“ママ”で“タレント”と言うと、2003年に出産した竹内結子さんや2004年に出産し二人の女の子の母でもある松嶋菜々子さんなど女優陣もそうですが、一般的に彼女たちを「ママタレント」と言う事はありません。現在「ママタレント」の代表格といえば、2007年に出産した辻希美さんや、2012年に出産した木下優樹菜さんなどのイメージが強いのではないでしょうか?
彼女たちの共通点は「ブログで子育ての話題」を出すことでそのブログが話題となり、そこから注目を集め、更にテレビ出演などが多くなっている点です。ブログに限らず、「子育て中である」ことを前面に出している女性タレントを「ママタレント」と呼ぶことが多いようです。
■ママタレントのレジェンド?では、いつから「ママタレント」が出てきたのでしょうか。戦前は女性が仕事をするときは背中に赤子をおぶったまま・・・などという光景もみられたそうですが、戦後高度成長期から「仕事は男のもの」という意識が強くなり、子連れでの仕事はあり得なくなりました。ママさんたちは祖父母やシッターなどを頼りながら、「仕事先に迷惑をかけないように」仕事を「させてもらう」のが常識になったのです。
しかし、1987年、歌手のアグネスチャンさんが「子連れでいいから復帰してほしい」と懇願され、子連れ同伴で現場入りし、結果タブーを破りました。「大人の世界に子供を入れるな」、「周囲の迷惑を考えていない」、「プロとして甘えている」という批判が続出し『アグネス論争』が起き、国会にまで参考人召喚されるまでの騒ぎに。更にはアメリカでも話題になり、スタンフォード大学の教授からの直々の招待でアグネスさんは渡米し、「男女間格差」「女性と育児」などの研究者として博士号をとるまでになります。
■80年代アイドルのママドル化アグネス論争後に法が整備され、女性の社会復帰、保育所の増加など、子育てしやすい環境が整うことで、ママタレントは勢いづきます。子ども服ブランドをいち早く立ち上げ、「ママ色」を出していた松田聖子さんをはじめ、松本伊代さんや早見優さん、堀ちえみさんなど、80年代を代表するアイドル達も『キューティー★マミー』として、ママでありながらアイドル活動も始めます。ユニット自体は短期的なものでしたが、話題性は高く、「ママだけどアイドル」というスタイルが受け入れられる時代になってきました。
■親しみやすさが共感へ!「アイドル卒業後はママドルへ」が一般化「アイドルはトイレにいかない」と言われるほど、アイドルの偶像化が激しい時代もありました。しかし、現在は「今日ノーブラ」「便秘で大変」と公言するほどフランクで親しみやすいアイドルも増えてきました。交際結婚も隠すことがなく、結婚も若年のうちにすることも。
さらに、より「親しみやすさ」を感じたいファンがブログをチェックするようになりました。親と言うものは、子どもの話を誰かにしたいもの。ブログの更新回数も増え、更新回数の多い「ママタレント」のブログは必然的に人気ブログになり、さらに注目されるというサイクルが出来上がってきます。
二度目の結婚でママとなった辺見えみりさんや、グラビアアイドルの小倉優子さん、芸人「クワバタオハラ」のくわばたりえさんなども、出産後にブログのアクセス数が格段に増え、テレビの露出も増えています。二人のお子さんがタレント活動をしている北斗晶さんなども、歯に衣着せぬ発言で「親しみやすさ」が人気です。
■炎上してもへこたれない精神力子育て中の一般ママさんは毎日ご飯を作り、掃除をし、子どもを育てています。同じくブログやテレビで活躍するママタレントに時には共感し、時にはあこがれます。しかしあこがれるということは、逆にコンプレックスもあるということです。母親はストレスもたまりやすいので、「同じママなのにこうも違う」と感じてしまい、やっかんでしまうことも。
「叩く理由」を見つけると不必要に攻撃をする人も多く、心が折れてブログを閉じてきた芸能人も少なくありません。しかし、多少の炎上ごときで閉鎖するような弱い人間にママタレはつとまりません。謝罪すべき時は謝罪し、戦うときは戦い、結果的にアクセス数をさらに稼ぐ「強い母」であるママタレだけが生き残っているのかもしれません。
■デザイナーとして家族を支える強さと美しさ「強い母」は「稼げる母」でもあります。千秋さん、辺見えみりさん、MEGUMIさん、神田うのさんなどは、“デザイナー”として活躍しています。
「夫を支えている」「家計を支えている」、「炎上にまけない」など、人気のママタレには「強さ」があります。出産高齢化時代をすぎ、早めの出産や、産後の社会復帰を推奨する政府政策に合致している点もママタレントの追い風になっているようです。より強く、より輝きたいという女性たちの気持ちをそのまま反映しているママタレ。これからも光り続けてほしいですね。
文/藤原ゆうこ
参考文献/林真理子著『余計なこと、大事なこと』文藝