過去1勝3敗のベンチッチに逆転勝利した大坂なおみ

現地3月31日、「マイアミ・オープン」(アメリカ・マイアミ/WTA1000)シングルス準決勝、大坂なおみ(フリー/世界ランク77位)は、東京オリンピック金メダリストで第22シードのベリンダ・ベンチッチ(スイス/同28位)に 4-6、6-3、6-4の逆転勝利。昨年2月の全豪オープン以来となる決勝進出を決めた。
記者会見では、「自分を奮い立たせることができた」と語っている。

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同じ1997年生まれの大坂とベンチッチ。過去の対戦成績では大坂の1勝3敗で、2019年シーズンに3大会で対戦しており、3連敗を喫している。2019年USオープン以来、約3年1ヵ月ぶりとなった今回の対戦は、第1セットは2ブレークを先に奪われて4-6で落としたものの、第2セット、第3セットと勝負どころで好プレーを繰り出して逆転勝利。第3セットでは、ファーストサーブを70%と高い確率で入れて、87%ポイントを奪取している。

(今大会で)「初めての3セットマッチというのは、ちょっと驚きです」と正直な思いを語った大坂。第1セットを落としたものの、「『これは、自分がどれだけ成長したかを見せるいいチャンスだ』と思っていました」と告白。同じ失敗を繰り返さないようにベストを尽くしたと語っている。

以下が、会見での大坂の一問一答である。

Q.意味のある勝利でしたね。

「プロフェッショナルな答え。正直なところ、今考えているのは、韓国料理のウーバーイーツをどうやって家まで持ってくるか、です(笑) もちろん、勝利についてはとてもうれしいです。
今日はタフな試合になると思っていたので、乗り切ることができてよかったです。最初のサーブがうまくいかなかったので、2回目からはうまくいってよかったです」

今大会初の3セットは“ちょっと驚き” 「ただ、選手としての自分には自信があります」

Q. コート上では見えないところでいろいろなことが起こっているように思います。テレビでも「自分の考えに圧倒されないようにする」とおっしゃっていました。それは、どのようなものですか? 

「正直、考えてはいたんですけど、全仏で何も言わなければ、誰も私のことをわからなかったと思うんです。今に始まったことではなくて、何年も前からのことだし。ただ、あの時は、あのことを話そうと思っただけなのです。多くの人から“戻ってきたね”と言われますが。自分としてはここを去った実感はないのです。ただ、試合に出なかっただけという感じです。早々に敗退したこともありましたが、ずっといい試合をしてきました。テニスを見ない人たちは、私が上位ランクにいないから、そう考えるのは理解できます。ただ、私と1回戦で対戦したいと思うような選手は、世界中にいないとも思っています。


テニスチャンネルに出演した際に、“自分の考えに圧倒されることがある”と言ったのは、決勝が久しぶりで、こういう大きな大会で久しぶりだから。ちょっと先のことを考えすぎてしまったんですね。だから、ファーストのサービスゲームでは、負けてしまった。でも、そうですね、いい状態に戻れればという感じです」

Q. そのテレビでは、インディアンウェルズ大会のあとリセットするともおっしゃっていました。それは、どのようなものですか? また今回の好調ぶりは驚きですか?

「イエスでもありノーでもありますね。あの後(インディアンウェルズ大会後)、セラピストと話をしました。彼女と話して、本当に救われるような気がしました。違う視点から物事を見る手助けをしてくれました。何を言ったかは言いませんが、私は自分で何でもやりたいタイプで、人に負担をかけるのが嫌なんです。
(好調について)そうですね、こんなに早くまとまったのは驚きです。ずっとマイアミでうまくやりたいと思っていました。(今大会で)初めての3セットマッチというのは、ちょっと驚きです。
ただ、選手としての自分には自信があります」

チャンスをチャンスと捉えられ、「自分を奮い立たせることができたんです」

Q. 第1セットは1-4となって落として、それから3セットでの勝利。各ショットは良かったように思いますが、スイッチが入った感じですか?

「今日については、スイッチが入ったとは思っていません。なんというべきか、わからないですね。彼女は本当にいいプレーをしました。第2セットでは、『いいか?もし負けたら、誰かが担架でコートの外に運ばなければならないぞ』と自分に言いました。私は、チャンスに恵まれていたけど、チャンスと捉えることができなかったんだと思います。だから、自分を奮い立たせることができたんです。

正直なところ、こういうタフな試合で良かったと思います。なぜなら、学ぶための経験は必要だと思うからです。今日、たくさんのことを学びました。彼女のバックハンドのリターンはとても良かったです。映像を見たくなりました」

Q. 冒頭で食事について語っていましたね。
そういうのは今夜だけですか? それとマイアミという土地についてはいかがですか? 


「正直、ハイチ料理は南フロリダとニューヨークでしか食べられないような気がするので、ハイチ料理をたくさん食べています。でも今は、LAのカルビが食べたくてしょうがない(笑) なぜかわからないけど、ずっと頭の中にあります。
それとマイアミで何かするのは好きですし、出かけるのも好きです。ただ、新型コロナウイルスの問題もあるので、ほとんど家にいます。決勝に行ったのに病気で棄権というのは最悪の悪夢になってしまうので」

Q. 今日の最速サーブは、時速119マイル(約時速192km)でした。サーブについてはいかがですか?

「正直、もっと若い頃の方が強く打てたような気がします。当時は、掲示板を見ながら123、124、125(マイル)を打とうとしていました。でも今は、もっと冷静でエースならいいと。2マイル増えたところで、何も変わらないので。意識してハードなサーブをしようとかではないですね。自然とそうなっているだけです」

