水沼貴史の欧蹴爛漫 036
バルサの新アンカーとして定着しつつあるデ・ヨング photo/Getty Images
過渡期に差し掛かっているバルサ
水沼貴史です。今シーズンも毎週のように欧州主要リーグの試合を解説させて頂いておりますが、どのリーグも例年以上に混戦となっており、私自身ワクワクしています。
言わずと知れたエース、リオネル・メッシが負傷で出遅れたことも理由のひとつですが、昨シーズンからの既存戦力と今年の夏に加わった新戦力との融合が順当にいかなかったことが序盤戦での躓きに繋がったと、私は思っています。特に中盤に関しては誰を核に据えるのかをバルベルデ監督が未だに模索している感がありますね。このクラブの伝統である自陣後方から丁寧にパスを繋ぎ、敵陣ではワンタッチパスを使って攻撃のテンポを上げるというスタイル自体は変わっていないものの、人選が定まらないなかで選手同士の連係が深まらず、攻守両面でチグハグな印象を今シーズン開幕当初のバルセロナから受けています。
この厳しい状況のなかで明るい材料をひとつ挙げるとすれば、デ・ヨングがバランサーとして機能し始めていることです。今シーズンは[4-1-2-3]という布陣のアンカーポジションで起用されることが多い彼ですが、長年にわたりバルサ不動のアンカーとして君臨してきたセルヒオ・ブスケッツの後継者になれるだけの力はあると私は思います。バルサに来てアンカーで起用されるようになってからというもの、自分で仕掛けるというよりかはメッシ、グリーズマン、ルイス・スアレスの強力3トップに素早くボールを預け、自分はチーム全体が前がかりになった際にできる中盤のスペースをいち早く埋めることに徹しているように見えます。相手ボールになった時の切り替えやカバーリングも速いですね。それに加えて敵陣で味方の攻撃が手詰まった際には3列目から飛び出してパスコースを作り、前線の3人を助けることができる。
![[水沼貴史]連係構築にひと苦労 三冠目指すバルサのキープレイヤーは](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FTheWorld%252FTheWorld_258075_4b39_2.jpg,quality=70,type=jpg)
未だにベストな布陣を模索中のバルベルデ監督だが、スター軍団を統率できるか photo/Getty Images
問われるバルベルデ監督の手腕
先ほどもお話しした通り、特に中盤の人選が定まっていない今シーズンのバルベルデ監督ですが、前線の3人が孤立したり、彼ら任せの攻撃にならないような中盤の構成にしたいという意図は窺えます。アルトゥーロ・ビダル、デ・ヨング、アルトゥール・メロと、比較的運動量が豊富で推進力のある選手を中盤に並べる傾向が強いですし、彼らに積極的に3列目から飛び出し、前線の3人を追い越すランニングを繰り返すよう指示しているふしがあります。こうすることでメッシをはじめとする3トップ頼みの攻撃から脱却し、よりダイナミックな攻撃を実現しようとしているのではないでしょうか。
中盤の人選の基準が少しずつ見えてきた一方で、出場機会が減少気味のMFイヴァン・ラキティッチが先日公の場で不満を語るなど、チーム内には不穏な空気が流れつつあります。これまでクラブの主力として君臨してきたベテラン勢の不満を最小限に抑えながら世代交代を進めるという、極めて難しいタスクを課せられているバルベルデ監督ですが、いち早く核となる布陣やメンバーを固め、選手同士の連係を深めることができるか。選手個々のスキルは間違いなく高いので、ある程度メンバーを固めて試合を重ねれば、自ずと結果はついてくるはずです。就任3年目のバルベルデ監督がこのスター集団をどのように掌握するかに注目しながら、今シーズンのリーガやチャンピオンズリーグを楽しみたいと思います。
ではでは、また次回お会いしましょう!
水沼貴史(みずぬまたかし):サッカー解説者/元日本代表。Jリーグ開幕(1993年)以降、横浜マリノスのベテランとしてチームを牽引し、1995年に現役引退。
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