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3月8日(水) 放送後記

3月8日は「国際女性デー」

イタリアではこの時期、ミモザの花が咲き始めるので「ミモザの日」とも呼ばれています。そんなイタリアでは3月8日を「FESTA DELLA DONNA=女性の日」とし、 男性から普段お世話になっている女性に旬のミモザをプレゼントする風習があるそうです。

ちなみに、スタジオにミモザサラダを用意しました。ミモザサラダは、厳密にはいろいろ定義があるそうですが、一般的にはゆで卵の卵黄をみじん切りにするか裏ごししたものを振りかけて飾ったサラダを指すそうです。

3月8日が「国際女性デー」になった由来とは
3月8日は、もともと、1904年にニューヨークで、女性労働者が参政権を求めてデモをした日。その6年後の1910年、デンマークのコペンハーゲンで開かれた会議で3月8日を「女性の政治的な自由と平等を求めて戦う日」にしようと提案がなされました。さらに1975年に国連が制定して現在に至ります。

●女性たちが参政権を求めて戦った120年近く前、女性は男性と同じ人権がなかった。
●選挙で投票し自分たちの代表を選ぶことは、今では当たり前かもしれないが、それは長い間、女性には認められていませんでした。

日本の現状
▼日本でも参政権を求める女性の運動があり、それが第二次世界大戦後にようやく認められました。
▼日本国憲法には「両性の本質的平等」が明記されるようになりましたが・・・
ただ、現状は、男女平等ではなく「性差別はある」。複数の大学が医学部入試で行っていた女性受験者差別なども。

以上を踏まえて、改めて「国際女性デー」について、スーさん・小倉アナが話しました。

スー:(2018年の)医大入試試験で、なんの説明もないまま女性受験者を一律減点して合格者数を調整していたニュースがあったよね。

性別によって、ハードルの高さがはっきり違うってことが可視化された。随分前からそうだったようで、つらい現実でしたねあれは。

※医学部入試で女性が不利になるよう得点調整していたとされる問題。

小倉:女性っていうだけで、高い点数とらないと入れないってわけだもんね。それはちょっとありえないと思った。

スー:(関係者からは「医師不足を解消するための暗黙の了解」との発言もあり)医療現場からも『女性より男性の方が長く勤めるから』とか、『男性の方が体力があるから』という声も聞こえてきたけれど、ほかの国は、こんなことをしなくても医療が成立してるわけで。解決しなきゃいけないのは、妊娠出産を経ると医師を続けることが難しくなる医療システム、つまり社会の問題なのに、それを18、19、20歳ぐらいの明るい未来を持つ女性にだけ覆いかぶせてる。こういうところを是正していきましょうって話だよね。

小倉:システムの方を何とかしてほしいなと思うよね。

スー:うん

小倉:世界経済フォーラムが毎年発表しているジェンダーギャップ指数というのがありますが、2022年日本は146カ国中116位、ジェンダーギャップがだいぶありますよってことだよね。政治の分野を見てみますと、ジェンダーギャップ139位。女性議員の割合を見てみると10%。

でさらに総理大臣経験者はゼロ、いまだに1人もいない。

スー:「健康」「教育」「政治」「経済」と4部門あって、教育と健康はほぼ男女平等と言われているけれど、「経済」でのギャップ、そして一番足引っ張っているのが「政治」でのギャップなんだよね。

小倉:今経済という話もあったけれども、経済分野では日本は121位。女性の賃金は女性の男性の6割です。それから管理職の女性の割合は15%、1割強しかいないんだよね。

スー:女性が従事する割合が多い職種の給与が、ほかと比べて少なかったりするのもあるんだろうね。あと、妊娠出産によってキャリアが中断されたあとに仕事に戻っても、ブランクがある分だけ、同い年の男の人と同じぐらいまでは昇進できず稼げなかったり。それも社会の構造の問題なんだよ。

小倉:最近はね、女性の管理職も多くしていきましょうという、動きはあるんだけれども、数字で端的に見るとこういうことになっている。悲しい現状だなと思うんだよね。
でね、ほかにも見てみますと、最近話題の日本銀行「日銀」、これは戦前を含めて総裁副総裁はともに男性が独占しております。それから金融政策の決定権を持つ新議員を見ても6人中女性は1人だけです。

一般の会社の執行役員に当たる理事も6人中1人だけ。・・・ちょっとこれは世界から立ち遅れているよね。

スー:イギリスの教育紙タイムズ・ハイアー・エデュケーションの記事をこのあいだツイッターでリツイートしたんだけど、2023年版の世界大学ランキングで上位200校に入る有力校のうち、女性学長がいる大学、つまり事実上のトップを女性が務める大学の数が増加して、48校にのぼったらしい。でも、日本を含む12カ国では、ランクインしているいずれの大学でも、女性はトップに就いてなかった。200校の拠点が27カ国あるそうなんですよ。日本で200位内に入るのがそもそも東大と京大のみで、学長はともに男性。

スー:じゃあ他の国はどうなのかっていうと、イギリスのオックスフォード、女性学長務めてます。2位のハーバード、7月に学長が女性になるそうです。どんどんどんどん世界は進んでいってるんだがしかし、というとこですね。

