精巧なHOサイズの模型で来場者の目を引く横須賀鉄道模型同好会。高架の線路を快走するのは先ごろ利用客6000万人を達成した3代目「京成スカイライナー」(筆者撮影)

夏休みの鉄道イベントで頂点に立つ「国際鉄道模型コンベンション(JAM)」。

24回目の今回は2025年8月8日から3日間、東京都江東区の東京ビッグサイトで盛大に開かれました。

今年のテーマは「貨物列車」。国鉄改革で地域ごとに分かれたJR旅客会社に対し、JR貨物は全国一本。先頭の機関車が後続の貨車をけん引するフレートトレインは、まさに鉄道の原点といえるでしょう。

JAMは「模型」を掲げるものの、実物ファンも満足させるプログラムがいっぱい。会場のいたるところ、鉄道愛があふれました。

「大鉄のブルトレELが『富士』になった理由」「元祖撮り鉄のヒギンズさんとは?」鉄道模型の祭典「JAM」2025年イベントレポート【コラム】
テーマにあわせた貨物列車・貨車模型の展示コーナー(筆者撮影)

自慢の模型を思う存分走らせる

実行委員会方式のイベントで、実質主催者は東京都品川区の模型メーカー・井門コーポレーション。出展は愛好家(モデラー)約70団体、模型メーカー約50社。模型クラブや個人が、広大な会場で自慢の模型を存分に走らせるのがモデラー出展です。

メーカーが会場限定で売り出す、レアな模型目当てのファンも全国から訪れます。

呼びもののステージイベントは全部で9本。初日の「鉄道による地域創生」を取材しました。

即効で走行可能、価格もリーズナブル

「大鉄のブルトレELが『富士』になった理由」「元祖撮り鉄のヒギンズさんとは?」鉄道模型の祭典「JAM」2025年イベントレポート【コラム】
千葉、新潟、静岡と全国区で活躍する鳥塚大鉄社長。シン・ゴジラにあやかった(?)「シン・カナヤ」のTシャツで登壇しました(筆者撮影)

登壇者は大井川鐵道(大鉄)の鳥塚亮社長。

本サイトをご覧の皆さまには説明ご不要、千葉県のいすみ鉄道、新潟県のえちごトキめき鉄道の第三セクター2社のトップを務めた後、2024年6月から静岡県の大鉄に転じて鉄道再生や利用促進の旗を振ります。

鳥塚さんは、ご自身が熱心な鉄道ファン。いすみでは国鉄形気動車のキハ28とキハ52、トキ鉄では同じく国鉄形の455・413系電車をよみがえらせ、ファンの話題を集めました。

「世間では、鉄道オタクの社長が珍しい車両を復活させたといわれたが、それは大いなる誤解。JRや大手私鉄の〝中古車〟は車両不足を短時間で解消でき、購入費用も削減できます」と真相を明かします。

考えてみれば、昔も今も地方鉄道の多くは譲受車が主力を担ってきました。

ブルトレELは「オレンジ色のニクいやつ」

大鉄で直近の話題が、〝ブルトレけん引機バージョン〟にリニューアルされたEL(ED31 4)。鳥塚さんは社長就任前から旧西武、細目のELはブルトレ先頭のEF65に変身できると考えていたそうです。さすが。

ブルトレELのヘッドマークは2009年まで東京~大分を走っていた名特急「富士」ですが、その心は? ELのリニューアルを支援したのは産経新聞社。サンケイといえば……。ヒントは「オレンジ色のニクいやつ」。ご存じない方は、ぜひネット検索を。

ELに続く12系客車も、JR西日本から川根路入り。デビューを待ちきれないファンも数多いようです。

このほかのステージイベント、テーマにちなんだJR貨物の真貝康一会長の講演や、鉄道好き俳優&ミュージシャン・六角精児さんのトーク、月刊誌・鉄道模型趣味の名取紀之編集長らによる「TMS1000号を語る」など、いずれも充実した内容でした。

