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2月10日の放送回では、猪谷千香さんをお迎えしました。
この度取り上げる猪谷さんの著書は、『美術業界を蝕む女性差別と性被害 ギャラリーストーカー』。
「ギャラリーストーカー」の被害が明らかになったのは、2021年。
現役の作家が作っている「表現の現場調査団」が大規模にハラスメントや性被害の調査した際、「ギャラリーストーカー」という被害が明らかになりました。
「ギャラリーストーカー」とは、画廊で作家に付きまとう人たちのこと。彼らの多くが中高年男性で、ターゲットにされやすいのは、美術大学を卒業したばかりの若い女性作家。
お客さんから抱き着かれたり、しつこくSNSで長文を送られてきて困っていたりなど、ひどい実態ですが、お客さんであり、コレクターであるということもあり、なかなか拒絶することができません。
彼らは在廊中を狙って作家さんに接触。普通は作品や創作活動について聞きますが、そうでなく、プライバシーを聞いたり、ひどいケースだと男女の関係性を持ったり、いきすぎた接触をします。
若い作家さんは、コレクターの方と繋がって、作品の価値が上がっていくことにつながります。ですから、無下にできない弱い立場であり、またフリーランスで活動しているため、守ってもらえる人がいません。そのことが被害を加速させていきます。
しかし、このようなことは美術業界では当たり前だったようで、当たり前すぎて誰もそれをちゃんと被害として言わず、正そうとしませんでしたが、やっと最近、ようやく業界が動き始めました。
フリーランスで、若い女性作家はとても業界内で弱い立場で、
「それくらい我慢しろ」「大したことないだろ」で済まされてきたのです。
猪谷さんが調査を進めていく中でわかったのは、作家さんたちは美術業界内でもハラスメントを受けていて、なんとそれが予備校・大学時代から続いていること。
美術業界は明治時代以降男性社会が続いていて、美術業界で著名な人達は男性が多く、男性が選ぶ立場にあり、女性に対するハラスメントが繰り返されてきてたのです。
また、大学ではそういった「作家としてのリスク」を教えてくれず、無防備な状態で外に出されます。
大学として教えないといけないけど、構図を作るような場所になっている現状。
「美大・芸大内のハラスメントの被害をとてもよく聞くけど、大学側にそれを申し立てたとしても証拠がなくてきちんと調査されない。教育現場から変えていかないと、この業界の構図は変わらないんだと思いました」とおっしゃっていました。
美大・芸大の先生は、ご自身たちも作家で、美術業界でバリバリやってらっしゃる方が多い。卒業後もその先生の人脈を使って活動することが多いと、とても言い返せないのです。
被害の申し立てをするのが本当に大変ですが、支援団体ができれば連帯して声を上げることが可能になります。
「本当に被害者の方たちが孤立しているんですよね。美術業界の場合、そこはやはりつながるということがすごく大事ですし、教育現場でも知識を与えていく、
ハラスメントがどういうものなのか、これはやってはいけないということをきちんと徹底して教えていっていただきたいなとは思いますね」とのことです。
他にも、芸大おじさん、ストーカー規制法では取り締まれない部分、「テクスチュアルハラスメント」、「牛耳ってる人たちがまだ鈍感なまま」、「男性は被害を声にできていない」などについて伺いました。