■不動産投資専門の税理士が解説
新築よりも圧倒的に数の多い中古の収益マンションですが、普通は新築よりも中古の方が表面利回りは高くなる傾向にあります。
ご購入されるにあたり、「表面利回り」という指標は重要なポイントになり、「表面利回りが高い=キャッシュフローが残る物件」と思い込みがちです。
しかし、多少表面利回りが低くてもキャッシュフローが残る買い方もあることを知ってもらいたいと思います。
■スペックが似た物件のケースで解説
先日、二人のお客様(A様とB様)がそれぞれ私のところに中古の物件概要書をもってご相談に来られました。
お二人が持って来られた物件は全く別の物件なのですが、表面利回りと借入金利がそれぞれ異なる程度でどちらの物件もスペックは似ていました。
■☆物件購入内容(A、Bが似ている点)
- 物件価格:1億円 (中古)
- 場所:地方
- 構造:鉄筋コンクリート
- 部屋数:10室 2LDK
- 築年数:20年
- 建蔽率:60%
- 容積率:200%
- 借入金額:1億円
- 借入期間:30年
- 返済方法:元利均等返済
■☆相違点
A様
- 年間家賃収入1000万のため表面利回り1000万÷1億円=10%
- 借入金利が4.5%
B様
- 年間家賃収入800万のため表面利回り800万÷1億円=8%
- 借入金利が1.3%
それぞれ、どのくらい毎年手残りがあるのかを計算してみました。
■税引き前のキャッシュフローは似た金額に
今回は、分かりやすくするために、本来発生する固定資産税や管理費等の経費は除外してキャッシュフローを計算しています。
A様とB様それぞれのキャッシュフローを見てください。
ご覧いただいて分かる通り、税引前キャッシュフロー、すなわち税金を支払う前までの手残りがほぼ一緒であることが分かります。
ですので、マイナス金利の影響で低い金利でお金を借りられる今の市況の場合、表面利回りが高くなくてもお金が残っていく場合もあるのです。
■借り換えに成功した場合はどうなるか
ただ、当初A様のような条件で購入されたとしても、何年か後に借り換えに成功して借入金利が2%に下がってくるのであれば、A様の購入の仕方の方がよりお金が残ると思います。
仮に、3年後から2%に金利が下がったと仮定すると、税引前の手残りは約550万ほどになるのです。
■表面利回りだけで判断すると失敗の可能性も
あと、この例で一点気を付けておきたいことがあります。
A様の場合もB様の場合も、税金を支払う前までの手残りは同じになりますが、元金返済の金額は全く違います。
つまり、同じ1億円を借り入れたとしてもA様よりもB様の方が返済スピードが速いということです。
結果、10年後の借入の残債を見てみるとA様は8000万円ほどであるのに対し、B様は7200万円まで借入が減っています。これは、元利均等返済で借入利率が影響しているといえます。
借入の残債が減るスピードが早ければ早いほど、売却しやすく、売却による手残りも多くなる可能性が高いのです。
このように、表面利回りだけで物件を判断していくと大きな失敗をする可能性がありますので、どのような借入条件で購入できるのかにも注目してほしいと思います。