毎週月曜日~木曜日、朝8時30分からお送りしているTBSラジオ「伊集院光とらじおと」
「伊集院光とらじおとゲストと」2月2日(火)のゲストは、映画監督の西川美和さんでした。
西川さんと初対面の伊集院は、まず、映画業界に入ったきっかけから質問。
西川さんによると「脚本を作るためのリサーチ部隊」と答え、詳しくうかがうと「天国に何か一つだけ人生の思い出を持っていけるとしたら、どの瞬間を持っていきますか?ということを町中の特にお年寄りを中心に何百人とカメラを回して聞いてきた」とのこと。
西川さんは、そこから得られた経験について「脚本ってこういうところからスタートなの」ということと同時に「人にカメラを向けた時にその人の何かを奪っちゃう感じとか、いいとこばかりを撮ろうとするズルさ」と語ってくれました。
だからこそ、ノンフィクションを撮ることはいまだにできていないとのこと。その話を聞いた伊集院は「でも、その後ろめたさみたいなものは完全に消えちゃダメだと思う」と話し、くしくもその言葉は是枝監督からも言われたことがある言葉だったそうです。

今でこそ監督として数々の作品を生み出している西川さんですが、最初は監督になるとは思っていなかったそう。
「仕上げるまでに100人、200人とどうやって渡り合っていくんだろうということの方が多くて」と話し、監督ではなく脚本家を志したそうです。
家に引きこもって書いた脚本が、結果として監督デビュー作となった『蛇イチゴ』だったそうですが、それも最初は監督をするつもりはなかったとのこと。ただ、「デビューの脚本をほかの人に演出してもらって、よくない結果になったら後悔すると言われて…」と監督になることを決意。
でも、その作品が出来上がると、プロデューサーから「インタビューの時に、次に何撮るんですか?って聞かれて答えられるようにしなきゃダメだ」と言われ、巻き込まれるように監督の道を歩んできたそうです。

最新作『すばらしき世界』で主演した役所広司さんについては・・・
「テイク1ですごい正解を叩き出してくるんです。でも、そこに圧倒されずに自分が考えてきたことを相談してみると、テイク2、3、4と重ねていくと、結局、編集してみると”なんだテイク1じゃないか”という(笑)」
とその凄味を語ってくれました。
実は西川美和さんにとっては、役所広司さんは憧れの人。
西川さんが17歳の時に見た「実録犯罪史 恐怖の24時間‾連続殺人鬼 西口彰の最後」に実在した殺人犯役として主演していたのが役所さん。このテレビドラマに強く心を動かされ西川さんは、今回、おなじく殺人犯が主人公の『すばらしき世界』で憧れの役所さんとはじめてお仕事をなさったそうです。
その背景には、原案となった『身分帳』を書いた佐木隆三さんが、『復讐するは我にあり』を書いていたこと。そして、その『復讐するは我にあり』はかつて役所さんが演じた殺人犯・西口彰をモデルにしている上、その映画は今村昌平さんが監督している。そして、今村昌平さんも映画『うなぎ』で役所さんを主演に据えている。という、繋がりがあったことを教えてくれ「ずっと自分では登っちゃいけない山だと思っていたけど、ようやく役所さんにお手紙を書くことができました」とのことでした。
伊集院曰く映画を見たスタッフたちの空気で「いい映画」とわかるという新作『すばらしき世界』のお話、ありがとうございました!
◆2月2日放送分より 番組名:「伊集院光とらじおと」
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