「失業者数が増えると、自殺者数も増える」という現実があります。しかし、失業者数が増えることの弊害はこれだけに止まりません。

こちらも穏やかではありませんが、「失業者数が増えると、人身売買が増える」という事実があります。



ここではこの人身売買を軸に、格差を縮小し、社会全体が豊かになるためには、一体どうすれば良いかについて考えていきます。



■「日本で人身売買はあり得ない!」は本当か?



「人身売買」と聞くと、「オークションのように人間の臓器などを売買する話で、日本ではあまり関係ないのでは?」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際は、ブラック企業の無賃労働のように「良い仕事がある」という誘い文句に騙された一般の暮らしの方々が、不当な労働条件での契約を強制されることから始まるケースが多く、意外にも身近な存在といえます。



また、米国政府は毎年、各国における人身売買の状況を「人身取引報告書」としてまとめています。その2020年版報告書によると、日本は「TIER2」に分類されています。

これは、人身売買を防止するための最低限の取り組みができていないという「不合格」を意味しています。外国人技能実習生の強制労働が裁判で認められにくいことや、来日前の高額な手数料徴求防止対策が不十分であることが問題視されたようです。



強制労働が人身売買なのかと驚いた方もいらっしゃるかと思います。「人身売買」は英語で”Human trafficking”ですが、この定義には「性的サービスや労働の強要」が含まれているのです。よって、世界基準では先ほどの外国人技能実習生の強制労働も人身売買に該当するため、残念ながら「日本でも人身売買はあり得る」と結論づけざるを得ません。



■世界の人身売買の実情



ここからは世界全体に目を移してみましょう。

貧しい国や地域から先進国へいわゆる出稼ぎを希望する方々が、実際には正規のかたちで就業できず、人身売買の被害者となるケースは珍しくありません。世界には、不当な労働等で苦しむ方々が、検知されているだけでも2,500万人超もいらっしゃるといわれています。



新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延の影響により、人の移動が困難になった最中でも、こうした悲劇は繰り返されています。たとえば、2020年4月には、ミャンマーの少数民族であるロヒンギャの難民300人以上が、人身売買業者によって連れ出された後、新型コロナウイルス感染の可能性を理由に入国を断られたことから、食料もない状態で海洋上に放置され、30人以上の方々が亡くなりました。



このように、人身売買は違法な取引や密入国が前提となっているため、人の移動が制限されている現在であっても、被害者数が減少するわけではありません。むしろ、不況により苦しい生活をする方々が増加すると、そうした人の弱みに付け込み、被害が増加する恐れのほうが大きいのです。



■人身売買をなくす方法~悪い資金の流れを断ち、誰もがまともに働ける社会をつくる~



人身売買は、当然のことながら、必ず手数料を得ている人や、支払うべき給与を中抜きしている人がいます。このような取引を減少させるには、悪い資金の流れを断ち切る必要があります。たとえば、金融インフラを整えて現金取引を少なくすることで、悪い資金の流れを一定以上減らすことができます。また、誰もが口座を保有している状況をつくることができれば、困窮している人に中抜きされないかたちで支援を届けることも可能となります。



さらに、教育や就業の機会を平等に整えることも重要です。貧しい家庭に生まれると日々の生計を維持することが最優先となり、情報格差や教育格差が生じて貧しさから脱却できない、いわゆる「格差の再生産」に陥るおそれがあります。

これを防ぐ方法の1つは、電気やインターネット、家電など、生活のインフラとなっているサービスを提供する事業者が、割賦販売やリース、シェアリング等といった方法で、主に貧困層を顧客にすることです。



こうした取り組みが普及すると、貧しい家庭であっても暮らしの水準を社会平均まで上げ、教育や就業の機会を得ることができます。事業者にとっても、新たな顧客層を得て、利益を上げる機会が生まれます。まさに良い資金の流れを生み出すビジネスが、「みんなが豊かに暮らせる社会」をつくるのです。



■経済成長から貧困削減、格差の縮小へ



「経済成長が人々の所得を増加させ、貧困削減に貢献する」という認識は現在、一般的な考え方となり、多くの開発支援などが実施されてきました。一方、カンボジアなどの東南アジア地域においては、目覚ましい経済成長があったものの、当初想定していたほどには貧困の削減には至っていないことが問題視されています。



このことから、近年、格差是正に対する問題意識が高まっています。最近の経済学上の研究では、経済成長により生じた格差が、さらなる経済成長や貧困削減の可能性を損なっていることが明らかになりました。所得格差が教育格差を生み、その教育格差が低所得者層から中所得者層へ移行する社会的移動を妨げてしまいます。これにより、人材の技能開発の機会が失われ、さらなる経済成長や貧困削減がなされにくくなるという悪循環に陥ってしまいます。



この悪循環を断ち切るためにも、格差を縮小するための良い資金の流れをつくることが必要不可欠です。そして、そのためには、国際機関や国、地域はもちろんのこと、民間からの「社会とお金を育てる投資」を広めていくことが期待されます。

「急がば回れ」と古くからいわれますが、少しずつであっても地道に歩を進めていくことが大切です。



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