模型メンテナンスのプロ

ステージを離れて会場を一周。鉄道イベントではアウェーかも……という、クルマを巨大トンネル(洞くつ?)に見立て、Nゲージを走らせていたのが東京都府中市をベースに活動する「鉄道模型コミュニティー・模輪」。SUVはEV(電気自動車)、車載リチウムイオン電池が動力源です。

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SUV+Nゲージの「鉄道模型コミュニティー・模輪」。メンテナンスでは線路を磨く紙やすりの番数(目の細かさ)にもこだわります(筆者撮影)

模輪のリーダー・中川三郎さん、副業で鉄道ジオラマや車両のメンテナンスを請け負います。「半ばボランティアですが、おかげさまで全国から依頼が寄せられます。快適な走りを取り戻して、『ありがとう』と言われるのが一番の喜び。鉄道模型はきちっとメンテナンスすれば、長く楽しめる趣味です」。

鉄道はメンテナンス第一。本物も模型も変わらないようですね。

「乗れる模型がベスト」

日本の住宅事情もあって小型化が進む模型界に反旗を翻す、大型模型の同好会が「蓮田第一機関区」。線路幅127ミリの5インチゲージの愛好家8人がメンバーです。クラブ名通り、埼玉県蓮田市に運転場があります。

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来場者に熱心に5インチゲージの魅力を説く蓮田第一機関区の乾さん(右)。お子さんも鉄道模型趣味を引き継いでいるそうです(筆者撮影)

そのお一人が神奈川県在住の乾秀毅さん。Nゲージから模型の世界に入りましたが、「やっぱり自分が乗れる大型がいい」と5インチに転向しました。

所有機はSL(C12)とEL(ED26。私鉄からの国鉄への買収機)の2台。ブースへの来場者に熱心に説明する様子からは、「本物の鉄道ファン」の熱意が伝わりきました。

数奇な縁でヒギンズさんのポジ引き継ぐ

ラストはセミナー。模型、実物あわせて27講座が開講されました。筆者が興味を持ったのは、NPO法人の名古屋レール・アーカイブスの服部重敬理事長が講師を務める「米国人ヒギンズさんが撮影した昭和30年代の日本の鉄道」。

愛知在住の服部さん、現職時代のお仕事は大手私鉄、趣味も鉄道というレジェンドで、「昭和~平成時代の名古屋鉄道(シリーズ)」、「LRT~次世代型路面電車とまちづくり~」など著書多数。

レール・アーカイブスでは、コアなファンに話題の鉄道写真集「ヒギンズさんが撮った……(シリーズ)」の仕掛け人の顔も持ちます。

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ヒギンズさんとの偶然の出会いを語る服部さん。70歳を過ぎてますますお元気のようです(筆者撮影)

ジェイ・ウォーリー・ヒギンズさんは、1927年アメリカ・ニュージャージー生まれ。ミシガン大学卒業後、海軍に入り、1956年と1958年の2回、日本に駐留。在日中、カメラを担いで全国のローカル鉄道を熱心に回り、ポジフィルム(スライド)に記録しました。

アーカイブスが世に出たのは、基本的に21世紀になってから。服部さんがオーストラリア人の知人を介してヒギンズさんを知り、フィルムの管理を任されたのでした。

ヒギンズさんの日本の鉄道愛は尽きることしらず。一般鉄道はもちろん、鹿児島県屋久島の森林鉄道(森林軌道)、北海道の町営軌道、そして遊園地のおとぎ電車までしっかり記録していました。

服部さんによると、数千枚のポジはようやくデジタル化が一段落。ただし、膨大なきっぷ類や資料の整理は手つかずのままだそうで、まだまだオールドファンを楽しませてくれそうですね。

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会場入り口で来場者を迎えた広田尚敬さんの写真展。
2025年11月には新刊写真集が刊行予定。90歳目前にJAMではトークショーも開催されました(筆者撮影)

記事:上里夏生

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