■海外市場で金価格の上昇が続く、ついに約6年4カ月ぶりの高値



金(ゴールド)価格の上昇が続いています。海外市場では8月7日に1,506ドル(1トロイオンス当たり、以下同)を付け、約6年4カ月ぶりの1,500ドル超えとなりました。

その後も堅調に推移し、8月14日に1,513ドルまで上昇。また、米国株の急落を受けた8月15日のNY先物市場では一時1,532ドルまで急伸しています。



金価格はFRBによる利上げ実施が続いた昨年8月に1,178ドルまで下落した後、利上げ実施の見送りを受けて今年2月には一時1,343ドルまで上昇していました。その後は短期調整したものの、6月に入ってから再び上昇し始めて、冒頭に記した高値に至った次第です。



昨年8月の安値から見ると、実に+28%超の上昇となり、資産価格上昇という観点では他の資産(株式、債券、原油、他の貴金属など)を凌駕するパフォーマンスを示していると言えましょう。



なお、海外価格はNY先物市場を除き、全てLBMA(London Bullion Market Association)のPM価格を指します。



国内の金価格が史上最高値に迫る勢い。今が売り時?

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■この1カ月で大きく変化した金価格の上昇要因



金価格が約6年半ぶりの高値を付けるまで急騰した背景には、1)FRBによる利下げ実施への強い期待感(ドル安懸念)、2)中近東のイラン情勢を始めとする地政学リスクの高まり、3)米中貿易摩擦問題の長期化に伴う世界景気減速懸念(リスクオフ)、などが挙げられます。ただ、この1カ月間で上昇要因は大きく変化したと思われます。



6月以降に顕著となった上昇を牽引したのは、前述1)のFRBによる利下げ期待でした。金の最大のデメリットは金利が付かないことです。そのため、米国の利下げ(=米ドル安)は金価格に追い風だったことは間違いありません。また、同じ理由で、つまり、米国の利下げを追い風にする株式も上昇し、NYダウなど主力指数が軒並み過去最高を更新しました。



■株式市場の大幅調整を尻目に上昇続く金価格



しかしながら、7月末に実施された米国の利下げが物足りない水準だったことに加え、今後の追加利下げに対する期待が大きく縮小したこと等により、米国株式市場は大幅調整局面を迎えています。



ちなみに、代表的指数の1つであるNYダウは7月18日に記録した27,398ドル(過去最高値)から、約3週間後の8月7日に一時25,440ドルへと約▲7%下落しました。そして、いったん戻り基調になった後の8月14日も再び急落し、今年最大の下げ幅となっています。一方でこの間、金価格は逆に+7%超上昇しました。



では、それまで“仲良く”歩調を揃えて上昇していた株式と金に、どのような変化が生じたのでしょうか?



■金価格の高騰はこの先の世界大不況を織り込み始めたのか?



結論から言うと、その変化とは世界経済の減速懸念が顕在化したことであり、少し大げさに言うならば、世界同時大不況のリスクを織り込み始めたということです。特に、世界景気拡大のエンジンでもある米国経済がリセッションに入ると基軸通貨である米ドルに対する信用が下落するので、その対極に位置する金へ資金が逃避してきたと考えられます。



そして、この世界大不況の可能性が徐々に高まってきた最大の理由が、米中貿易摩擦問題であることはご存知の通りです。既に中国の景況感は大きく悪化し、設備投資関連を始めとする日本企業の業績に如実に表れています。



ただ、このような類の話をすると、“そんなバカな、大げさすぎる”と訝る人も少なくないでしょう。しかし、2008年秋に起きたリーマンショックを経験した人の多くは分かっています、“確かに、金価格が急騰した2007~2008年頃とよく似ているな”と。



■国内の金価格(円建て)も上昇がやまず、昨年8月から最大+22%超上昇



ところで、海外市場で金価格が急騰している中、日本国内の金価格(円建て)はどう動いているでしょうか? 三菱マテリアルが日々公表する金の小売価格を見てみましょう。



これも結論から言うと、国内価格も急騰し続けており、実質的な最高値に迫る勢いです。

国内価格は海外価格と同様に昨年8月に4,554円(1グラム当たりの税込価格、以下同)の安値を付けた後、緩やかな上昇に転じ、今回8月8日には5,571円の高値を付けました。ただ、この間の上昇率は+22%超であり、海外価格の+28%を下回りました。これは、円高による影響(円換算時の目減り)です。



むしろ、円高にもかかわらず、国内の金価格高騰が目立っているとも言えます。



■国内金価格は1981年以降の最高値を超え、史上最高値に迫る水準へ



ちなみに、今回の高値5,571円は、2015年1月に付けた高値(5,392円)を大きく上回っていますが、この時の高値は1981年以降の最高値でした。なお、国内金価格の過去最高値は、当時のソ連によるアフガニスタン侵攻で国際情勢が緊迫化した1980年初頭の約6,500円(消費税なし)という、今振り返っても途方もない“異常価格”です。



つまり、現在の国内の金価格は、この史上最高値に迫っていると見ることもできます。実質的には過去最高値、少なくとも、約40年ぶりの高値水準であることは間違いありません。



■やはり、金の買取りに多くの客が殺到し始めた!



さて、筆者が前回( https://limo.media/articles/-/11877 )、金価格について記した際、これから街中の金取扱店(金ショップ等)に買取を求める客の長蛇の列ができると予想しました。最近の各種ニュースによれば、やはり、多くの客が買取を求めて殺到しているようです。今回は10月の消費増税を控えており、通常よりも買取りを強化する、すなわち多少の上乗せが期待されます。



もし、皆さんが金をお持ちならば、絶好の売り場になるかもしれません。

金は地金(1kgや500gのバー)や金貨でなくとも、指輪、イアリング、ネックレスなどの装飾品のみならず、万年筆の芯先や、入れ歯の金でも買い取り対象になるはずです。一度、検討してみる価値はあるでしょう(注)。



注:国内の金価格は日々変動し、また、取引業者によって多少の差異があります。