TBSラジオ「コシノジュンコ MASACA」毎週日曜夕方5時から放送中!

2021年1月17日(日)放送

森田恭通さん(part 1)
1967年大阪府茨木市生まれ。10代のころからウィンドウディスプレイのアルバイトにかかわるとともに、大学在学中に神戸・三宮のバー「COOL」のインテリアを手がけたのをきっかけにデザイナーデビュー。

大阪のデザイン会社に勤務した後、1996年に独立し、時代の寵児となります。2000年に株式会社グラマラスを設立し、現在も国内外を問わず、インテリアデザインやプロダクトなど幅広い創作活動を行っています。
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JK:私、森田さんのデザインって衝撃的で好き! インテリアというよりもアートですよね。

森田:そうですかねぇ。まあ飲食店や商業施設が多い中で、お客さんんの印象に残ってもらうことを一番大切にしています。

JK:つい最近もMIYASHITA PARKのお店でご一緒になってね。すごい渋谷の顔になったし、ただ食べるんじゃなくて楽しいの!

森田:ベトナム・タイ料理のお店で「DADAI」っていうんですが、ダダイズムをテーマにしたデザインを考えたんです。ダダイズムって難しいんですが、簡単にいえば1900年初頭、ベトナムはフランスに統治されてた時代。その時にフランスのアート界では、今までのお上品な文化からアヴァンギャルドなアートに変わった時代なので、それをテーマに。だから気分がアガるレストランですよね。

JK:あそこで大きな絵があるじゃないですか。写真かなと思ったら絵なんですよね。

それがまた大きいのよ!

森田:鉛筆画ですね。5mぐらいありますかね?

JK:やっぱり食べに行くって美味しいだけじゃなく、私もインテリアのイメージが好きだから、何料理っていうよりも「インテリアはどんな?」っていうので行きたいんですよ。

森田:やっぱり食べるだけじゃなく五感を感じる場所ですからね。同志社大学の学食をデザインしたことがあって、そこがロングテーブルなんです。学生同士はコミュニケーションが大切だと思ったんで、20対20の合コンができるようにと思ったんですけれど。当時の学長は「素晴らしいね、森田さん!」って言ったんだけど、学長が考えてたのはゼミコンであって、合コンではなかったらしい(笑)でもコミュニケーションには違いないですよね。

出水:他にも森田さんが手掛けたデザインはたくさんありまして、日本橋高島屋の「ル・カフェ ジョエル・ロブション」、伊勢丹新宿本店の本館、東急プラザ渋谷、さらには国会議事堂内の国会中央食堂ですとか・・・

JK:だいたい行ってるわ! 私が一番印象的なのはMEGU。ニューヨークのMEGUって2004年オープンでしょ? 2001年に9/11があったから、行くの大変だったでしょ。

森田:2000年ぐらいから準備をしてたので、オープンまで3~4年かかったんですが、それこそ『情熱大陸』にずっと追いかけていただいていて、多分ハッピーエンドにならなかったのは唯一僕なんじゃないかって(笑) 問題が起こって、結局業者さんを変えて、そこで番組が終わったんです。

JK:ややこしい。

森田:大変でしたね。その当時僕もニューヨークのいろんなところに顔を出してたんですけど、どうしてこんな店がもっとないのかなと思ってたんですよね。

JK:氷のブッダ、あれはどうして溶けないの?

森田:あれは溶けます。閉店後にはだんだん痩せてるブッダさんになってます(笑)1.5mぐらいなんですけど、親子2人で彫るんですね。

出水:じゃあ毎日新しくしてらっしゃるんですね!

森田:当初はオープニングのレセプションだけだったんですけど、評判が良かったんで毎日。

JK:あれがないと! あれがあるからいいんですよ。

森田:それこそ篠山紀信さんとMEGUに行ったときに、「なんだ、こんなブッダがあるのか」って話になって、僕がそこにコインを投げてパンパン!と手を叩いてお辞儀したんです。そしたらその瞬間に、お店の方が全員行列になって、手を叩いて(笑)どんどんコインが貯まっていく。

JK:けっこう潤ったりして。

森田:MEGUもクローズしてもう何年も経つんですけど、今でも世界中で言われます。僕カタールでもそれをやったんですけれど、向こうの宗教上は絶対仏像モノはやっちゃいけないんですね(笑)まぁ持ち込んだときに相当怒られましてね。「お前は何を考えてるんだ」って。それは没収されましたけれども、いまだに返ってこないので、誰かのおうちにあるんじゃないかと(笑)

JK:どのぐらいの大きさ?

