ストリングの生命は『伸縮性』!使わなくても性能寿命低下は進行する

 
テニスを始めるにあたって知っておいておくべきことがあります。それは「テニスは消耗品のスポーツ」であるということ。最初に道具を揃えれば、あとはそのままずっと使い続けることができるわけではありません。


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まず「ボール」ですが、缶を開けたときに「プシューッ」と音がするのは、ボール内に密封された1.8~2.0気圧くらいの圧縮ガスが逃げないようにするためで、使い始めた瞬間からボール内のガスは抜け、表面のフェルトは摩耗し、弾む力がどんどん低下します。プロの大会では「7・9・9・9…」ゲームのタイミングでニューボールに交換されます。

テニスシューズも、履いているうちにクッション性は低下し、靴底のラバーが擦り減って、グリップ性が悪くなります。プレーヤーのフットワーク次第で、「使えなくなるタイミング=寿命」は違いますが、ストリングの性能寿命は「使って短くなる」だけでなく、「使わなくても性能寿命低下は進行する」のです。
だから「張り替え」が必要なのですね。

■ストリングがボールを飛ばしてくれる仕組み!

あなたは「何の力がボールを飛ばしてくれる」とお考えですか? 
「スウィングするからだろ!」…もちろんそれが原動力ですが、それをサポートしくれるのがラケットです。ここで「ラケット」と言うのは「ラケットフレーム」+「ストリング」のことで、それぞれが「飛びのサポート」をしてくれます。

ラケットフレームは、フレーム自体の重さや、硬さやしなりによる反発機能を備え、スウィングの力をストリングに伝えます。ストリングは、ボールが当たった瞬間に「伸び」、それが「縮む」力で、ボールを押し返すように加速します。トランポリンを使うと、普通よりも高く飛び上がることができるのと同じですね。それを支えるのが「ストリングの伸縮性能」なのです。

そして最後に「ボール自体の弾力性」です。フェルトの下に隠されたゴム球自体の弾力と、その中に圧縮されたガスの弾力の効果によってボールは飛び出します。
ですから「スウィング」→「ラケットフレーム」→「ストリング」→「ボール」のそれぞれが持つ「反発機能」が組み合われて、あなたの打球は、相手コートまで飛んでいくのです。

■始めるときから知っておくべき「各タイプの寿命」

はじめてシリーズ「ストリング選び」#6~「あなたのストリングは生きていますか?」ストリングの生命は『伸縮性』!~


「テニスは消耗品のスポーツ」ですが、その中でいちばん「意識が薄い」のがストリングの交換です。「切れなければいつまでも使える」なんて妄想ですよ。

網状に張られストリングですが、ストリング1本1本に「伸びて→縮もうとする力」があり、それがストリングを直接的に飛ばすパワー源です。ただ、その「伸縮というパワー源」は、どんどん低下していきます。強い力でボールをシバキ倒せば、ストリングの「縮もうとする力」が消耗されますが、軽く返すテニスしかしなくても、フレームに張られているだけで、ストリングは「つねに25キロ前後の力」で引っ張られています。縮もうとする力は徐々に消耗し、飛びのパワー源となる「伸縮性」はどんどん失われていってるのです。

その伸縮性の消耗度ですが、ストリング素材のタイプによって違うということをしておきましょう。
天然素材であるナチュラルガットがもっとも伸縮性能寿命が長く、切れなければ半年以上も飛びパワーは生きています。
次にナイロン製ストリング。使い方によって人それぞれですが、もし1度も使わなくても「3か月くらい」で、伸縮性は絶え、張り替えが必要になります。「えぇーっ、1度も使ってないのにィ!?」と叫んでも、寿命は尽きてしまっていますから、諦めて張り替え、フレッシュな反発感で軽快なテニスを楽しみましょう!

いちばん性能寿命が短いのが「ポリエステル製ストリング」です。
先輩から「ポリなら切れないぞ!」という話を聞いて、「耐久性が高い」「経済的でイイね」と思ったら大間違い!

プロが「1セットごとに、バッグから新しいラケットを取り出す」のは、その段階で、彼らにとってオイシイ性能は尽きてしまうからです。ポリが自分の武器になってくれる性能寿命の短さを知る競技者ならば、かなり頻繁に張り替えます。

ポリエステル製ストリングの性能を引き出すことが困難な初級者ならば、ポリを張ること自体、薦めません!…が、たとえ「週に1回」のプレーでも、「ポリは1か月で寿命を迎える」と知っておきましょう。「切れないから経済的ぃ」とのは間違いです。生きたポリを使えるのは「1か月」と知っておいてくださいね。

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文=松尾高司
1960年 生まれ。『月刊テニスジャーナル』で 26年間、主にテニス道具の記事を担当。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。テニスアイテムを評価し記事などを書く、おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。
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