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10月5日(木)放送後記

10月に入ってからも様々なものが値上がりしていますが、そんな中でも、少し割高の「ある牛乳」が売れているようです。

「お腹の痛くなりにくい牛乳」が売れている

ディスカウントストア「オーケー」の、商品バイヤー、遠田 雄大さんに伺いました。

ディスカウントストア「オーケー」商品バイヤー 遠田 雄大さん

今回「A2牛乳」という商品の方を、取り扱いを始めました。

近藤乳業「北海道A2 別海牛乳」という商品になります。A2牛乳というのは、「お腹が痛くなりにくい」とされている牛乳になりまして、「牛乳は好きだけど、ちょっとお腹がゴロゴロするから控えている」といったお客様にも、飲んでいただきたいというような商品のコンセプトになっております。4月に最初導入してから、一部店舗で販売開始したんですけれども、想定よりも多くのお客様にお買い求めいただいているということもあって、現状、全店で販売を実施させていただいております。実際、店頭でも試飲販売等も行ってるんですけれども、「もうこの牛乳じゃなきゃ飲めない」っていう人も、いたりとかします。

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北海道A2 別海牛乳 1000ml(近藤乳業)。税込251円(10月5日現在)

お腹が痛くなりにくい!専用飼育「A2牛乳」とは?

お腹が痛くなりにくいとされている「A2牛乳」

オーケーで販売されているのは「近北海道A2 別海牛乳 1000ml(近藤乳業)」。「A2(エーツー)牛乳」というタイプの牛乳で、価格は税込み251円(10月5日現在)。200円を切る牛乳もある中で、多少割高でも売れ行きは良いそうです。また、メーカーの近藤乳業のアンケートでは、「およそ8割の人が、お腹が痛くなることはなかった」と回答した結果も出てるそうです。

お腹が痛くなりにくい!専用飼育「A2牛乳」とは?

味や見た目は、普通の牛乳と変わりません

では、何が違うのか?
牛乳に含まれる、遺伝子の「型」が違うそうです。牛乳を飲むとお腹が痛くなる原因のひとつに、「ベータカゼイン」というタンパク質が関係していると言われているそうです。そして、ベータカゼインには、消化不良になりやすい「A1型」と、なりにくい「A2型」の、2タイプにわけられます。「A2牛乳」というのは、「A2型」のベータカゼインを含む牛乳のこと。メーカーの近藤乳業では、一頭一頭、遺伝子検査をして、A2の牛だけを集めて飼育しているということでした。

A2牛乳を使ったヨーグルト

さらに、最近ではヨーグルトにも、A2ミルクを使ったものが出てきているようです。続いて、「カネカ」の乳製品開発担当、天川 隼人さんに伺いました。

「カネカ」 乳製品開発担当 天川 隼人さん

今回、発売します「ビュアナチュール・オーガニックヨーグルト」というものに関しては、国内でおそらく初めてになると思うんですけれども、有機(オーガニック)であることと、「A2ミルク」というのを原料として使っているヨーグルトになります。北海道の別海町という、ちょうど地図でいうと右端ぐらいのところに、別海町という町があるんですが、そこで牧場やってまして、そこにいる牛は全てA2の遺伝子を持った牛になります。一頭一頭、遺伝子検査をしまして、「A2の牛さん」だということがわかってから飼育するようにしています。ミルクのコクっていうんですかね、を感じていただける味わいだったりとか、少し重ための「もた~」とした食感になりますので、ミルクの美味しさを味わっていただきやすい。お子様も安心して召し上がっていただけるようになったとか、いうお声は結構たくさんいただいてますね。

お腹が痛くなりにくい!専用飼育「A2牛乳」とは?

ピュアナチュール オーガニックヨーグルト(カネカ)。税込み267円(10月5日現在)

お腹が痛くなりにくい!専用飼育「A2牛乳」とは?

A2ミルク自体は、通常のミルクと味は変わらず、色も同じ。ただ、こちらのヨーグルトは生乳を95%以上使っているので、「ミルクのコクが感じられる」そうです。

こちらも、お腹がゴロゴロしにくいと言われているA2ミルクから作った、ヨーグルト、「ピュアナチュール・オーガニックヨーグルト」。価格は、100グラムの個食タイプが、税込み267円。やはり、ちょっと割高ですが、酪農では珍しい「放し飼い」の形で育てていることと、一頭一頭検査して、120頭のA2ミルクの牛を飼育しているのが、ポイント。

A2牛乳の普及は時間がかかりそう

牛乳が苦手という人は少なくないので、「A2牛乳」がもっと普及してほしいなと思ったんですが、普及に至るには時間がかかるようです。「動物遺伝学」が専門の東京農業大学の教授、庫本 高志さんに伺いました。

東京農業大学・教授 庫本 高志さん(動物遺伝学)

今現在の乳牛っていうのは、4割ぐらいが「A2」で、残りは「A1」が混じってますから、それを100に近づけていくっていうのが、一部の牧場さんが、やり始めてるわけですね。そうすると、日本全体の牛を全部やろうと思えば、結構大変。だって妊娠しないと、子ども産まないとおっぱい出ないから。そうすると2年とかかけてようやく子供を産んで、おっぱいが出てきて、ミルクとして絞って。それでまた1年おきぐらいに次の妊娠に入っていくわけですけれども、一つの世代、5~6年、時間がかかりますので、それを切り替えるには結構時間かかりますよね。工場の一つのタンクに集まって製品となって出ていきますから、そこからA2だけのラインを作るのは、なかなか大規模には難しい。普及は、もう少し時間がかかっちゃうのかなと思います。

お腹が痛くなりにくい!専用飼育「A2牛乳」とは?

イメージ
日本の酪農の現場では、「A1」と「A2」の牛が混在している状況。A2の数を増やしていくには、今後、一頭一頭、遺伝子検査を行って、「A2」とわかったら隔離して、別の集団を作らないといけないため、入れ替えにはかなり時間がかかるそうです。国内ではまずは比較的 小規模な酪農家から、A2牛乳の生産を始めているようですが、アメリカやオーストラリアなどの海外では、スーパーにA2牛乳の棚があるぐらい一般化しているそうです。

飼料の高騰や、消費の低迷で、多くの酪農家が「牛乳を飲んで下さい」とピンチの状況もありましたが、新しい付加価値として、今後時間をかけて広がっていくかもしれません。

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