世界中で無くなることのないストーカー被害は警察のサポートが重要となってくるが、このほどイギリスのドキュメンタリー番組で5年前に元交際相手に殺害された女性について放送された。この女性はストーカー被害を受けている最中に何度も警察に助けを求めていたという。
『Mirror』『SussexLive』などが報じている。

イギリスで現地時間21日に放送されたドキュメンタリー番組『Sky Documentaries』で、2016年に当時19歳だったシャナ・グリスさん(Shana Grice)が元交際相手の男に殺害された事件が人々の関心を集めた。

イースト・サセックスに住んでいたシャナさんは、当時27歳のマイケル・レーン(Michael Lane)から数か月にも及ぶストーカー行為の末に殺害されてしまった。シャナさんはストーカー被害から逃れるためにサセックス警察に5回も助けを求めていたことが同番組によって明らかになった。

事件の発端は、シャナさんが18歳の時に交際していた男性アシュリー・クックさんと別れた後、同僚であるマイケルと交際したことから始まった。シャナさんはマイケルと2~3か月ほど交際を続けたが、マイケルは気性が荒くシャナさんに対して独占欲が強すぎたため、彼女は別れを切り出したそうだ。
しかしマイケルは別れることを強く拒んだという。

その後、シャナさんはアシュリーさんと寄りを戻したが、それでもマイケルは彼女の誕生日にメッセージと花を贈ったり、シャナさんの車に追跡装置を勝手に設置したりするなどした。また年明けにはアシュリーさんの車を破壊したうえに「ハッピー・ニューイヤー、シャナは君を騙していつも浮気している」とメモを残していた。

怖くなったシャナさんは2016年2月に警察に通報したところ、警察はマイケルに「シャナさんに近づかないように」と警告しただけだったそうだ。その1か月後、ルームメイトと一緒に住むシャナさんの自宅にマイケルが突然やって来て、シャナさんの髪を引っ張るなどの暴行を加え出したという。

シャナさんはやっとの思いでアシュリーさんの自宅に逃げ込み、警察に通報することができた。
この時対応したサセックス警察のトレヴァー・ゴッドフリー警部(Trevor Godfrey)に事情を聞かれたシャナさんは、アシュリーさんがいたことからマイケルと以前交際していたことは話せなかったようだ。

しかしゴッドフリー警部はマイケルにも事情聴取しており、2人が以前交際していたことを知った。そして警察はシャナさんに「嘘の供述で警察の時間を無駄にした」という理由で90ポンド(約1万3500円)の罰金を科した。しかもシャナさんの訴えを無視し、男女の「痴話喧嘩」として片付けてしまったのだ。

そして同年7月、マイケルはシャナさんから盗んだ鍵で彼女が眠っているのを見計らって自宅に忍び込んだ。この時シャナさんはまだ眠っておらず、恐怖におののきながら布団の中で身を潜めていたそうだ。
その後もマイケルからと思われる不審な電話がかかってくるため、恐ろしくなったシャナさんは再び警察に助けを求めたが「特に危険な状態ではない」と判断され、なんの対応もしてもらえなかったという。

また2日後には「マイケルに後をつけられている」と警察に助けを求めたが、これ以上の措置を取ることはないといった内容が書かれた通知が届いただけだった。そして同年の8月25日、シャナさんはナイフを持って自宅に現れたマイケルに命を奪われてしまった。

マイケルはシャナさんを殺害した数時間後に逮捕され、2017年3月には殺人罪で有罪となり懲役25年の刑が下された。


シャナさんの母親であるシャロン・グリスさん(Sharon Grice)は、声明で「もし警察がシャナの不安を聞き入れ真剣に受け止めていてくれたならば、殺害されることは防げたはず」と述べた。

またシャナさん側の弁護士であるカースティ・ブリメロウ氏(Kirsty Brimelow)も「シャナさん殺害の事件はサセックス警察の多くの警察官の誤った判断によって起こった殺人です。
彼らにはシャナさんを守る義務があったはずです」と語っている。

その後、サセックス警察はシャロンさんに謝罪し、事件に関わった警察官のうち2人に不手際があったとして有罪が下されている。

ちなみに英メディア『The Sun』によると、イギリスでは過去10年間で殺害された2075人の女性のうち57パーセントが顔見知りの犯行で、主に恋人や夫、または元交際相手によって殺害されるケースが多いという。

画像は『Mirror 2021年3月23日付「Teenager was fined for reporting stalker to police five times before he murdered her」(Image: PA)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)