ヘンリー王子がエルトン・ジョンなどの著名人とともに、英紙『Daily Mail』の発行元「Associated Newspapers Limited (ANL)」を提訴した。裁判所に提出された文書では、同社が個人情報を得るために盗聴器を仕掛けたり、警察官に報酬を支払って情報提供を求めるなどの違法行為を行っていたと主張している。


現地時間6日、ヘンリー王子をはじめとする複数の著名人が英紙『Daily Mail』『Mail on Sunday』『Mail Online』の発行元「Associated Newspapers Limited(以下、ANL)」に対して「プライバシー侵害」を訴える法的措置を開始した。

ヘンリー王子とメーガン妃は数年にわたり、過剰報道を続ける英メディアとのバトルを繰り広げている。夫妻は2020年に『Daily Mail』を含む英国の主要4紙に対し「今後一切協力しない」と宣言。その翌年にはメーガン妃が、実父に宛てた個人的な手紙を無断掲載した英紙『Mail on Sunday』に対する訴訟で勝訴。今年2月には王子が、「ANL」を名誉棄損で提訴している

そして今回はヘンリー王子に加え、歌手エルトン・ジョンとその夫で映画制作者のデヴィッド・ファーニッシュ女優エリザベス・ハーレイ、女優サディ・フロスト、そしてドリーン・ローレンス男爵夫人が同社を提訴したのである。



社会活動家のドリーン・ローレンス男爵夫人は、1993年にロンドン南東部で人種差別により殺害された英黒人青年、スティーブン・ローレンスさん(当時18歳)の母親だ。事件後『Daily Mail』は、スティーブンさんを殺害した犯人を裁くキャンペーンを主導。犯人とみられる5人の写真を掲載し、「この男達を殺人犯として告発する。もし違うなら彼らに我々を訴えさせろ」と記した。2012年にはこのうち2人が殺人罪で有罪になった。

しかし同紙はこのようなキャンペーンで被害者家族を支持する以前に、違法な手段を用いてドリーン・ローレンス男爵夫人の家族や友人についての情報を集めていたことから提訴されたとみられる。


今回、ヘンリー王子とサディ・フロストの代理を務める法律事務所「Hamlins」は声明文を発表し、訴えを申し出た著名人達が「忌まわしい犯罪行為とプライバシーの重大な侵害の犠牲者」であり、これらを証明する確固たる証拠があると述べた。

そして「ANL」が以下のような違法行為に関与したと主張した。

●私立探偵を雇い、車や家の中に盗聴器を密かに設置すること。
●私立探偵に依頼し、生電話の内容を密かに盗聴、録音すること。
●私立探偵と不正な繋がりがあるとみられる警察職員に、機密性の高い内部情報を提供するための金銭を支払うこと。
●個人を装い、私立病院、診療所、治療センターから医療情報を不正に入手すること。

●不正な手段や操作により、銀行口座、クレジット歴、金融取引にアクセスすること。

これらの違法行為が、ドリーン・ローレンス男爵夫人の家族や友人についての情報収集にも行われていたとみられている。

法律事務所「Hamlins」はさらに「上記の犯罪容疑は氷山の一角である。他にも多くの無実の人々が、同様の恐ろしく非難されるべき秘密行為の知られざる犠牲者であることは明白だ」と加えた。

これを受け「ANL」の広報担当者が声明文を発表、「とんでもない中傷だ」と強く反論し、こう述べた。

「これらは、およそ30年前に起きた盗聴スキャンダルに『Mail』の名前を引きずり込もうとする、計画された組織的な試み以外の何ものでもない。
このように非常に中傷的な主張は、信頼できる証拠に基づくものではなく、単に探りを入れているだけである。」

画像は『The Duke and Duchess of Sussex 2019年12月9日付Instagram「Spotlight on: Endeavour Fund」』『The Royal Family 2019年7月15日付Instagram「The Duke & Duchess of Sussex have attended the European Premiere of The Lion King film.」』『dmuleicester 2017年7月26日付Twitter「Tyerone overcomes challenging childhood to win Freshfields Stephen Lawrence Scholarship」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 寺前郁美)