森田:2.5mぐらいのものが2体。それで結局作り直しまして、今は巨大なチャイナドレスのトルソみたいなのがあります。

JK:賢三さんも仏像が好きでね、プーケットにヴィラがあって、そこに大きな仏像を買っちゃったんですよ。そしたら近所の人がお賽銭を入れて拝みに来るっていうんだから!(笑)

森田:僕もこんなにブッダを続けるとは思わなかった。でもやっぱり海外の型から見ると、東洋の神秘でつながっているんですね。

JK:アートっていうかジョークっていうか、宗教心じゃなくてね。

森田恭通「賭け事はしないが、人生がギャンブル」

森田恭通「賭け事はしないが、人生がギャンブル」

出水:森田さんは2001年の香港プロジェクトを皮切りに、ニューヨーク、ロンドン、カタール、パリでも活躍の場を広げていますが、海外で仕事をするきっかけはロンドンの国際インテリアの出展なんですよね?

森田:僕が30歳ぐらいなんで、23年ぐらい前。インテリアというと皆さんミラノをイメージされると思うんですが、もうミラノは皆さん行っているんで、二番三番煎じになるなと思って。ロンドンは当時日本人は誰も行ってなかったんです。

JK:ロンドンってインテリアっていう感覚ないものね。美術館とかファッションとか・・・

森田:ですよね。逆に注目度が上がるかなと思って余裕で行ったんですが、1年目でボロボロにされましてね。自信満々で行ったら、「君だれ? 何しに来たの?」みたいな。その時いろんなメディアの方からアドバイスいただいて、やるんだったら中途半端にやったらダメってことで・・・

出水:2年目は相当大きな区画を借りたんですよね!

森田:自分の1年間の売り上げと同じぐらいの場所を借りて。

思い切り過ぎましたね。 僕プライベートではギャンブルしないんですけど、人生ギャンブルなんで(笑)ヨーロッパの大きい家具メーカーよりも大きい場所を使ったんです。本当ハッタリなんですけど。

JK:でもそういう気持ちがないとできないですよね。ギャフンと言わせるのには。

森田:そうなんですよね。やっぱり東洋の人間はどこかコンプレックスがあって、西洋に勝てない部分がある。それに勝つには根性でしょうね(笑)

JK:どんなだったんですか?

森田:実際のショウと家具のコレクション。あとは自分たちがどういう仕事をやってるか。結構大きな場所を借りたので、ムービーとかも見せられたんです。こんなデザインをするデザイナーがいるのか、っていうことがその時にわかってもらえた。やっぱりメディアの方々が大きかったですね。

世界に僕を発信していただけたきっかけでもあったので。東洋の無名な少年・・・少年じゃないな、30歳だからおじさんですね。でも世界から見たら新人なわけじゃないですか。

JK:でも海外って、若い人もキャリアじゃなく、良ければ認めてくれますよね。

森田:クリエイティブに関しては人種も関係ないと思いますね。それからきっかけにいろいろお話をいただいて、全部数珠つなぎに繋がって。香港からニューヨークのMEGUに繋がって、ニューヨークからカタールに繋がって・・・

JK:まずひとつ成功するっていうのが大きいですね!

出水:森田さんにとって「いいデザイン」とは? 言葉にするのは難しいと思うんですが・・・

森田:やっぱりデザインとアートは違っていると僕は思っていまして、デザインは商売の起爆剤になるというか、僕がメインではなく、クライアントさんのプロジェクトをサポートする。人の印象に残って、お客さんがリピーターになっていただいて、お金を落としていただいて、それがビジネスになっていく。デザインっていうのは本当にタイムレスで、長く続いていくものだと思います。

森田恭通「賭け事はしないが、人生がギャンブル」

JK:この番組は建築家の方はたくさんゲストに出ていただいてるんですけど、インテリアは初めてなんですよ。

森田:ありがとうございます、光栄です。「インテリアデザイナー」と「インテリなデザイナー」と両方あるんですけど(笑) でも最近は「インテリア」という肩書が取れましたね。

僕もインテリアもやるし、建築もやるし、洋服以外はいろんなことをデザインするので。

JK:でもおしゃれですよね。ファッション好きでしょ?

