■高度成長期に育った人々の貯蓄状況と老後資金



「断層の世代」が老後に突入!4人に1人が貯蓄100万円未満…...の画像はこちら >>

『断層の世代』という言葉を知っていますか? 1951~60年頃のバブルに沸いた高度成長期に育った人々を指すとされています。そして今年、2019年に還暦を迎える1959年生まれの人々は、この世代に該当するといわれています。



還暦を迎えた後は、いよいよ老後の生活が待っています。第2の人生を思う存分楽しむためには、金銭的な課題にも向き合わなければなりません。老後貯蓄をどれだけ用意していたかによって、その課題の大きさは左右されるでしょう。



そこで今回は、老後のための貯蓄について考えてきましょう。「いくら貯めればいいのか分からない」という方は、ぜひ参考にしてください。



■老後に得られる収入



老後の主な収入源となる年金ですが、大体どのくらい支払われるのかご存知でしょうか。

2018年12月に厚生労働省が発表した「平成29年度(2017年度)厚生年金保険・国民年金事業の概況( https://www.mhlw.go.jp/content/000453010.pdf )」をもとに確認しておきましょう。



ここでは、2017年度末の厚生年金保険(第1号)の平均年金月額は14万7051円と示されています。また、国民年金の平均年金月額は5万5615円です。



仮に夫が会社員として定年まで働き、妻がずっと専業主婦だったとします。この場合、世帯の年金収入は夫婦あわせて20万2666円と計算できます。



約20万円として考えると、年間で「20万円×12ヶ月=240万円」の世帯収入に。

20年間に渡って受け取る場合の受給額は「240万円×20年=4800万円、30年なら「240万円×30年=7200万円」となります。



あくまでも、これは先ほどの夫婦の例をもとにしたケースです。共働きだった場合は厚生年金保険も加算されるため、年金受給額はさらにアップするでしょう。



■老後に必要な生活費



続いて、支出についても見ていきましょう。生命保険文化センターの「令和元年度 生活保障に関する調査(速報版)( http://www.jili.or.jp/press/2019/nwl4.html )」のなかでは、ゆとりのある老後生活に必要な上乗せ額は月額平均14万円と示されています。



「老後の最低日常生活費」が月額22.1万円といわれていますので、これに老後のゆとりのための上乗せ額14万円を足して、1カ月で36万1000円が必要ということになります。



60歳で定年退職を迎え、夫婦ともに90歳まで生きた場合、30年間の生活費は「36万1000円×12カ月×30年=1億2996万円」という金額に。ここから年金支給額を差し引けば、老後貯金として備えておくべき金額がイメージできるということになります。



先ほどの例の「夫が会社員として定年まで働き、妻がずっと専業主婦だった」場合は、30年間で受け取れる年金受給額は約7200万円。1億2996万円から差し引くと、5796万円の貯蓄が必要ということになります。



■老後生活直前の世帯の貯蓄額



最後に、還暦を控えている世帯の貯蓄状況を見ておきましょう。PGF生命は、還暦を迎える1959年生まれの男女2000名に「2019年の還暦人(かんれきびと)に関する調査( http://www.pgf-life.co.jp/company/research/2019/001.html )」を行ないました。



この調査の結果、「現段階の貯蓄金額(配偶者がいる場合は夫婦2人分)」という問いに対する回答は以下のようになりました。



「現段階の貯蓄金額(配偶者がいる場合は夫婦2人分)」(自由回答形式)
1位:100万円未満・・・・・・・・・・24.7%
2位:100~300万円未満・・・・・11.3%
3位:500~1000万円未満・・・・11.1%
4位:1000~1500万円未満・・・10.4%
5位:3000~5000万円未満・・・8.7%
6位:1億円以上・・・8.1%



ご覧のように、約4人に1人は貯蓄が100万円未満の状態で還暦を迎えようとしているようです。その一方で、8.1%の世帯は貯蓄額が1億円以上という点も見逃せません。この貯蓄格差は老後の生活に響くため、かなり深刻な問題であるといえるでしょう。



■まとめ



老後貯蓄が不十分な状態で年金生活に突入すると、趣味や旅行を思うように楽しめない日々が続いてしまうかもしれません。せっかく時間に余裕があるのに、お金がなく何もできない…なんて状態は避けたいもの。

早いうちから、老後に向けた貯蓄を積極的に増やしていきたいですね。



また定年退職後の再就職など、長く働くことも視野に入れて生活していきたいものです。60歳、65歳以上になっても必ず働けるとは限りませんが、社会に必要とされているスキルを認識し身に着けていく努力が求められているでしょう。



【参考】
「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」厚生労働省
「令和元年度 生活保障に関する調査(速報版)」生命保険文化センター
「2019年の還暦人(かんれきびと)に関する調査」PGF生命調べ



【ご参考】貯蓄とは

総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。