「この大会では自分を試したかったし、彼女はそのための最高の相手だった」

Q. 数日前に、ヘッドホンをしているけど、“何も聴いていない”と言っていましたね。なぜ、ヘッドホンをするのですか?

「人と関わりたくないときの言い訳になるからです(笑) 良いことではないと思いますが。
通路を歩いていて、知り合いが多いわけではないのですが、ついつい下を見がちで、前を向く時はヘッドホンをしていて、それが私のバリアーになっているんです。

ただ音楽を聴くこともありますよ。気分が落ち着くので。私のプレイリストには“Sad”というのがあります。ゆっくりしたメロディーの曲ばかりで、不機嫌とは言わないけど、音楽は私の気分にちょっとだけ影響すると思います」

Q. 「Sad」のプレイリストには何が入っていますか?

「ジュース・ワールドが多いですね。ウィム(フィセッテコーチ)も何曲か勧めてくれたものもあります。ジャミロクワイの『バーチャル・インサニティ』という曲が良くて。車の中でかけてくれて、本当にいいなって思いました」

Q. 第1セットのあと、目を閉じて深呼吸をしていました。その時、どんなことを考えてていたのでしょうか?

「何度も対戦している相手なので、こういう状況もあると思っていました。これまでは、そういう時にパニックになっていたので『これは、自分がどれだけ成長したかを見せるいいチャンスだ』と思っていました。同じ失敗を繰り返さないようにね。応援してくれている人たちがいて、試合を見に来てくれているのだから、少なくともベストを尽くさなければいけないと思っています」

Q. そして、試合に勝利したあと、タオルに顔をうずめていましたね。
あの数分は、どんな感情だったのでしょうか? 


「間違いなく幸せという感情です。準決勝は、大きな意味があったと思います。ウォーミングアップから、すごく緊張していて足がうまく動かなかったんです。この大会では自分を試したかったし、彼女はそのための最高の相手だったと思います。これまで彼女との対戦は、あまりいい思い出がなかったので。だから、ここで勝ち抜くことができて良かったです。安堵というより、幸せを感じていました」

「今日は “この試合に勝ちたい”と思って試合に臨めました」

Q. 決勝の相手となりそうな2人(イガ・シフォンテク/ポーランドとジェシカ・ペグラ/アメリカ)について、いかがでしょうか?(決勝はシフォンテクと対戦する)

「イガとは彼女最初に出てきた時にトロント(2019年大会に2-0で勝利)でプレーし、この子は本当に運動神経がいいんだな、と思ったのを覚えています。でも、ここまで来ると、本当にすごいと思います。とてもモチベーションも高いですし。

私が(2018年に)インディアンウェルズで優勝したときは、本当に死にそうでした。そして、すぐマイアミ大会の1回戦でセリーナ(ウイリアムズ)と対戦になってというのを思い出します。(インディアンウェルズで優勝した)彼女がまだマイアミで勝ち残っていて、もうすぐ1位になるというのをみると、ただただ信じられない気持ちですね。本当にすごいことです。WTAで力を発揮していると思います。

ペグラとはローマ(2021年、0-2で敗戦)で対戦したことがあります。彼女はすごい選手です。彼女については、怒ったところを見たことがない。それが一番クールだと思います。毎日献身的に頑張っている姿を見るのは、本当に素晴らしいことです。だから、私もみんなと一緒に試合を見ようと思っています」

Q.アシュリー・バーティ(オーストラリア)の引退はテニス界にとって悲しいことです。あなたにとっては良いことでしょうか? 今後の女子テニスについてどう思われますか?

「正直なところ、私にとってはあまりいいことだとは思えないというか、よくわからないというか。彼女は本当に尊敬すべき人、憧れの人という感じです。彼女のことを悪く言う人は誰もいないと言っていいくらいだし、本当に大好きです。選手たちはみんな、彼女のことを本当に愛していました。本当にクールなことだと思います。彼女は最も理想的なNo.1だと思います。毎週、毎週、安定していました。裏側で何が起こっているのかわからないから、そういうひたむきさが彼女を苦しめたんだろうなと思いますね。

でも、物事には理由があるものだと思うし、わからないですね。私たちはただ、前に向かって突き進むしかないのです。過去に起こったことについては、あまり多くを語ることはできません。でも、テニスにとっては悪いことだと思う。わからないけど、もっとうまくやれるといいなと思います」

Q.先ほど、以前はパニックになっていたという話がありましたね。

「彼女(ベンチッチ)に対してパニックになったのは、ウィムが言っていたようなことですが。これまで何度か対戦していて、どれも大事な場面だったような気がします。例えば、ディフェンディング・チャンピオンで迎えた2019年のUSオープン、インディアンウェルズがそうですね。この試合に勝たなければならない、と常に考えていたから、いつもトンネルの中にいるような、息苦しい気分になっていました。

今日は、“この試合に勝たなければならない”ではなく、“この試合に勝ちたい”と思って試合に臨めました。その意識改革はとても重要だと思います。いいプレーをしながら、試合に勝たなければいけないと考えるのは大変なことなのです。私はいつも何かを証明したいタイプで、それをずっと行うのは難しいんです。例えば、私のことを話すとしたら、サーブとフォアハンドが武器だと言うと思います。彼女のサービスリターンは本当にすばらしく、すぐにプレッシャーをかけられ、とても嫌な状況になります。それに彼女は初級からアグレッシブ。でも、彼女のボールはハードではないんです。スピードはあるけどハードではない。だから、フットワークもかなり調整しないといけないんです。彼女のようなプレーヤーは他にいないのです」

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