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6月7日(火)放送後記

7時30分過ぎからは素朴な疑問、気になる現場にせまるコーナー「現場にアタック」

新型コロナウイルスの感染拡大防止措置として、およそ2年間実質停止されていた外国人観光客受け入れが6/10(金)に条件付きで再開されます。しかしこの2年間でホテルなどの観光業は売り上げが激減し、特に外国人観光客を主なターゲットとしていたゲストハウスは廃業となった所も数多くあります。

そんな中、様々なアイデアで売上減を最小限に食い止めた「ゲストハウス品川宿」について取材報告しました。

入国後14日間をゲストハウスで待機

外国人観光客の受け入れ停止で宿泊客がほぼゼロになったという2020年4月にゲストハウス品川宿が起こした行動とは?宿場JAPAN代表取締役の渡邊崇志さんのお話です。

「全くお客さんがいなくなったときに、ちょっと空港の方に出かけて調査してみようと思って、空港の出口でプラカード持って『空室あり』みたいなことを書いて、ちょっと立ってみました。当初感染の状況とかも全く未知数だったので、予約をして入国した外国人でさえも、近隣のホテルに断られていたりとか、公共交通が使えないっていう問題があって、その人たちが途方に暮れていた。その方たちをお迎えして我々の宿泊施設に来てもらうっていうサービスをやって、しばらく満室な日々が続いたっていうこともありました。」
(宿場JAPAN代表取締役・渡邊崇志さん)

「ゲストハウス品川宿」は2年間の訪日客受け入れ停止をどう乗り...の画像はこちら >>

仕事や留学目的で日本に来た方々が入国後14日間の待機をどこですればいいのか途方に暮れていました。選択肢の1つがホテルですが、事前に予約した場所でさえ、一般のお客さんと同じ場所に泊めることを不安に思い、水面下で断る事態に。またその方達の移動手段について、政府は電車やタクシーなどの公共交通機関を使わないよう要請。ハイヤー、レンタカー、知人の車なら使えますが、日本に来たばかりの外国人がそう簡単に手配できるものではありません。そこでゲストハウス品川宿では、空港からの送迎つきで14日間宿泊できるプランを打ち出し、入国後の隔離施設として利用してもらおうというサービスを実施。当時は一時休業という選択をするホテルも多い中、ゲストハウス品川宿では全16部屋が満室となる状態が3~4か月続いたといいます。

宿泊者からのお礼の手紙が多数届いています

「ゲストハウス品川宿」は2年間の訪日客受け入れ停止をどう乗り切ったのか?

ウクライナからの避難民もゲストハウスに滞在

訪日外国人の隔離を目的とした施設提供で築いたノウハウが、最近はこんな形で生かされているそうです。

「ウクライナの方とかも無料で宿泊を受け入れたりしまして、陰性だった方が都営住宅に入るまでの期間、一週間程度の隔離のお手伝いをしました。実際に家族1組が泊りにいらっしゃって、お弁当の手配とその他の生活周りの物資をお届けしたんですけど、さすがに弁当代の持ち出しは結構厳しくて、地域に相談をしたら町会長や商店街からもご寄付頂いたりもして、無料の取り組みではあるんですけど、みんなが元気になる取り組みになったし、僕らもそういう一端を担えてよかったなというのはありました。」
(宿場JAPAN代表取締役・渡邊崇志さん)

▼これまでゲストハウスに来た人の出身地を示すピンが、ウクライナにも

「ゲストハウス品川宿」は2年間の訪日客受け入れ停止をどう乗り切ったのか?

コロナ禍で帰国困難な外国人の受け入れに慣れていたので、ウクライナからの避難民受け入れについても真っ先に手を挙げたとのことです。その他にも多様なサービスを打ち出し、例えばコロナ禍でアルバイトができず困窮した留学生について無料で長期滞在を受け入れたり、近隣のクリニックと提携しPCR検査後の待機場所として使ってもらうなどしました。

★休んでも補償は出ない、待っているだけでは客は来ない「生き地獄」

コロナ禍で多くのゲストハウスの収入が9割ほど減りましたが、ゲストハウス品川宿では様々な施策の効果で5割ほどの減少に食い止められたということです。しかも、補償金にはほぼ頼らずです。というのも、実は多くの地方では、1回目の緊急事態宣言が解除された2020年5月から、宿泊施設も飲食店と同様に休業要請に応じることで補償金が一定額もらえましたが、東京都内の宿泊施設は引き続き「社会生活を維持する上で必要な施設」と位置付けられ休業要請の対象にならず、営業を続けざるを得なかった側面もあります。渡邊さんは当時を振り返ってこんなお話をされていました。

「移動制限があったり行動の自粛があったり、お客さんは動かないのに営業はしとけっていう状態がもう本当に生き地獄で、どうしていいのか日々考えながら、ただ動くことをやめないという方針だけで色々動いて回ったっていう感じですかね。」
(宿場JAPAN代表取締役・渡邊崇志さん)

ゲストハウス品川宿が他の宿泊施設より収入の減少幅が食い止められたとはいえ、5割減は相当な打撃です。渡邊さんは今後また新型コロナが感染拡大となった場合には「本当に潰れてしまう」とも話していました。

これほど国のコロナ対策を補うよう外国人支援をしていたゲストハウス品川宿が国の補償も十分に受けられず潰れてしまうとなったら、悲しいものがあります。

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