの心理状態とか聴くときの状況によって本当に何十パターンもの全然違うストーリーが生まれてくるんですよ。その意味合いが聴く人によって全然違ってくる、っていう印象がすごくブルーハーツの曲にはあって、それがまた簡単な言葉しか使ってないのに、そういう風に複合的な意味合いが生まれるような歌詞を書けるっていうことで、僕はすごいなっていう風にいつも考えてるんです。それで先日のテレビ番組で話されている姿とか内容を聞いて、やっぱりすごく押し付けないっていう、解釈なり意味合いを押し付けないってことをすごく大切にしてるからこそ、そういう曲が生まれるんだな~というのを実感しましたね。
ブルーハーツ、本当にたくさん名曲あるんですけど、その中で僕が個人的に一番好きな曲を今日は聴いていただきたいと思います。

kinokoさんは(曲を聞いてみて)どうでした?
Kinoko: 私は人生の何か...人生を感じさせるイメージ...
人生ソングね。なるほど、そう感じましたか。何かに立ち向かっていく感じというのかな?甲本ヒロトさんが「若者は字面で歌詞を追いすぎ」っていう話をされてた、そのテレビ番組での一言からこのミュージックログで話す内容をパッと思いついたワケなんですけど…今聴きながらkinokoさんが思いっきり歌詞カードで歌詞を読みながら聴いてるっていう…めちゃくちゃイマドキの若者で...若者代表でいてくださって、ありがとうございます(笑)
◆11月27日放送分より 番組名:「金曜ボイスログ」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20201127083000