東京ディズニーランド・東京ディズニーシーの運営元のオリエンタルランド社は、昨年末にパークチケットの変動価格制導入を発表しています。
変動価格制は、飛行機や宿泊施設の料金設定では一般的であり、導入することによって混雑具合の平準化や、全体的な売上・利益増が見込めます。
今回の場合は、売上・入園数にはどのような影響が出るのか、公式発表の数値を踏まえて分析してみました。
■チケット価格の変遷および変動価格制について
オリエンタルランドが2020年12月22日に発表したプレスリリース「「東京ディズニーランド®」「東京ディズニーシー®」チケット料金改定について」においては、「時期や曜日ごとに異なるチケット価格が設定される」とのみ説明されており、具体的な変動条件は現時点ではわかりません。ただし、価格の幅は明示されています。
「ワンデーパスポート(1日入園券)」の場合は、下記のとおりで、300~500円程度の幅になります。
- 小人(4~11歳):4,900~5,200円
- 中人(12~17歳):6,900~7,300円
- 大人(18歳~):8,200~8,700円
プレスリリースで確認できる範囲で、最も古い改定が2000年9月で、この時点ではワンデーパスポート価格は下記の通りでした。
- 小人(4~11歳):3,700円(2000年9月→2021年3月:最大1,500円値上げ)
- 中人(12~17歳):4,800円(2000年9月→2021年3月:最大2,500円値上げ)
- 大人(18歳~):5,500円(2000年9月→2021年3月:最大3,200円値上げ)

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約20年間の間に7回(2006年・2011年・2014年・2015年・2016年・2019年・2020年)の価格改定を挟んでいるので気づきにくいですが、ディズニーランド・ディズニーシーのチケット価格は1,500円~3,200円ほど値上がりしていることがわかります。
■オリエンタルランドの業績推移
続いて、オリエンタルランドの直近の業績を確認します。
2021年3月期第3四半期(2020年4月1日~2020年12月31日)業績
- 売上高:1371億1130万円(前年同四半期増減率▲65%)
- 営業利益:▲198億4000万円
- 経常利益:▲218億5000万円
- 親会社株主に帰属する四半期純利益:▲287億2800万円
売上が大きく落ち込み、巨額の営業赤字が出ている状況となっています。決算説明資料でも「キャッシュアウトの抑制」という項目があり、人件費・諸経費の削減を強く進めざるを得ない状況です。
■チケット価格値上げによる入園数への影響を考える
入園者数数を横軸・チケット価格を縦軸として、過去7回分の改定をプロットすると、2006年・2011年・2014年・2015年・2016年・2019年の6回分の価格改定は、特に入園者数に大きなマイナスの影響を与えず、入園者数も維持できていることがわかります(吹き出し部分は価格改定日)。

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一方、2020年の価格改定については、これら6回の価格改定とは違う位置にプロットされています。これは、2020年の新型コロナウイルスの影響による休園措置・入園制限の影響により、入園者数が大きく落ち込んでいるためです。
第2四半期時点(2020年9月末)オリエンタルランド社の予想では、2021年3月期の入園者数予想は950万人であり、従来は2,500~3,000万人規模の入園者数があったことを踏まえると、大きな痛手です。
最盛期と比べても3割程度の入園者数しか期待できない中で、5~6%程度のチケット価格値上げを行ったとしても、売上の回復は難しいでしょう。
2016年までのチケット価格改定は、さらなる利益を確保するための「攻め」の施策でしたが、足元の価格改定は「混雑緩和策」であったり、「苦肉の策」という色合いが濃く出ています。
2021年においても緊急事態宣言が発令され、新型コロナウイルス肺炎の収束の見通しは未だ立っていません。オリエンタルランド社の業績は今後も苦しい状況が続く可能性が高いでしょう。
参考資料
- オリエンタルランド「東京ディズニーランド®/東京ディズニーシー® チケットの変動価格制導入について」(2020/12/22)( http://www.olc.co.jp/ja/news/news_olc/2020122_02/main/0/link/20201222_02.pdf )