累計30万部を超える平野啓一郎著のベストセラー小説『ある男』を映画化した同作。昨年の1月、2月に撮影したが、妻夫木聡は「もうちょっとで(撮影から)2年経つんだなと思うと、時が経つのは速い。いろんな映画祭を経てきているので、まだ公開されていなかったのか…というのが正直な気持ちで、ようやく皆さんのところに届けられるのがシンプルに嬉しい」と会場の大勢の観客の前で喜びを噛み締めた。同作は第79回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門へ出品に続き、第27回釜山映画祭のクロージング作品にも選ばれ、海外で高い評価を得ている。
妻夫木は“ある男”の正体を追う主人公の弁護士・城戸を演じ、その城戸に亡き夫の身元調査を依頼する里枝役に安藤サクラ、里枝の亡くなった夫で「大祐」として生きた“ある男”には窪田正孝が扮するが、妻夫木が特に印象に残ったのは過去の事件を知る小見浦憲男役の柄本明とのシーンだったという。
柄本は「すみません、本当に。僕、本当に失礼なんですけど、(今日会って)監督さんが誰だか分からなかったんですよね。お辞儀をしてくださるので僕もお辞儀を返すんだけど、どなただったかな、原作者の方かなと思ったりして」と告白するも、「ひとつ記憶にあるのは、とにかくブッキー(妻夫木)と会ったのは覚えてる」と続けたので、妻夫木は「良かったです、そこは覚えていてくださって」と笑いながらも安堵した。「本当にすみません」と謝る柄本に「いやあ、もう本当に最高ですね。
また同作のストーリーに絡めて「もし別人になれるなら誰になりたいか?」と質問がなされると、窪田正孝は「妻夫木さん」と回答。撮影以外に「共通の趣味でボクシングを一緒にやらせてもらって、ヴェネチアや釜山にも一緒に行かせてもらいましたが、“学びをやめない人”、“すごく周りに人がいる人”という印象があります」と窪田。
「ボクシングもすごくいろいろな人とやられるんですよ。僕はその精神力がないから『プロの方と軽くスパーリングした』と言っていて、どういう精神力なんだろう? トライする気持ち、進み続ける歩み方にリスペクトがある」と窪田が続けると、妻夫木は「僕自身、好きなことをやっているだけなんですけど。ボクシングもこの映画がきっかけで始めたんですけど、柄本佑くんとよく一緒にやっているんですけど、佑と僕だけボクシングの役が決まっていなくて。何を目指してるんだろう…と言いながら楽しんでやっています」と説明。
妻夫木とボクシング仲間である俳優・柄本佑の妻であり、佑の父である柄本明は義父にあたる安藤サクラは「最近はあまりにも妻夫木さんの周りに私の親戚がプライベートでも登場するので、(妻夫木は)なんだか親戚みたいな気分になりつつあります」とコメント。釜山映画祭には安藤も妻夫木、窪田、石川監督とともに登場したが「私はどの監督ともあまりおしゃべりできないのですが、映画祭ではご飯を一緒に食べて、やっとチームみたいな気持ちになれました。今すごい私たち仲良しなんです」と微笑んだ。
(TechinsightJapan編集部 関原りあん)