ヘンリー王子が回顧録を発売することに先立ち、英国と米国のTV司会者からのインタビューに応じた。両局は来週放送予定となる番組のトレイラー(予告編)を公開し、インタビューの一部を明らかにした。映像では、王子が家族との確執について「父と兄を取り戻したい」と語ったり、王室とメディアの関係を批判する場面などが映し出されている。

ヘンリー王子の回顧録『Spare』が今月10日に発売されることを受けて現地時間8日、英国と米国で王子へのインタビュー特別番組が放送されることになった。

英国ではITVの配信サービスITVXで『Harry: The Interview』と題した特別番組で配信し、米国ではCBSの番組『60 Minutes』で放送するほかパラマウント+(プラス)でも配信される。

今回のインタビューは、ヘンリー王子が生活する米カリフォルニア州で英ITV放送のトム・ブラッドビー氏と米CBSニュースのアンダーソン・クーパー氏によって行われた。

番組の放送に先駆け、ITVとCBSはそれぞれの番組のトレイラーを公開。王子が語ったインタビューの内容の一部を明らかにしたのである。

ITVが公開した20秒のトレイラーは、ヘンリー王子が父・チャールズ国王や兄・ウィリアム皇太子との確執について語る場面を取り上げたものだ。

ヘンリー王子は2020年に王室離脱後、妻・メーガン妃や息子・アーチー君とともに米国に移住。その後、父や兄との不仲説が報じられ、今後も修復は不可能だと言われている。

映像では王子が「こんな風になる必要はなかった」と言い、「リークやねつ造があった」と述べた後、王室に対する不満をこのように話す場面が映される。

「僕が欲しいのは組織ではなく、家族なんだ。彼らは、僕達を悪者としてキープしておいた方が良いと感じているようだ。」

そして「彼らは和解しようとする意思を全く示さない。僕は父のことを取り戻したい。兄を返して欲しいんだ」と話している。


一方、米CBSが公開した58秒のトレイラーは、ヘンリー王子が王室について「家族のモットーは『絶対に文句を言わない、説明しない』だが、これはあくまでモットーだ」と語る場面が登場する。

そしてクーパー氏が「多くの文句と説明がリークされていますね」と言うと、王子が王室職員とメディアの関係について、こう説明している。

「彼らは記者にネタを与えたり、会話をする。そうして記者達は直接入手したネタを元に記事を書くんだ。文章の最後には、(記者側が)バッキンガム宮殿にコメントを『求めた』と加えてある。だがこういったストーリーはすべて、宮殿側が(自発的に)コメントしたことなんだ。」

この後には「僕達はこの6年間、『あなたを守るための声明は出せない』と言われてきた。だけど、僕達以外の(王室)メンバーのためにはやれるんだ」と王室に対する怒りを語っている。

ヘンリー王子は先月にNetflixで配信されたドキュメンタリー番組『ハリー&メーガン』で、メディアによるメーガン妃への攻撃が王室職員によって仕組まれたことを示唆するなど、王室に対する不満を吐露していた。

英ITVは今回のインタビューについて「ヘンリー王子の王室内外での生活について、前例のない深さと詳細に踏み込んだものとなるでしょう」と、さらに深く追求した内容であることを示唆している。

英メディア『Daily Mail Online』によると、インタビューが撮影されたのはカリフォルニア州モンテシートにある高級リゾートホテル「サン・イシドロ・ランチ(San Ysidro Ranch)」とみられている。昨年10月に米誌『Variety』が掲載したメーガン妃のインタビューと写真撮影は、同ホテルで行われたものだ。

今回のトレイラーで注目すべき点は、ヘンリー王子の発言の中に度々登場する「彼ら」という存在だ。ヘンリー王子が言う「彼ら」とは英王室そのものであり、さらに具体的に言えば、英王室存続のためならどのような手段も厭わない人々のことを示唆している。2021年3月に行われたオプラ・ウィンフリーとのインタビューでヘンリー王子が、父・チャールズ皇太子(当時)と兄・ウィリアム王子(当時)について「父と兄は王室に囚われている。彼らはそこから逃れることはできない」と発言していることからも、ヘンリー王子が真の敵と見定めているのが「彼ら」=「英王室そのもの」であることは明白だ。これを裏付けるかのようにオプラとのインタビュー放送後、即座に「王室関係者」を名乗る人物が英紙『The Sunday Times』に「ウィリアム王子は自らの責務を理解し、受け入れている。エリザベス女王の孫として、国に奉仕する義務を重んじている」とコメントを発表している。

ここにヘンリー王子とウィリアム皇太子が決定的に相容れない原因がある。父や兄は王族である前に家族であると考えるヘンリー王子。王族とは私や個を捨て、国と国民のために存在すると考えるウィリアム皇太子。帝王学をエリザベス女王から直々に学んだウィリアム皇太子と、それを受けることがなかったヘンリー王子の間に生まれた隔たりは大きい。

ヘンリー王子は自らの回顧録を『Spare』と名付けたが、ヘンリー王子はウィリアム皇太子の代わりはもちろんのこと、ウィリアム皇太子の負担を軽くすることもできない。当初、自虐的な思いや王室への非難も込めて回顧録のタイトルを『Spare』としたと言われるヘンリー王子であったが、実際にはその『Spare』としての役割すら理解できていないことが皮肉にも今回のインタビューで露呈してしまった。



画像は『60 Minutes 2023年1月2日付Instagram「Prince Harry tells」』『ITV 2023年1月2日付Twitter「Harry: The Interview, an exclusive in-depth discussion with Tom Bradby.」』『60 Minutes 2023年1月2日付Twitter「Prince Harry tells」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 寺前郁美)