小倉:もちろんきちんと能力のある女性になってほしいんだ、だからこそチャンスをうかがっているんだっていう声もあるはあるんだけれども、そういうところがまたちょっと違う気がするんだよね。

スー:これもすごく多層的な話なんですよ。ひとつのボトルネック、問題点を解消すれば解決する話ではなくて。

例えば、私は、女性も男性も、女性らしくとか男らしくよりも「私らしく」生きることができるのが、良い世の中だと思うんですよ。じゃあ、私らしさってなんなんだろうと考えたときに、いま担っている役割とは違う役割を担いたくなる人は、男女ともにいると思うんです。そもそも、性別を女性男性だけに分けられないところもあるわけです。でも、社会がそれを許容しない。

あと、一般的に「女らしいね」は褒め言葉だと思うけど、その女らしさっていうのを事細かに見ていくと、協調性があるとか思いやりがあるとか、気遣いができるとか控えめだとかになる。世間が定義する女らしさを追求していくと、サポート能力だけがどんどん伸びて、最終的には自己決定権がなくなっちゃうことにもつながりかねないんですよね。決断力もそう。あと、女らしい趣味って言ったら、やっぱりお花だったり、お料理だったり。登山とか、サバイバルゲームではないよね。つまり、「女らしい」と言われる趣味って、家庭の中を整えることにつながるものなんですよ。

なので、周囲の期待に応えて真面目に頑張ってきた女性ほど、管理職に就いていきなり決定権を持って部下をまとめなきゃいけないとなったら、私にそこまでできるかな? って、怯えちゃうと思うんだよ。だって、そういうのは「女らしくない」んだもの。

小倉:いやもうできないよって。今までそんなことやったことがないんだもん。やらない方が褒められてきたからね。それをいきなり上に据えられて決定してくださいって言われて震えちゃってできませんって人今多いと思うんだよね。

スー:でも、それただの思い込みだからって話だと伝えたいな。あと世の中の制度としてお互いの見えてる景色が全然違うので、そこを人と私からこういう風に見えてるので、ここが大事なんです。私からはこういう風に見えてるんで、ここが大事なんですっていう話をしていきながら、是正していかないと話が進まないし。

最後にもうひとつ。私は「女らしく男らしくより私らしく」っていうのを標榜しながら番組をやってるつもりだけど、国際女性デーっていうとですね、やっぱりなんとなく、これをきっかけに経済を活性化させましょうというようなムードもあるわけです。「なんとかデー」ってそうなりがちなんですよね。そういうのいっぱいあるじゃないですか。賛同して協賛してくれるのは嬉しいけれども、そういう行為が何か別のことに使われてない? みたいな。

「ポイント5倍デー」じゃないんだからさ。都合よく利用させないように、自分たちが見張ればいいんだけどね。

小倉:利用しないでよね。

スー:利用しないでよっていうか、させないように自分たちがすればいいんだよね。
向こうが利用してきたら、こっちも利用し返すぐらいの勢いで。一朝一夕ではいかないからさ。少しずつ自分の意識も変えて、相手の意識を変えるっていうより、相手と自分の見えている景色の違いを伝えて、できるだけ公平なところに持っていくっていうね。粘り強い作業が必要だと思いますけど。女性の政治家がなかなか増えないのもね……。

小倉:そうなんですよ。もう決まった顔だけになってしまうのがちょっと嫌だなとは思うのでどんどんどんどん増えていけばいいなと思います。

スー:どうしたら増えるのかってのもね、また考えなくちゃいけないところではある。国際女性デーっていうことで、たまたま今日の担当は2人とも女性ですけど。若い子たちがね、どんどん自由になるといいよね。

小倉:考え方をもうちょっと広く感持ってほしいかな。

スー:小倉さんの家はだって今、ティーンの女の子が家にいるわけじゃない。そうするとその子たちが自分が女性だからっていうことで可能性が狭まったりとか、変な下駄を履かされたり脱がされたりとかしない世の中になってほしいよね。

小倉:そうだね、私が小さい頃は弘子っていう名前の漢字を父が間違えて届け定をしてしまったせいで、私の運命は女性として幸せにならないって親戚中がちょっと悩んだっていうのを聞いてたから。その幸せって何?って聞くと、子供を産んでいいお母さんになること・素敵な人と早く結婚すること=女性の幸せだってまだそういう文化だったからね。

スー:そうだね。私達の頃はそういうことがまだまだあったんです。私も幼稚園のときに足を開いて座ってる写真を友達のお母さんが見て、「あららこれじゃお嫁に行けないわね」って言われて、幼稚園生なのにスッゴイ不思議だったんですよね。

そもそもお嫁に行かなきゃいけないのかとか、足を開いていると何でなのかとか、あとからいろいろ考えていくとちょっと背筋の凍る話ではあるんですが、そういう思い込みは男性も女性も世の中から刷り込まれてるところがあると思うんで、お互いが歩み寄ってね。公平な社会にしていった方がどっちにとってもいいと思うんですけどね

小倉:そうね、私らしくあなたらしく。それが1番。

スー:というわけで、以上、今日は国際女性デーの話をしました。ありがとうございました。

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