森田:もともとこの業界に入ったのは、洋服が欲しくてアルバイトしたのがきっかけなんです。僕が大阪生まれなんですけれど、一番長くいるのが神戸。10年前までは本社も神戸だったんです。結婚してこっちに来たんですけど。

JK:18歳で「COOL」っていうバーをやったんでしょ? クライアントもえらいですね、18歳の子に頼むなんて。

森田:たまにそこで飲むんですけど、いまでもそこはデザインがそのまま残ってまして、35年近く改装もせずにそのままあるんです。なんで僕に頼んだのかな、と思ったら「お前がしつこいからだよ」と言われました(笑) やっぱり行きたいところがなかったんですよ。18でバーに行くってそれは問題があるんですけど…

JK:そうよね、バーに行ったこともない18歳の子にデザインを頼むって(笑)

森田:僕はバイトしてたんです。お酒が飲めないのにお酒作るのが上手だったんです。僕の最近の仕事で、メンバー制のバーがあるんですよ。そこは予算があまりにもなくて、残りの予算が14万だったんです。その14万で画鋲を10万個買ったんです。それを壁に貼って、いまでは12万の画鋲が張ってあります。ようはフェイクの材料を使いたくなかったんで。画鋲って真鍮なんですよ。時間が経つと酸化してくるので、表情がどんどん変わる。

出水:へぇ~! 経年劣化で味を増していくんですね。まさか低予算というところからアイデアが生まれたとは。

JK:そこがいいところなのよ!

森田:予算ないほうが燃えますからね。

出水:森田さんのもとには面白い方が集まってきてるなあという印象ですが、人脈形成術みたいなものはどうなさっているんですか?

森田:本当面白い人が多いんですよ。多分ジュンコ先生も一緒だと思いますが、人の数珠繋ぎって、クリエイティブな人と出会えばまた別の人を紹介してもらって、また違う人を紹介してもらう。自分にないものを見ると、その人に話しかけたり・・・実は人見知りなんですよ。

出水:ええ~?!

森田:いや本当に。言わないと誰も信じないんですけど。でも、自分にないものを持っている方を見ると話しかけますね。僕の友人ってデザイナーは多くないですが、ミュージシャンの方は多いですね。僕は本当音楽ダメなんですよ。うちの奥さんからも、歌うのはやめなさいって言われてるんです(笑) デザインって持って運べないですけど、ミュージシャンの方って音楽があれば世界中に発信できるでしょ。

JK:それってうらやましいですよね! 自分が楽器ですもんね。

森田:でも、ファッションもデザインも音楽も共通しているのは、思い出に残ることなんです。たとえば、あの時の洋服、っていうと時代背景を思い出すじゃないですか。音楽もあの曲を聴くと、あの人は元気かなって。

JK:音楽ってすごくその時代背景をきちんと見せてるし。映画もそうですけどね。音楽とバーは関係してるでしょ?

森田:めちゃめちゃ関係してます。僕は仕事柄いろんなところに行きますが、最近はフランスが多くて、フランスってバーはそんなに多くないんですよね。ホテルのバーはあるけど。

JK:プラザアテネのバーはいいわよ! 私も大好きなんです。

森田:そう! プラザアテネの音楽はすごく良くて。あそこは泊まらなくてもバーが使えるのでね。

JK:その向かいに私の家があるの。

森田:それがすごいですよ! 今日一番のすごいことはそこだと思いますよ!

森田恭通「賭け事はしないが、人生がギャンブル」

=OA楽曲=
M1. A Hard Day's Night / Quincy Jones

◆1月17日放送分より 番組名:「コシノジュンコ MASACA」
◆http://radiko.jp/share/?sid=TBS&t=20210117170000

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