子どものころはあんなに仲がよかったのに、大人になると兄弟姉妹の仲が悪くなったり疎遠になったりしてしまう…。実はこれってよくある話。

それぞれ別の人生を歩み、生活環境や価値観が大きく変わってしまったのが原因かもしれません。



「血は水よりも濃い」と言いますが、中には水よりも薄い血縁関係もあるようです。今回は、そんなちょっぴり切ないエピソードを紹介するとともに、その原因を探ってみたいと思います。



■きっかけは、親の介護



45歳のAさんには、7つ年上のお姉さんがいます。年の離れた姉妹ですが、お姉さんはAさんのことを可愛がってくれ、ふたりはとても仲良しだったそうです。



時は流れ、大人になったAさん姉妹。

お姉さんは結婚して県外へ、Aさんは結婚後も実家近くに住むことになりました。



Aさん姉妹の仲に暗雲が立ち込めてきたのは、お父さんが亡くなってから。すっかり気落ちしてしまったお母さんは体調を崩しがちになったのだそう。お母さんが寝込むたびに看病するのは近くに住むAさんの役目。しかし、お母さんはだんだんと床に臥す時間が長くなり、ついには介護が必要な体になってしまいました。



Aさんには小学生の子どもがいます。

また自身もパートで働いており、夫も激務。どうしてもAさんひとりでお母さんを介護するには限界があります。とはいえ施設に入れるのはしのびない…。Aさんはお姉さんに相談を持ち掛けます。



しかし、お姉さんの口から出てきた言葉は「私はもう出て行った人間だから」。



とてもじゃないけれど帰省して母親の世話をする余裕はない。

もうあなたの好きにしてほしい。遺産も放棄する…と冷たく言い放つお姉さんに、Aさんは「あなたには人の心がないのか」と泣いて抗議。



大げんかの末、Aさんが「一切の縁を切る!」と宣言し、ふたりは音信不通になったそうです。



「母が時折寂しそうに、姉の名前を呼んで『あの子は元気か』と聞いてくるのが可哀そうで…それと同時に薄情な姉への憎しみと怒りが、日に日に増していきます」



実は、親の介護がきっかけで兄弟の仲が悪くなる…というのはありがちなこと。介護の主体となる人にばかり肉体的、精神的、そして金銭的負担がかかってしまうのがその理由です。できれば親が元気なうちに、介護の方法や費用の準備などを、本人の要望を聞きながら話しておくのがベストなのですが、なかなか親には話しづらい、という人も多いようです。



■これといった原因はないけれど…



50代の女性、Cさんには3つ下の弟がいます。子どものころはさほど仲も悪くなかったふたりですが、今はなんと5年もの長きにわたり疎遠な状態が続いているのだそうです。



「弟はサービス業なので、盆や正月にはなかなか休めない、休めても1日か2日なんです。でも、その休みにはなぜかお嫁さんの実家に帰り、自分の実家には平日休みの日にふらっとひとりで訪ねてくるそうです」



一方、結婚して実家から離れたところに住んでいるCさんは、盆や正月しか帰省する機会がありません。となると、自然と顔を合わせる機会もなくなります。



「それでも最初のうちは、弟が帰省すると聞くと予定を合わせて帰省するようにしていたんです。

でもそれも年々しんどくなって、もういいか、って。今はかろうじて、両親が元気だからつながっているけれど、この先両親が亡くなったら、完全に縁が切れるかもしれませんね」



小さなころは同じ家で、同じ価値観のもとに育った兄弟も、大人になり、それぞれの家庭を持つことで自分たちの生活と価値観を構築していきます。



お互い生活する環境がまったく別のものになってしまうと、当然価値観も変わってしまう。その価値観が相容れなくなってしまったり、兄弟の仲よりも優先するべきものが増えてしまったりすると、どうしても「別に会う必要ないか」と考えてしまいがち。



それを防ぐには…やはり定期的に会って近況を報告し合うことが重要になります。



■まとめ



血をわけた兄弟姉妹の仲が悪くなってしまうのは、切なく悲しいものです。

しかし、大人になっても良好な関係を保つには、どうしても「努力」が必要になってくるのも事実。



片方だけが努力しても仕方がありません。大切なのは双方が努力すること。良好な関係を維持するためにいくら自分だけ頑張っても、相手が「仲良くする必要はない」と思っていれば、無駄な努力に終わります。



家族だからこそ付き合い方が難しい。そのことを肝に銘じて、兄弟姉妹の間で「一番居心地のいい関係」を模索していくことも必要です。