ふるさと納税住宅ローン控除、そろそろ確定申告の準備をしている方も多いのではないでしょうか。確定申告を必要とする理由はさまざまですが、筆者が国税職員時代に質問の多かったのは圧倒的に医療費控除についてでした。



そこで今回は、少し判断が難しい医療費控除の対象にならない医療費について解説します。



■医療費控除の対象にならない医療費リスト



医療費控除の対象にならない費用は意外にもたくさんあります。具体例をリストにしました。



■【医療費控除の対象にならない費用】



  • 疲れを癒やしたり体調を整えるたりする目的のマッサージ
  • ドラッグストアで購入した日用品
  • 美容整形手術の費用
  • 近視や遠視などの眼鏡
  • 予防接種代
  • 入院中にお世話になった医師やナースへの贈り物代
  • 入院中の病室で使用するためのテレビや冷蔵庫のレンタル代金
  • 入院時本人都合で個室に入った場合の差額ベッド料金
  • 無痛分娩講座の受講費用
  • 食事療法に基づく食品の購入費用
  • 防ダニ寝具の購入費用
  • 自己判断で受けた新型コロナウイルス感染症のPCR検査代

判断に迷いやすいものを一覧にしてみました。これらは実際に質問されることが多く、また誤りやすい事例です。



■癒やし目的のマッサージは医療費控除の対象外



先にリストにした中から特に誤りが多い費用についてピックアップしたいと思います。

まずはマッサージについて。これは本当に誤りが多いのですが、いわゆる癒し目的のマッサージを医療費として申告されているケースです。



医療費控除は基本的に「治療目的」に使った費用が対象になるため、同じマッサージに分類されるものでも、あん摩マッサージ指圧師や柔道整復師から治療目的で受けるマッサージは医療費控除の対象になります。



また、ドラッグストアで購入した日用品を医療費控除に加えている人も散見されます。医薬品と一緒に購入した際のレシートの合計額をそのまま医療費に入れてしまっているケースです。このような場合は、医療費控除の対象になる医薬品に丸をつけるなどして医療費の対象になる費用とならない費用をしっかり分けるのがよいでしょう。



■眼鏡が医療費控除の対象になるケース



日常生活に使用する近視用や遠視用の眼鏡を購入した費用は医療費控除の対象になりません。



しかしながら、眼鏡の購入費用が医療費控除の対象になるケースがあるのです。眼鏡が「医師の治療の一環として使うもの」である場合です。例えば、白内障や緑内障の手術後に機能回復のために短期間使用する眼鏡や、幼児の視力を向上させるために必要な眼鏡などが挙げられます。



医療費控除の対象になる場合については、病名や治療を必要とする旨が書かれた眼鏡の処方箋が発行されますので、処方箋のコピーを確定申告時に添付もしくは提示することになります。



医療費の明細書に必要事項を記入することで添付等を省略する場合は、医療費の領収書と同じく自宅で5年間の保管が必要です。

詳細はお近くの税務署にお尋ねください。



■新型コロナウイルス感染症のPCR検査代金は自己判断で受けたなら医療費控除の対象外



2020年から世間の状況を一変させてしまった新型コロナウイルス感染症の流行。PCR検査を受ける場ケースは2通り考えられます。



■1.医師の判断で受けるケース



新型コロナウイルス感染症にかかっている疑いがある人が受ける検査など医師の判断で受けたPCR検査の検査費用は医療費控除の対象になります。



■2.自己判断で受けるケース



感染していないことを証明するためなど自己判断で受けたPCR検査は医療費控除の対象になりません。ただし、検査の結果「陽性」で治療が必要になった場合はそのPCR検査費用が医療控除の対象になります。



■両親の病院代を支払った場合はどうなる?



医療費控除は自分もしくは配偶者や子供、両親など「生計を一にする」家族の通院費等を支払った場合が対象になります。よって、「生計を一にしていない」両親の病院代はいくら自分が支払っていても医療費控除の対象にはならないのです。



そもそも「生計を一にする」とはどのような状態なのかというと、日常生活の資金を共にしているイメージです。必ずしも同居は必要ではなく、例えば単身赴任で別居している夫から生活費を送金してもらっているような場合には「生計を一にする」状態といえるのです。



また、仮に生計を一にしていたとしても支払っていない医療費は自分の医療費控除に入れることはできません。費用を支払った人の医療費控除対象になります。

共働き夫婦で夫の病院代を妻が支払った場合は妻の医療費控除の対象になるということです。



■医療費控除の対象になるかどうかの判断基準は「治療にあたるかどうか」



今回は、医療費控除の対象にならない医療費についてお伝えしました。医療費控除の対象になるかどうかの判断基準は「治療にあたるかどうか」です。とはいうものの、正直判断に迷うケースが多いかと思います。



「これって医療費控除の対象になるの?」と迷った場合には所轄の税務署に聴くなどして確認することをおすすめします。



■参考資料



  • 国税庁タックスアンサーNO.1122「医療費控除の対象となる医療費」( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm )
  • 国税庁質疑応答事例「医師やナースセンターに対する贈物の購入費用」( https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/40.htm )
  • 国税庁質疑応答事例「病院に支払うテレビや冷蔵庫の賃借料等」( https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/48.htm )
  • 国税庁タックスアンサーNO.1126「医療費控除の対象となる入院費用の具体例」( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1126.htm )
  • 国税庁質疑応答事例「無痛分娩講座の受講費用」( https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/11.htm )
  • 国税庁質疑応答事例「食事療法に基づく食品の購入費用」( https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/13.htm )
  • 国税庁質疑応答事例「防ダニ寝具の購入費用」( https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/56.htm )
  • 国税庁質疑応答事例「共働き夫婦の夫が妻の医療費を負担した場合」( https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/25.htm )