今年に入り“容姿をイジるネタ”を良しとしない意見が、お笑い芸人からも出てきている。特に話題となったのがお笑いトリオ・3時のヒロインの福田麻貴が今年4月、ツイッターで「私達は容姿に言及するネタを捨てることにしました!」と宣言したことだ。
福田は後日、出演した『ワイドナショー』(フジテレビ系)で「容姿をイジるネタは、劇場でもどんどんウケなくなっている」と説明していたが、この流れはバラエティ番組を制作する側にも多大な影響を与えているようだ。

14日深夜放送の『あちこちオードリー』(テレビ東京)に、成29年目になるお笑いコンビ・オアシズが登場した。女性芸人のパイオニア的存在だと紹介されたが、2人がコンビを結成した1990年代のバラエティ番組は容姿いじりが当たり前の時代だった。

光浦靖子は大学進学を機に上京したが、初めて観たお笑いの舞台で衝撃を受けたという。フリートークでは“貧乏”“頭が悪い”“ルックスが悪い”人たちが一番スポットライトを浴びて、ステージでヒーローになっている。一般の世界ではバカにされることが一番輝いているのだ。
「なんて、いい世界だ!」と感動し、飛び込んだお笑いの世界。「だからコントのブス役も全然平気だったよ」と光浦は若かりし頃を振り返っていた。

若手芸人のネタ見せ番組『新しい波』(1992~1993年)にオアシズはコンビで出演していたが、同番組から選抜された芸人が起用されたバラエティ番組『とぶくすり-Hi[gh]-YAKU-』(1993年)には光浦しか出演できなかった。女性が出演するコントの題材は当時、合コンやナンパを題材にするものがほとんどだったため美人枠とブス枠それぞれ1名いれば十分で、「私と大久保さん、ブス枠に2人もいらなかったのかな」と光浦は話す。

「ババァ」「ブス」など一昔前まで当たり前のように女芸人らに浴びせられていた言葉を、今は深夜放送のバラエティ番組でもほとんど聞いたことがない。「なぜダメなんだろう」「言う方が悪者になっちゃうのかな」とオアシズの2人は寂しそうだが、MCの若林正恭が「現場で、もうウケないんですよ」と明かした。
スタッフが“今の大丈夫か?”とヒヤッとした空気になっているのが、手にとるように分かるのだという。「(容姿いじりを)言いたいタイミングがあるんですよ、合意の上で良いプロレスになる時があるから」との若林の意見に、うんうんと頷く光浦靖子と大久保佳代子。しかし“白い悪魔”、“日本一心のない司会者”と呼ばれたあの東野幸治でさえ、先日のラジオ番組で「人の容姿をネタにしていじるのも、やめようと思っている」と話していた。バラエティ番組の“容姿いじり”をタブー視する風潮は、これからますます高まっていきそうだ。

(TechinsightJapan編集部 みやび)