オーストラリア西オーストラリア州のビーチで9日、浅瀬に迷いこんだクジラを触る海水浴客の姿が捉えられ、「あれだけ岸に近づいたクジラは弱っているに違いない」「これはクジラに対するハラスメント」といったコメントが相次いだ。当時の動画とともに、豪ニュースメディア『Australian Broadcasting Corporation』などが伝えた。


豪パース近郊のレイトン・ビーチで9日、マッコウクジラとみられる個体が浅瀬に迷いこんだ。当時の様子はドローンが捉えており、海水浴客十数人がクジラに泳いで近付き、そのうちの数名が体に触れたり叩いたりする様子が映し出されていた。

これに対し、海洋生物学者のナタリー・シンクレア博士(Dr. Natalie Sinclair)は「クジラがこれほど岸に接近するのは非常に稀であり、危険なこと。座礁する恐れもあった」と指摘し、こう述べた。

「このような行為はクジラの方向感覚を失わせる危険がある。クジラにはちょっかいを出さず、救助はプロに任せることが最善だ。
クジラへの接近はその個体だけでなく、人々をも危険に晒す可能性がある。」


そして動画には、「こんな機会は一生に一度しかないだろう。クジラにとっても人間にとってもね」「危険よね」「クジラは弱って死にかけているのではないか? 人間は身勝手だと思う」「海洋生物に近づかないというのは常識」「これはひどい」「違法ではないの?」「このクジラは老齢で死ぬ場所を探しにきたのよ」「ハラスメントと同じよね」といったコメントが寄せられた。

幸いなことにこのクジラは、約1時間後に浅瀬を離れることができたようだが、その翌日、パース南に位置するロッキングハム・ビーチの沖合、50~70メートル付近にいるのが確認された。


2日間で2度も浅瀬に入り込んだこのクジラについて、「生物多様性・保全・アトラクション省(Department of Biodiversity, Conservation and Attractions、以下DBCA)」は、「個体は全長15メートル以上、体重30トン以上で、休息する場所を探していたのかもしれない」と明かし、同省スワン沿岸地区マネージャー、マーク・カグリーさん(Mark Cugley)は次のように語った。

「あの個体は今月10日、ボートと衝突した。それで危機を回避し、再び岸に近づいてきたのかもしれない。
ただ11日の朝には砂州の上にいるのが確認されていて、そこから移動できなければ安楽死させなければならないだろう。」

なおDBCAの科学コーディネーター、ケリー・ウェープルズ博士(Dr. Kelly Waples)は、「普段は海中にいるクジラが砂州の上にいるということは、30~35トンの体重が内臓を押し潰しているということ。これだけの圧がかかるということはとても悪い状況だ」と述べ、クジラがかなり弱っていることを指摘した。

さらにDBCAは、弱っているクジラを目当てにサメが寄ってくる可能性もあるとしてビーチを閉鎖して監視を続けており、11日午後には日焼けや水ぶくれを最小限に抑えるためにボートからホースを使ってクジラに水をかけ始めたそうだ。ただし、動物の福祉を最優先に考え、苦しみが続くようであれば安楽死させるという。


ちなみに「クジラ・イルカ保全協会(Whale and Dolphin Conservation)」によると、浅瀬に1頭でやって来るクジラの原因は老齢、病気、怪我、方向感覚を失ったことなどが挙げられるそうだ。



画像は『NEWS9 Live 2023年12月12日公開 YouTube「Super Exclusive: “Rare Encounter: Majestic Whale Joins Swimmers at Australian Beach!”」』のサムネイル、『Australian Broadcasting Corporation 2023年12月11日付「Sperm whale stranding in Rockingham brings crowd to beach as authorities consider euthanising animal」(Supplied)(Supplied: DBCA)(ABC News: Nicolas Perpitch)』『Texas Marine Mammal Stranding Network 2022年4月13日付Facebook「The dolphin in these photos stranded alive on Quintana Beach,」』『TMZ 2023年8月24日付「BABY DOLPHIN FOUND DEAD After It Was Used For Instagram Photo-Op」(WJXT)』『Saken Dildakhmet 2020年7月8日付Instagram「За жестокое обращение с тюленем люди будут привлечены к ответственности」』『RSPCA Frontline 2021年10月26日付X「#GreatYarmouth more thoughtless humans approaching,」「Warning Graphic Footage」』『Coconuts Jakarta 2020年7月7日付「A Whale Lotta Love: North Sulawesi residents smother beached baby orca with hugs and kisses」(Facebook/Meiva Pontoh)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 A.C.)